どんな言葉もたりない
#name1#が俺を見て、笑った。
「章ちゃん、ありがとう」
『...なんのありがとう...?』
「今まで、いっぱい支えてくれたから」
『...え、?』
「章ちゃん、好き。...好きだから、一緒に、居て...」
真っ直ぐに見つめられて放たれた愛の言葉は、胸にじわりと染み込んだ。
嬉しくて、愛しくて、力一杯抱き締めた。
『...当たり前や。ずっと、居ったやん。これからも、ずっと居ったる、』
声が震えてしまって、情けないと思った。だから、抱き締めた#name1#の香りで胸をいっぱいにして、落ち着け、と自分に言い聞かせた。
ずっと、好きだった。
いつからかなんてわからない。
自覚が無かった。だから#name1#に好きだと言ったことなど一度もない。
それなりに恋愛もした。
キスもしたし、セックスもした。けど、こんなもんか、と思った。
今までの彼女は好きだったけど、いつも#name1#が優先だった。
#name1#が一人で帰るのを見れば追い掛けて隣りに並んだし、#name1#が泣いていれば彼女との約束を断った。
それだけ#name1#は別格だった。
それが原因でフラれたことだってある。
気持ちに気付いたのは、#name1#が渋やんと付き合ってからだった。
訳のわからない苛立ちに、何度となく襲われた。それは決まって、二人を見ている時だった。
こんな苛立ちには覚えがあった。
そうか、ずっと、好きやったんや。
でも、絶対に言ってやらない。
だって、#name1#からしたら“ ずっと ”なんて嘘みたいな話だ。俺の彼女を、#name1#は今まで何人も見てきたのだから。
ずっと、大切だった。
守りたかった。
ただ、それだけだと思っていた。
けど、そんなんじゃ足りなくなった。
愛されたいと思った。触れたいと思った。
それが愛だと気付いてしまったら、
苦しくて堪らなかった。
目を閉じると、今までのことが走馬灯のように瞼の裏を駆け巡った。
『もう、好きとかやないねん。どんな言葉でも足りひん。上手く言われへんけど、好きとか愛してるなんて言葉じゃ、全然足りひん、』
抱き締めていた#name1#が腕の中で笑って顔を上げた。
「わかってる。だって、苦しいもん。章ちゃんの腕」
ごめん、と言って少しだけ抱く力を弱めた。それさえも今は惜しく感じる。
その代わりに今までの思いを込めたキスをした。
長い長いキスの間に、俺の腰に#name1#の腕が回って力が込められた。痛いくらいに。
だからまた、愛しさを込めてきつく抱き締めた。
『...#name1#はもう、俺のやねんな、』
「うん。...章ちゃんの好きにしていいよ」
『...ん、する。...まず、シよ』
唇を合わせて、
身体を合わせる。
決してひとつになることはない
別々のふたつの身体が
求め合って重なって
ひとつになったと錯覚した瞬間
俺達の歪んだ恋愛ごっこは
ようやく本物の愛に形を変えた。
End.
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