euphoria


今も残る胸の痛み


“もう!やめてってば!好きじゃないよ!”

 ...まただ。
 ...ごめんね、ヤス...。本当は私...。



ハッとして目を開ければ、閉じたカーテンの裾から、薄暗い光が僅かに射し込んでいた。

目尻からこめかみには涙の跡。久しぶりにあの頃の夢を見た。
中学を卒業して間もなくは同じ夢を何度も見ていた。苦しくて痛い、悪夢。後悔しかないあの日の記憶。

これもきっと、昨日届いた同窓会を知らせる葉書のせい。
卒業して5年、私たちはもうすぐ成人式を迎えようとしていた。


5年前、卒業を数日後に控えた中3の私とヤスは、帰り道のコンビニにいた。

『寒いから肉まん食いたいなぁ』
「えー...私ダイエット中だからいい」
『ふーん。#name1#でもダイエットとか気にするんや?』

憎まれ口を叩くヤスの背中にパンチして、いつもみたいにふざける帰り道。


ヤスがこの学校に転校してきたのは2年の夏だった。
自己紹介の関西弁。気崩した制服。派手な金髪。耳にいくつもあいたピアスの穴。突き刺さるようなみんなの視線を気にする様子もなく、隣の席の私に話し掛けた。
明るくてノリのいいキャラクターもあり、すぐに人気者になることになる。



コンビニを出て肉まんを頬張るヤスに、ミルクティーを飲みながら恨めしげに視線を送る。それに気づいたヤスは、ふふっと笑った。

『お前そんなん飲んどったらダイエットにならんのちゃう?』
「うっさい!寒い日にはミルクティーって決まってんの!」

拗ねたように言い返した私に、ヤスは不思議そうな顔をした。

『寒い寒い言うてるわりにマフラーとかしてへんやん』
「だって今日は寝坊しちゃったから急いでて忘れちゃったんだもん...」
『ほーんましゃーない奴やなぁ』

ヤスの首からマフラーが外され、あっという間に私の首に巻かれる。
その距離があまりに近いのと、ふわりと香ったヤスの香りにドキリとした。だから、顔を見ずにありがとう、と言ったら、ん、とだけ返して照れたように鼻を啜った。
先に歩き出したヤスを追いかけ、私も歩き出す。

付き合っているわけではない。告白なんてされていないし、もちろんしてもいない。
だけどこの時の私は、仲の良い友達のヤスを、完全に友達以上に見ていた。
多分、ヤスも私と同じ気持ちなんじゃないかと、密かに期待もしていた。

いつもの分かれ道で、ヤスは
『それ、#name1#にやるわ 』
と言い、私が返事をするのも待たずに足早に帰って行った。




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