6人が入ったのは小さな公園。

昼間は近所の子ども達の声で賑やかだが、こんな夜遅くだとさすがに誰もおらず、明るい時間帯とは全く違う顔を見せている。

一同はベンチや遊具に座り、各々休憩を取り始めた。

その時間の話題はもちろん例のストーカーについてだ。


「ビッキーさ。ストーカーの被害に遭ってるって言ってたけど、相手の顔は見たのか?」

「顔は見た事ないよ。でも人に付けられてたっていうのは間違いない!今日も買い物してたらずっと後ろから付いてきてる人がいたし、私の事をジロジロ見てた気がするの!でも振り返ったらすぐに隠れられちゃって」

「そっか。顔さえわかれば犯人も特定出来るのにな」


一緒にベンチに座っていたビッキーの答えに、ジムは残念そうに両手を後頭部に当てる。


「でも今日は、なかなか出てこないわね」

「そうだね。やっぱり僕がいるから近づけないんじゃないかい?」

「あら、わかってるじゃない、ボビー(笑)」

ジャングルジムに登っているボビーに、シーソーに座っていたサラはクスリと笑った。


「でもジムの言う通り、ストーカーの特徴や情報が得られれば、なんとかしてこちらから追いつめられると思うんですがね」

「携帯にかかってくる番号もずっと非通知だし、本当…誰がこんな事やってるんだろう」

ベンチの横に立っていたリッキーも心配そうな表情。

外灯が切れ気味なのかチカチカと光り、周りに小さい虫達が集まっていた。

そろそろ休憩して5分が過ぎる。




ガササッ…


「ッ…」


何かの気配を察知したのか、軽く漕いでいたブランコを突然止めたナイジェル。


「どうしたの?」

「誰かいる」

「「…えっ!?」」


彼の言葉に揃って声を漏らした5人。

見た目によらず洞察力が鋭いこの人が言っているからには間違いない。


まさか…ストーカーがこの近くに?



夜風で周りの草木が大きく揺れる。

それが今は紛らわしくて、どこから奴が出てくるかわからない。

周りを包み込む嫌な予感に不安を覚えつつ、6人の緊張が一気に高まる。


誰かから見られている?

そんな気がしてならない。



その瞬間…


ザザザッ!!


謎の黒い影が彼らの周りを猛スピードで走り出した!


「誰だ!?」


必死に目を凝らして見てみるが、視界が暗いためか顔が全く見えない。

だが、自分達の仲間ではない誰かがこちらを狙っているのは確かだ。

目で追いつけない。まさに人間離れしたスピード。

一体どういう…


「キャッ!」


全員がその人物に翻弄されている中、突然サラがその人物に突き飛ばされてシーソーから地面へ倒れ込んだ。


「サラッ!」


ブランコから離れ、真っ先にナイジェルが彼女の元へ駆け寄る。

それに全員の気が引かれた瞬間、高くジャンプした謎の人物は一直線にビッキーの元へ…!


「ビッキー!!」


ジムの声が公園中に響いた。

見上げる彼女に黒い影が落ちる。


「…ッ…!Σ」


上空から見下ろすソイツの目が赤く光っていて…

恐怖で声も出ない…!

持っていたバットを振り上げ、一気に突っ込んでくる影。

ビッキーが恐怖でしゃがみ込もうとした途端、隣にいた男が強く地面を蹴った。



ガッ!!



「…ッ…!」


物と物が激しくぶつかり合う音。

彼女が恐る恐る目を開けると

相手のバットを竹刀で受け止めていたリッキーの背中が映った。


「リッキー!!」

「グッ…!」


歯を食いしばる彼。

犯人も突然の第三者乱入に表情が歪んだ事がわかった。

相手の顔を見ようとするが、運悪く外灯から離れた場所にいたのでハッキリとはわからない。


「…ッ!?」

しかし長年の経験からか、何かを感じとったリッキーは思わず力を緩めた。


ザッ!


その瞬間に彼から身を引き、再び周りを走り回ってメンバーを攪乱させる謎の人物。


「チッ!」


膝を地面につけたまま拳銃を構えて、ちょこまか動き回る人物に狙いを定めるナイジェルだが…





「相手は女性です!」



「「はぁっ!!?」」



リッキーの声に全員が彼の方向を見る。


「オマッ…嘘つけ!なんで女が女をストーカーする必要があるんだよ!?」

「それはわかりませんが…でも間違いありません!顔は見えなかったですが、力は男性ほど強くありませんでしたし、女性の癖がよく出ていました!」

「クッソ…」


その言葉に構えていた銃を仕舞うナイジェル。


「おい!ナイジェル君!どうしてそこで諦めてしまうのだ!?勝負はまだまだこれか…」

「ふざけんな!いくら俺でも女を撃てるか!」

「なんでこんな時だけヤサ男発揮してるんだ!状況を見ろ、状況を!」


男性陣が口論をしている隙に、公園から出て一般道路へ逃げ出したストーカー犯。


「クソ、逃げた!追うぞ!」


ジムを先頭に走り出した、ナイジェル、リッキー、そしてボビー。

しかし相手は女性と聞くが、かなり足が早い。

男全員が本気で走っても徐々に差が開いて、直線の道路だとそれが一目でわかってしまう。


「ひ…貧血かな…僕もう倒れそうだよっ…」

「どーいう事だよ、リッキー!本当にアイツ女なのか!?」

「多分…」

「多分ってなんだ!?もうそのまま走って家帰れテメェ!」


ボビーの足がもつれ、リッキーとナイジェルが言い合いを始める中、



「待てって…」



真ん中を黙って走っていたジムが遂に口を開いた。

その手には、出発直前にビッキーから回されたボビー人形が握られている。


リッキー「ジム?」

ナイジェル「オイッ…」



何やら見た事のある体勢。

左手でボビー人形をポンッと空高く投げて…


「お前…まさか、ちょ…ま!」


強く踏み込んで高くジャンプ!

間違いない

サーブの構えだ。



「言ってんだろうがぁぁぁあッ!!煤v



バチ―――ンッ!!!


勢いよくジムの手から放たれた弾丸サーブ。

仲間を酷い目に遭わせた怒りもこもっていたのか、
ビーチバレーの時より何十倍も早いスピードのボビー人形は空気中で炎を帯びてゆき、一直線にストーカー犯の頭をめがけて飛んでいく。

そして…


ドガシャァァッ!!!


見事に走っている奴の後頭部にクリーンヒット。

とてもぬいぐるみが当たったとは思えない効果音だ。

ぬいぐるみなのに…。

ぬいぐるみ…なのに。


激しい衝撃によりボビー人形は一瞬で大破。

その場で大の字に倒れ込んだストーカー犯の背中に、人形の綿が散乱している。


「「…こ…怖ぇ…」」

瞳孔が開き大きく息を吐いたジムの背中を、残された男3人は震えながら見ていた。


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