03


さて、どこから話したら良いだろうな。
俺が顕現されたのは、主が審神者になって半年ほど経った頃だった。俺は刀剣の中でも中々入手できない、珍しい部類でな、主は大層喜んだよ。主は鍛刀が下手だったからな。俺を呼んだ時は金を積んで刀を呼びやすくする符を使ったらしい。うちの本丸は、その時太刀は俺しかいなかったし、他は初期刀の打刀と短刀ばかりだったからな。頼りにされていたよ。

主は審神者の能力が低かったのさ。
普通だったら審神者になることも無かっただろうな。主は政府に金を積み、無理に審神者になったのさ。理由かい?復讐さ。主は歴史修正主義者の歴史改変の影響で妹の存在を消されてしまったらしい。あいつらが憎い、この手で消し去ってやるとよく言っていたよ。その為に俺達を呼んだのだと。俺も主の為に頑張って戦おうと思ったのだが…。

主は戦も苦手だった。よく戦況を見誤って刀を折ったよ。わざとじゃない。単純に戦が上手くなかったのさ。戦の事は俺達に任せてくれれば良かったのかもしれないが、相手を自分の力で倒したかったのだろうな。まあ、これは主を上手く誘導してやれなかった俺達が悪かったのさ。復讐を果たしたいのに上手くいかず、刀をすぐ折れる。主も焦っていたんだろう。大きな刀を呼び出す為に資材を浪費し、鍛刀を繰り返すようになっていった。打刀は数振り増えたが、太刀や大太刀、槍も薙刀も一向に増えなかった。

痺れを切らした主は、また大金をはたいて符を入手して、太刀の一期一振を鍛刀した。
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