青春ひとりぼっち
翌日、昨日の光景をフラッシュバックさせては顔に熱が集まる。ヤスの香りと温もりを思い出してひとり胸を熱くする。
さすがにヤスのマフラーを巻いてくる勇気はなかったけれど。頬を押さえて短く深呼吸してから教室へ入った。
すると、どこかいつもと違う空気感に気づいて周りを見渡すと、何が可笑しいのかニヤニヤした数人の男子たちに囲まれた。
『俺昨日見ちゃったんだよねー。マフラー』
思わずビクッと肩が揺れてしまった。
体が強ばって、顔が熱い。
『なあなあ、ヤスと付き合ってんの?』
『それとも片想い?』
冷やかすように面白がって話し出すから、周りがざわざわと騒ぎはじめた。
マジで?とか、ショック...とか、仲良いから怪しいと思ってた、とか、みんな好き勝手に騒ぎ立てている。その中心で絶望のような感情に支配されていた。
まだ子供だった私は、みんなに気持ちがバレてしまうのが、ただただ怖かった。
どうやってあしらおうかなんて考えている余裕は全くなかった。ただ、少しでも早く、この状況を回避したかった。
『...もう!やめてってば!好きじゃないよ!』
一瞬教室の中が静まり返った。
『...もうやめなよ』
『かわいそう』
女子の声と共に、男子たちが散っていく。
早いままの鼓動に、汗ばむ手。震えてしまいそうな手でスカートを握りしめ、どうにかやり過ごした。
自分の席へ向かおうとしたその時、ドアの向こうの廊下にヤスが俯いて立っているのが見えてドクリと心臓が脈打った。
聞かれてた...?どうしよう...ヤスの顔が見れない。
ヤスは、騒ぎがあったことなんて何にも知らないみたいに、おっはよー!と普通に教室へ入ってきた。
...よかった。ヤス、普通だ。
もしかしたら聞こえていなかったのしれない。
私はそんな風に自分に言い聞かせ、自分を守ることを優先してしまった。
けれど放課後、ヤスの姿はなかった。ほとんど毎日一緒に帰っていた。
...今日は、たまたま?...そうだよね、きっとたまたま。
だってヤスは普通だったんだから。
“もしかしたら”を考えるのが怖かった。逃げていた。
けれどその次の日も、また次の日もヤスと一緒に帰れることはなかった。
ヤスはHRが終わると、足早に教室を出ていく。まるで私を避けているかのように。
それどころか話すことさえも出来なくなった。
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