euphoria


Hugging


『...#name1#?...どうしたん?眠い?』

両手が上がっているから、多分驚いていると思うけれど、いつもみたいに間延びした話し方で章ちゃんが聞いた。
その問いに、章ちゃんの胸元で首を横に振ると、想いが溢れてしまいそうで苦しくてたまらなくなって目を閉じた。
壁に背を預けて座っている章ちゃんの腰に腕を回して抱き着いている、という今の状況。

付き合っているわけではないのにこんなことをしてしまったから、鼓動が有り得ないくらい早い。
けど、章ちゃんが来る前に忠義が言った言葉に、少しだけ期待したのは事実だ。

少ししてから、章ちゃんの腕が背中に回ってポンポンと宥めるように一定のリズムで背中が叩かれた。

ここは忠義の家で、友達もいっぱいいて、私達を見た友達が
『#name1#飲み過ぎ!』
と笑ったけれど、酔った勢いに任せて章ちゃんから離れずにいる。

会ったのは半年振りくらいだろうか。少し前に、誕生日おめでとうと電話が掛かってきて、覚えていてくれたことに泣いて喜んだ。たまにメールは来る。ご飯行こうと約束もしていた。けれど、直前になると仕事が入って結局会えずに半年。
どんどん会えなくなっていくから、焦りを感じていた。

忠義の家に来た時、章ちゃんがいなかった。また仕事か、なんて思ってちょっとへこんだ。

『ヤス、遅れてくるで』
忠義が私に言った。なんだ、忠義って鈍感なのかと思ってたけど、気付いてたんだ。そして
『ヤスも会いたがってた』
と続けた。

先に飲み始めていたから、顔を見た瞬間から既に泣いてしまいそうだった。その上、目が合った私に笑いながら手を振るから本当に限界が近かった。
何度も涙を堪えて、なかなか傍に行けずにいると、トイレに立った章ちゃんが戻って来て一人離れて座った。みんなを見て微笑んだ後、疲れたような表情を一瞬だけ見せた章ちゃんと目が合って、章ちゃんがいつもの笑顔を見せた。そのまま、おいでと手招きされたから歩み寄ると、いよいよ目が潤んできたから抱き着いた。

『気持ち悪い?』
『どっか痛い?』
『嫌なことでもあった?』

聞かれた全部に首を振っていると、章ちゃんが笑った。背中の手に加えて頭に乗った手がくしゃくしゃと頭を撫でる。

『そっかぁ、...甘えたいんやな』

首を横に振ることなんて出来ず、かと言って縦に振ることも出来ずにただ黙った。

そのまま話さなくなったけれど、章ちゃんの手は私の背中を叩き続けている。どのくらい時間が経ったかなんてわからない。けど、引き剥がされないからそのままでいた。

『#name1#寝てるん?』
『わからん』

忠義の声がして頭をポンポンと叩かれた。いつまでもこうしてるわけにいかないのはわかってる。だから顔を上げて、章ちゃんから離れた。

『#name1#?ベッド使ってええよ』
「...いい。大丈夫。...ごめんね、章ちゃん」
『#name1#、あっち行こ。な?』

返事をする前に背中に腕が回って立たされると、私を覗き込んで優しく笑う。
何だか私、子供みたいだ。恥ずかしい。迷惑掛けて、何やってるんだろう。

みんなから離れて部屋の隅に座らされると、章ちゃんがみんなに背を向けて私の方を向いて横向きに座った。ソファーがあるから少し影になっている。
みんなを一度振り返ってから私を見たその目に見つめられて、やたらと恥ずかしくなってきたから俯く。
すると突然、横向きのまま抱き締められて驚いた。

『さっき甘えさしたったし、俺の番』

首筋に顔が埋められて、熱い吐息が鎖骨あたりに掛かっているからドキドキして目をきつく閉じた。

「...章ちゃん、酔ってる、?」
『そんな酔ってへんよ。飲まんとずっと#name1#抱っこしてたやん』

さっきまで自分がしていたのと同じことなのに、こんなに緊張してしまうのは何故だろう。
そのまま動けずにいると、肩に頭が乗って、ふふっと章ちゃんが笑う。

『あー、もう、連れて帰ってまおかな』
「...え、」
『もー、久々に会うてあんなんされたら、離したくないやんか』

顔を上げた章ちゃんが片手を背中に回したまま、もう片方の手で私の手を握る。顔を覗き込むと優しく笑って言った。

『ほんまに連れて帰りたいねんけど、一緒に帰る気、ある?』
「.......ある、」

少し頬を赤らめた章ちゃんが、イヒヒと笑ってまた私を抱き締めるから思わず笑った。

『...ほんなら、はよ帰ろ。ここやとキスも出来ひんもん』

いきなりそんなことを言うから恥ずかしくて苦笑いすると、悪戯っ子みたいに章ちゃんが笑った。

『...待ってた?』
「...待ってた、」
『ごめんな』

すぐに軽く唇が触れて、また笑う。
章ちゃんが私を壁に押し付けて覆い被さるように私を隠し、再び唇が塞がれた。

『あー、もう。我慢できひん、』

絡め取られた舌を愛おしむように弄ぶ長い長いキスは、章ちゃんの想いの深さを知るのには充分過ぎるキスだった。


End.

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