……………

「おい!あと何分だ?」

「あと15分です!」


横断歩道の前で止まっている1台のバイク。

ふたりは丁度赤信号にひっかかり、時間のない中無駄な立ち往生を喰らっていた。

クソッ。こんな時に限って…


「あぁ、腹立つな。つか、この信号長くね?壊れてんじゃねぇか?」

「落ち着いてください、ナイジェル」


イライラしている自分を宥めているリッキー。

なんだかおかしな気分だ。


「ボビーのお家までは、実際あと何分位なんですか?」


後ろにしがみついているナイジェルの姿をしたリッキーは、キリキリしている彼に話しかける。


「普通に走って20分。急げば間に合うと思うが」


赤色に光って動かない信号をジッと見つめる。

あれ…急に喋らなくなった。

先程まで揺らしていた貧乏ゆすりも止まっている。

どうしたのだろう?


「ナイジェル?」

「……。」

「大丈夫で…」

「リッキー。掴まっとく力、残ってるか?」

「え?は…はい、大丈夫です」

「よし」



ブオン!とエンジンをふかせ、人気の少ない夜の道路に轟音を響かせるナイジェル。

何度も何度もパワーを溜めるように


そして…


「しっかり掴まってろよ!!」


「えっ?」

ふたりの乗ったバイクは突然進路を大きく変え、猛スピードで隣の林に突っ込んだ。

その行動に後ろに掴まっている彼も驚く。


「えええ!ちょっ、ナイジェル!どこ行ってるんですか!?」

「近道だよ!近道!」

「近道ってこれ道じゃないですよ!真っ暗だし、岩とかその辺にゴロゴロ転がってるし!危ない、転びますよ!」

「んじゃ振り落とされねぇように、しっかり掴まってろ!」


ますますスピードを上げる彼。

後ろのリッキーは慌てふためき、前の体にギュッとしがみつく。

上下左右に揺さぶられ、まるでジェットコースターにでも乗っている感覚。

真っ暗の林の中。木や岩をかわし、水溜まりをジャンプして避け…

一気に草木を抜けて飛び出した!



キキーッ!!



大きな音が響き、バイクは一般道路へと着地する。

着地した途端に煙が舞い、道路にタイヤの焦げ目の跡が残った。

これがナイジェルの運転スタイル。

細かい動作は一切省いて、一気にゴールまで駆け抜ける豪快さが彼の持ち味だ。


「はぁ!やっと出た!ナイジェル、あんまり無理しないでくださいよ!本当に死ぬかと…」


しかし、道はまだ終わっていない。

ゴールはここじゃないからだ。

運転している当の本人は意識を集中しているせいか、リッキーの声に耳を傾けず、その道路でもどんどんスピードを上げて走る。



と、前方に信号機が見えた。

その色は間違いなく赤だ。

しかし全くスピードを落とさない彼に、思わずリッキーが叫ぶ。

「ちょっ!ナイジェル!?前!!前、赤でっ…」


彼らが信号を通過しようとすると、そこへトラックが突っ込んできた!


「ァアアアア!!!」












夜風が吹く暗い田舎道。

間一髪で衝突は避けたが、トラックは見事に電柱にぶつかっていた。

その光景を見て、後ろに乗っているナイジェルの姿をしたリッキーは顔を真っ青にする。


「ちょっとマジで!何やってるんですか!!」

当然だが、こんなに怒るリッキーも珍しい。

しかし当の運転手は、してやったりとヘルメットの下からどや顔を返してきた。


「んな興奮すんなよ。映画みてーだったろ?楽しかったか?」

「楽しいわけないでしょ!しかも信号赤でしたよ!今のは明らかに俺らが悪…」

「知らねーのか、リッキー。
信号ってのはな『青はもちろん進め・黄色は進め・赤は用心して進め』なんだよ」

「おまわりさん!コイツ逮捕してください!」


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