冷たい世界の灯火
その時、部屋のドアをノックする音が聞こえて思わずドアの方向に顔を向けた。なんやねん、と低く呟き舌打ちをしながらも、律動は変わらず続いていた。
『誰ぇー?』
『入っていい?』
その声にドキリとして、一瞬で呼吸が止まったように苦しくなった。
『お迎え、来たみたいやで』
楽しそうに言いながら未だ律動を繰り返すエースの下で必死に身を捩る。けれど当たり前に解放されるはずなどなかった。
『開いてるー』
...やだ。やめて。
お願い。開けたりしないで。
ドアが開く音と共に顔を逸らしシーツに顔を埋めると、すぐにドアが閉まる音がした。
肌がぶつかる音がやたらと大きく聞こえる気がするのは、この人がわざとそうしているからだろうか。
『ちょ、待ってて』
トッポが部屋の中に居るのは確実だった。一旦逃された絶頂を取り戻すように、急にエースが掌で胸を包んで刺激し、繋がるそこに溢れる体液で既に濡れて膨らんだ突起を同時に押し潰しながら撫でる。すぐに戻ってきた快楽の波に首を横に振って耐えるけれど、強過ぎる刺激にいとも簡単に絶頂の波に飲まれた。
ひくりと揺れて崩れ落ちた体は支えられることなくベッドに沈んだ。すぐにもう一度エースが入ってきて、体がビクリと揺れ声が漏れた。
『...なにしとんねん』
トッポが笑ったような口調で言った。
『だからぁ、匿ってたんやんけ』
『それはさっき聞いたけど。なんでこんな事なっとんねん』
『誘ってきてん。こいつが』
縛られたままの手ではポロポロと零れる涙を拭うことも出来なかった。
達したばかりの体に繰り返される律動。強過ぎる刺激にただただ体が震えてひくりと時折腰が跳ねる。
『お前の女ちゃうんやろ?』
『ちゃうよ』
『ほんなら、まだ抱いてへんの?』
『...まぁな』
太腿の上に乗ったまま後ろから埋められていて、もう身を捩ることさえ許されなかった。軽い絶頂を繰り返し体は勝手に揺れ、呼吸も荒く震えていた。
『お前も相手したれよ』
『もう十分ちゃうの』
エースが呼んだのだろうか。ベッドのすぐ横で聞こえたトッポの声に心臓が跳ねる。
『まだ足りひん言うてるで』
トッポとは反対に向けていた顔を上から覗き込まれ、眼鏡越しにトッポと視線が絡んだ。すぐに視線を逸らすと涙が零れ、また反対側からトッポの声が聞こえる。
『その割に泣いてるやん』
『そんな欲しいねんな』
笑うエースの声に悔しくてますます涙が溢れた。
『はよ脱げや』
急かすようにトッポに言ったりするから胸が苦しくて痛くてどうしようもなく絶望していた。
『...そういう趣味ないねんけどなぁ』
トッポが呟くとエースが腰を浮かせ、また私の腰を持ち上げ激しく打ち付ける。腰には指が食い込み、激しい息遣いに絶頂が近いことを知らされる。
繰り返してきた絶頂はすぐにもうそこにあって、エースのそれを待たずに体がビクリと跳ねた。
小さく声を漏らしたエースが私の中から出て行った。性器からヒップにかけて吐き出された熱い体液が流れ落ちるのを感じながらベッドに崩れ落ちると、はよ、と低い声で急かすエースの声が遠くに聞こえた。
後ろで縛られていた手が解かれ背中に触れた手は、冷たい手だった。カチャカチャとベルトを外すような音が聞こえて、肩を掴んで引かれたけれど、自分で体を起こすことも出来ない程力が入らない。ぐい、と肩を起こされ仰向けに転がされると、私の顔の横にいるトッポと目が合った。
涙でぼやけるトッポの顔から目を逸らすと、手を取られまだ反応していないそこを握らされた。
『咥えて』
言ってすぐに視線を逸らしたトッポのそこに、唇を開いてゆっくりと舌を這わせた。荒い呼吸のせいでぎこちなくしか動かせない舌に押し付けるようにトッポが腰を突き出す。震える唇で咥え込めば、ひくりとそこが芯を持ち始めた。
口の端を上げたエースが面白そうに上から覗き込んで冷たく笑う。視線を外して目を閉じると同時に涙が零れ落ちた。
恐怖感はもうなかった。
私はこの世界に来た時からこういう運命だったのだと思い出していた。トッポに再会したからといってそれが変わることはなく、ずっと同じ道を歩いているだけなのだ。
ただ、酷いことをされているはずなのに、トッポの顔を見たら少し安堵している自分もいた。
突然足を掴まれぐっと膝を押されると、またエースが一気に私の中に押し込んで背中が仰け反る。さっきよりも緩やかに律動されたって体は余韻ですぐに熱を取り戻した。
喉の奥の声が鼻から漏れると、トッポに髪を緩く掴まれた。見上げれば無言で視線を絡ませ、トッポの手が頭を撫でるように動いた気がしてドキリとする。
必死に奥まで咥え舌を絡めれば、トッポの腰がひくりと小さく揺れた。
『おい、こっち』
エースが私から出て行って顎をしゃくる。口から引き抜かれると、すぐに私の横に現れたエースが私の半分開いた口にそれを無理矢理押し込んだ。自分の味のするそれを思わず手で押し顔を背けると、その手を捕まえられすぐに自由を奪われた。
足を抱え上げられトッポが私の中にゆっくりと自身を埋めた。緩やかに始まった律動にトッポを見上げると、やっぱり色のない瞳で私をただ見下ろしていた。エースよりも緩やかな律動であっても散々弄ばれた体は勝手に反応して腰が跳ねる。
けれどそれだけではない。やっぱりトッポに触れられるのは少し違っていた。トッポだから、違っていた。
思わず高い声が漏れれば、エースが開いた口に性器をぐっと押し込み息が詰まる。
『俺ん時とえらい違いやんけ』
私の心を見透かしたように、冷ややかで意地の悪い笑みを浮かべてエースが私を見下ろす。眉根を寄せて見上げると、ふっと鼻で笑って小さく腰を揺らした。歯を立てないように先端を頬の内側で受け止めるけれど、快楽の声ばかりが漏れてしまう。
淡々と私を揺さぶり続けるトッポと視線が絡むと、昨夜よりも冷たい色の目が私を映していた。腰を引き寄せ深く埋め、少し早められた律動に腰が浮く。
『使い物にならへん口やな』
不機嫌さを凝縮したような口調でエースが言った。私の手を解放し、咥内からエースが出て行ったから大きく息を吸い込み、トッポを見つめた。
流れてくる煙草の煙の向こうで息を上げたトッポが軽く唇を噛んだのを見て、私で感じてくれているようで嬉しくて思わずトッポに手を伸ばす。その手を見ていたトッポの目が上に動いた。
半開きの口にタブレットのような何かを押し込まれ、突然顔の前に現れた口角を上げたエースの唇に口を塞がれた。
『...それあかんて』
呟いたトッポの声を聞いてドキリとした。煙草の味がする舌を絡められると、しつこく唇を合わせられ息をする暇さえ与えられない。
口の中のそれを飲み込まないように、
唇が離れてすぐに吐き出そうと顔を傾けると、口を掌で覆われた。息が上がり鼻からだけでは呼吸がままならない。必死に酸素を取り込もうと首を横に振るうちに、次第に舌が脈打つように熱くなってきて背筋がゾクリとする。
息苦しさに必死でエースの手を掴み外すと、半分溶かされたそれを思わず飲み込み大きく息を吸い込んだ。するとそれを見たエースが私を嘲笑する。
『もっとよくなるからな』
呆れたようにエースを見たトッポの目が私に戻ってくる。
視線が絡むとじりじりと熱を上げる体。ひくりと収縮する性器。息苦しくなる程じわりじわりと快楽が襲ってきて息を詰める。
煙草を咥えたエースが私の脇腹に触れると、信じられない程に体がビクリと反応して体の中心部が熱くなる。その指を滑らされると繋がった部分からますます蜜が溢れ、厭らしい音を立てた。
エースの舌が耳朶を甘く噛んで舌を這わせれば、耳元で響く水音にまた体が疼く。
自分でも性器がひくりと収縮を繰り返すのがわかる。その度に熱く吐息を漏らすトッポの指先に力が篭る。その指先にさえも愛撫されているようで、迫る絶頂に耐えるようにその手を掴んだ。
腰を揺らす度に当たる奥の方から痺れるような甘美な疼きが広がる。縋るように手を掴み直せば、唇を舐めたトッポの扇情的な目が私を捉えてますます私を追い詰めた。
繋がっている部分から足先、頭のてっぺんまでも痺れるような快感に襲われた。気の遠くなるような陶酔感に飲み込まれ、自分の早い鼓動と呼吸音しか聞こえない。重たい瞼は開くことも出来ず、快感の強過ぎる余韻でベッドに沈んでいくような感覚に陥った。
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