喧嘩ちゃうのに仲直り
教室を出て階段を降り、昇降口の前にある鏡にふと目を向けると、俺の後ろにあいつの姿が映っていた。でも気付かないフリ。
踵の潰れたスニーカーを放り投げると、隣に立った#name1#に目を遣る。すると少し怯えたような目で俺を見るから、靴を履いてさっさと歩き出した。足早に歩く俺の後ろを、あいつがついて来る。
「...すばる、」
校門を出たところで声を掛けられたけれど、聞こえないフリをした。するとパタパタと足音が聞こえてバッグを後ろに引かれたから眉間に皺を寄せて振り返る。
『なにすんねん』
「...一緒に帰ろうよ」
何も言わずに睨むように#name1#を見てから視線を前に戻し歩き出す。俺の斜め後ろにくっついて来るこいつは、声を掛けてきたくせに気まずそうにしているから居心地が悪い。
「...今日、サボってたでしょ」
『...それがなんやねん』
「ヤスくんが手振ってたから」
最初にそういう態度を取ったのは...俺なんだ。
あの日、俺の部屋でベッドの隣に座っていたこいつをベッドに押し倒した。ヤリたかったわけじゃない。ヤろうとしたわけじゃない。
...ただ、どうしようもなく胸が苦しくて、そのまま無理矢理キスをした。
俺を押し退けて擦り抜け、逃げるように部屋を出て行ったこいつに、どんな顔をしていいかわからなくて素っ気ない態度を取り続けているのだ。
「...ねぇ」
『.............。』
「......ねぇ、ってば、」
『...んやねん』
自惚れていたんだ。#name1#が俺ばかり構うから。こいつは、きっと俺が好きなんだと自惚れていた。あんな拒絶の仕方をされることは、正直予想していなかった。
「...怒ってる...?」
...んなわけないやろ。
悪いのは、俺やのに。
『別に』
なんで普通に、今までみたいに“怒ってへん”て言われへんねん。こんなん拗ねてるだけやんけ。カッコ悪。
「......ごめん」
...謝らせてどないすんねん。最低やな。
お前もいつもみたいにちょっと憎まれ口叩けよ。何を気にしとんねん、アホ。...アホは俺か。
盛大に溜息を零して振り返ると、#name1#が俺をちらりと見る。
『...アイス』
「え?」
『アイス食いたいねん』
「...うん」
...下手くそか。もうちょっと上手くやろう思ててんけどなぁ。
『奢ったる。150円以下な』
「...安、」
『ほんなら160円』
それでもこいつが安堵したように笑ったから俺まで安堵する。
...ああもう、なんやこれ。心臓痛っ。
認めないつもりやったけど、これはもう、しゃあない。なんで#name1#やねん。ほんっまに悔しい。悔しいけど、...好きや。
、
- 8 -
*前次#
ページ: