荷物、受け取りました
すばるに言われた時間に章ちゃんのマンションに向かった。正確には、だいぶ早く着いてしまったのだけれど。
まだ帰っていないかもしれないから、時間までマンションの前の壁に凭れ章ちゃんを待つ。
10分ほど経った頃、タクシーから降りてくる人影を見て、緊張が走り息を飲む。
章ちゃんだ。
テレビでしか見ていなかったから、本物だ、なんて思ってしまった。
自動ドアの前で立ち止まった章ちゃんが、私にチラ、と目を向けて手元の鍵に視線を移したと思ったら、すごい勢いで私を二度見した。
驚いたように目を見開いた章ちゃんが、立ち止まったまま声を掛けた。
『...何してんの、?』
その言葉にどう返答しようか迷ってると、こちらに歩いてきた章ちゃんが言った。
『...とりあえず...入ろ』
「...うん、」
『部屋、汚ないで...?』
「平気」
ロックを解除しながら章ちゃんが言ったから頷いた。
エレベーターの中で、突然『...はっ!』と声を上げたから、驚いて章ちゃんを見る。
『...でかい荷物や、 ...?』
私を指さしてそう言った章ちゃんに、首を傾げて
「...は?」と聞いたら、
『...洗濯、するわ...』
と意味がわからない事を言っている。
「章ちゃん、何?どういうこと?」
『...渋やんからの荷物って、#name1#のことやんな?』
「...そうかも。でも、荷物...?」
章ちゃんは納得したように頷きながらエレベーターを降り、部屋の鍵を開けドアを押さえたまま、どうぞ、と促される。
この部屋に来るのはまだ二度目だから緊張する。
部屋へ一歩足を踏み入れると、章ちゃんの香りでいっぱいで、思わず笑った。
『どうしたん、?』
「章ちゃんのニオイだなーと思って」
『...そうかー?』
照れたように笑った章ちゃんが、すごく愛しくなって微笑み返した。
すると、ドアを閉めた章ちゃんが私を抱き締める。
顔を私の首筋に埋めたまま、章ちゃんが言った。
『...会いたかったわ、』
「...ごめんね、章ちゃん、」
強く抱き締められて、安堵の溜息が漏れた。章ちゃんは今も変わらず、私を好きでいてくれている。
顔を上げた章ちゃんが私の手を取り部屋の中へ入ると、二人でソファーへ腰を下ろす。
私を見つめ、何か言いたげな章ちゃんに首を傾げると、苦笑いしながら言った。
『...念のため、確認していい?疑ってるわけやないで?...渋やんとは、?』
「昨日偶然会ったの。少しだけ二人で飲んで来た」
『そう、なんや、』
「全然、平気だった」
章ちゃんが眉を下げたまま不思議そうな顔をして私の言葉を待っていた。
「すばるのこと、もう平気だった。すばると会って、章ちゃんの話したら、...会いたくなっちゃった、」
安心したように笑った章ちゃんは、
『そっかぁ、』
と言って俯いた。
もう、本当に愛しい。
その顔も、その仕草も、その声も。
...会いたかった。
- 35 -
*前次#
ページ: