……………

陽は沈んで時計の針は午後9時をさしている。

そろそろ今週の成績Weekly Report当番は出かけないといけない時間帯だ。


「んもっ!そんなにくっ付いたら歩きにくいー!」

記録資料の入った鞄を握って彼女が外へ出ようとすると、馬鹿二匹がピタリと前後に張りついた。

「お前の事を心配してやってるんだからな!隙を見せるなよ!敵はどこから出てくるかわからない!」

「大丈夫、ビッキーちゃん!ほら、お守りをあげるよ。ボビー人形!これがあればきっと神様は君を守ってくれるよ!」

「いらない」


ボビーがお守りとして渡した気持ち悪い人形は、迷いなく後ろにいたジムに回された。

まだ敷地内から出てもいないのに、彼らはメラメラ戦闘モードだ。


ジム「よし、左右不審人物なし!上部、スナイパー・監視カメラ・未確認飛行物体なし!下部、トラップ・地雷・モグラなし!」

ボビー「さぁ、歩き出そうビッキーちゃん!僕がいればもうこの世に怖いものなんて何もないさ!」

「アンタが前にくっ付いてるから歩けないんだっつーの!」



「「…………。」」

そんな光景を黙って見ている蚊帳の外3名。


「何なのあれ…?」

「あれが恋の力なんですよ」

「モグラいたらどーなんのか?モグラは一々確認しないといけないくらい、護衛に支障をもたらすのか?」


サラとリッキーが揃って小さくため息をついたと同時に、ビッキーはボビーの踵をわざと踏みながら理事長宅を目指して歩き出した。









こんな時間とあってか辺りは既に暗く、道端にもほとんど人の姿がない。

そんな中、一組の怪しい軍団がその通りを我が物顔で歩いていた。


東側にサラ。

西側にナイジェル。

南側にリッキー。

本人の前後にボビーとジムが付く、完全防備体制。

モグラ一匹彼女には触れさせやしない。

そんな雰囲気だ。


歩き始めて5分で「止まれ」の標識がぽつんと立っている。

これが彼らの中間ポイントの目印。

ようやく半分を過ぎたという証拠だ。

これまで特に変わった様子もなく、スタート地点からほとんどやる気のなかったサラとナイジェルは完全に集中力を切らしてしまい、鼻歌を歌ったり自販機で飲み物などを買い出している。


「お前ら散歩感覚か!?近くのコンビニまで夜食を買いに行ってんじゃねんだよ!もっと神経を集中させろ、バカヤローッ!」

「だってねぇ、何も出てこないし」

「これビッキーが外出する度に毎回やるつもりか?体持たねーよ」


ジムが近所迷惑な程の声を上げて注意するが、当の本人達は全く反省していない様子。

つか、なんでふたり並んで歩いてる?

もはや定位置にさえついていない。

完全に開き直ってやがるし、やる気のないこいつらが何を言った所で素直に言う事を聞くはずもない。

ダメだな、こりゃ。


「ったく、相変わらずお前達も飽きるのが早いな。じゃ、一旦この辺で休憩するか?」

「えぇ!別に私まだ歩けるよー!」

「このままじゃ『気づいたら3人しかいなかった』って状況になりかねないだろ」


サラ「あら?リッキーは?」

ナイジェル「知らね。迷子にでもなってんじゃね?」


ジム「言ってるそばから、もうほとんど3人しかいねぇじゃねーか!
それにビッキー…お前が踵を踏み続けたボビー、血まみれじゃんか。容赦ないな」


とりあえず、さほど歩いてはいないが一旦休憩を取る事になった5名。(後、迷子の1匹を回収)

近くに小さな公園があるので、そちらに向かって足を進めた。


- 183 -

*PREV  NEXT#


ページ: