euphoria


経験豊富てなんやねん!!


...暑いのにこんなとこで、俺は何してんねやろ。

中庭の端に位置するベンチに座ったけれど、後頭部に照りつける陽射しから避ける物なんて何も無いから、項垂れるように俯いて溜息を吐いた。
それでもソワソワしていた。ちょっと楽しみで。ちょっと期待してた。

「熱いなら日陰にいればいいのに」
『お前がベンチで待ち合わせ言うたんやろ』
「忠義って意外と律儀だね」

笑う#name1#が俺の横に腰を下ろしたから、口元が緩みそうで唇を噛んだ。そして#name1#の方を向いて座り直すと、横目でちらりと俺を見て目を逸らし俯いた。

「...そんな改まった感じで来られたら言いにくい」
『...ええから、何?何が聞きたかったん?』

#name1#は少し俯いてバッグに付けたクマだから犬たかよくわからないキャラクターを弄りながら小さめの声で言った。

「...忠義が一年の時に付き合ってた先輩さ、」
『......おん』
「...どうやって落としたの?」

恋愛に関することだとは思っていた。正直、期待してた。“忠義って好きな子いるの?”とか、聞かれちゃったりして!...と、都合よく期待していた。
だから予想外の質問に動揺する。

『...え、落としたって...』
「経験豊富そうだし、忠義」
『..............。』

...俺な、経験豊富なわけちゃうねんで?彼女なんて去年あの先輩が初めてやったし、遊ばれたんか知らんけど1ヶ月でポイされてんから。
“あの美人な先輩を落とした”てたまに言われてんの知ってたけど、何?何なん?そんなこと誰が言い出したん?『付き合お♡』って言うてきたのあっちやで? 終いにはヤリ逃げされたとか、恥ずかしくて言われへんわ。
...初めてやったのに。

「...好きな人がいるの」

顔を上げて#name1#を見たら、陽射しのせいか今の告白のせいか、顔が赤く染まっていた。

「...すごくモテる人で、今のままじゃ絶対無理なの...」

つい10分前まで浮かれてた自分をどつきたい。
...無理?知らんわ!なんやねんこれ。自惚れもええとこや。
溜息を吐くと#name1#の目がちらりと俺に向けられた。

『...普通に、』
「え?」
『仲良くなったらええんちゃう...?』

だっていきなりそんなん聞かれてもわかれへん!俺やってそんなにアプローチとかしたことないもん!
...けど、ドラマとかでよくあるよなぁ?“相談してたらいつの間にか好きになっちゃって...♡”とかいうやつ、ようあるやん。
...掛けてみる?俺が本気になってまう前に、冗談で済むうちに、こいつ落としてみる...?

『...わかった。ええよ』

今ならまだ、大丈夫。可愛いなぁとは思うけど、本気ちゃうもん。だから、今に掛けてみる。

『相談乗ったる。応援したるよ』

相談も応援もせぇへんけどな。俺は、俺のためにそうすんねん。

早い鼓動を隠して、慣れた振りをして、#name1#の頭に手を置き、ぽんと撫でる。

『頑張ろな(、俺)』

俯いて笑った#name1#を見て唇を噛み締める。下心に気付かれないように顔を背け、頭をわしゃわしゃと撫でてから手を引っ込めた。

視線を動かした先に、中身の入ってなさそうなバッグを手にしたすばるくんが不機嫌そうに校門を出て行くのが見えた。その後ろをひとりの女の子が俯いてついて行く。
...よし。さっそく明日、経験豊富な先輩にアドバイス、貰いに行こ。




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