Yellow
少しでも気を抜いたら溜め込んでいたものが溢れてしまいそうで、なるべく心を無にしてやっとの思いで家まで辿り着いた。
『おかえり!』
リビングのドアを開けるとすぐに亮の声がして、顔を上げた私に笑顔を向ける。
『...え!何、どうしたん!泣きそうやんか!』
亮の顔を見た瞬間に緊張の糸が切れた。堪えようとしても唇は歪み、込み上げて来る涙を止めることは出来ない。
駆け寄ってきた亮が私を覗き込む。情けない程下がった眉、普段よりも垂れた目。戸惑わせてしまったのは申し訳ないけれど、困ったように頭に乗せられた手の温かさにほんの少し安堵して、いよいよ涙が零れ落ちた。
『...何があったん?』
嗚咽が漏れてしまいそうで言葉にできない私の頭を撫でながら、亮がキョロキョロと周りを見回し、テーブルにあったティッシュの箱を手に取り抱き抱える。
『...ちょ、はよこっち来て!』
私の手首を掴んで軽く引く亮にちらりと目を遣れば、もう一度ぐっと手を引かれる。
『ええからここ座って!』
引かれるままにソファの前に立つと、先に腰を下ろした亮に手を下に引かれ、されるがままに隣に腰を下ろす。
ポロポロと零れる涙を見て困惑する亮は、思い出したようにティッシュの箱を私の前に差し出した。けれど私が手を伸ばす前に亮の手がティッシュを取って私の頬の涙を拭うと、また頭にポンポンと手が乗る。
『...辛かったな、よう頑張ったなぁ』
理解してもらえたことに安堵して小さく頷けば、くしゃくしゃと褒めるみたいに髪を乱しながら撫でるから、唇を噛み締めて嗚咽を堪える。
『...ん、大丈夫やで。ここ居ったるから。...あ、抱っこしよか、な?』
手を広げた亮を顔を上げてちらりと見ると、優しい笑みを浮かべて私を見ていた。その笑顔にまた鼻の奥がツンとして涙が更に込み上げる。
するとすぐに表情が変わった。さっきみたいに眉を下げ、口角までも下げた亮は、目が潤み泣き出しそうな表情で私を抱き寄せる。
『...なんなん、もー...そんな顔せんといてよ...俺まで泣きたなる...』
私の顔を胸に押し付け鼻を啜る亮は、まるで泣いているみたいだから少し笑った。その体温と私を思う気持ちが、私の心の傷をじわりと埋めていくようで、目を閉じてただ亮に体を預けた。
End.
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