15
「ジムもビッキーも帰って来ないわね」
「そうだね。僕…心配すぎて禿げそうだよ!」
「社長さんも社長さんで『正義の味方と交信してくる』とかテキトーな事抜かしていなくなるし…ったく、大丈夫かよ」
メインルームに残されているサラとボビー、そしてナイジェル。
普段と変わらない室内なのに、なんだか物悲しい空気が漂っている。
ジムとビッキーが部屋を出て一時間は経ったな。
ふたりとも帰ってくる気配もないし、連絡も取れない。
時計の針が動く度に、彼らの不安はますます増していく。
ピンポーン!
「…っ!」
そんな張り詰めた空間に響いたのは、突然鳴ったインターホンの音だった。
まさか…
3人は慌てて玄関まで走り出す。
大の大人がドタバタと騒がしく廊下を走り、勢いよく扉を開けると…
目に映ったのは見知らぬ若い男性と、その後ろにちょこんと立っているびしょ濡れのビッキーの姿だ。
「ビ、ビッキーちゃん!大丈夫かい!?」
「う…うん」
「待ってて、今タオル持ってくるから!」
ビッキーの無事に狂喜するボビーと、慌てて洗面所へバスタオルを取りに行くサラ。
震えながらも彼女に怪我はないようだ。
ナイジェルも安心したのか、大きなため息をひとつ吐いた。
「お前がコイツを拾ってくれたのか?誰か知らんが礼を言うよ」
「いえ。とんでもないです」
どうやらこの若い男性がビッキーをここまで連れて来てくれたらしい。
男にしては女性みたいな可愛らしい笑顔が印象的な温厚な青年。
グレーの髪も枝毛1本ないようにサラサラで、肌も色白、体型も痩せ型。
なんだかモデルや芸能人を連想させるような容姿端麗な顔つきだ。
その男性の顔を見て何か思ったのか、ナイジェルは眉をひそめる。
「お前…どっかで会った事あるか?」
「え?いえ、多分ないと思いますが」
「そうか。なんか見た事あるような面だから…多分俺の気のせいだ。忘れてくれ」
「気のせいじゃないですよ。ナイジェルさん」
そこへ先程まで姿を消していた社長が、突然ひょっこりと背後から現れた。
「あ、社長!ご無沙汰しています。連絡ありがとうございました」
「うん。待ってましたよ」
丁寧にお辞儀をする例の青年に笑顔の社長。
なんだ?社長さんの知り合いか?
「社長…この人は?」
ビッキーの頭を拭いているサラが全員の思っている事を訊いた。
「はい、実はこの子…」
「あ、俺から自己紹介させてください」
社長の言葉を遮る青年。
彼は思いもよらぬ名前を口にした。
「初めまして。この度ウィンディランへ新しく配属されました、リッキー・スターンです。よろしくお願いします」
ぺこりと丁寧にお辞儀をした「リッキー」と名乗った青年。
「リ…リッキー・スターン!?あの有名な!?」
全員の声が同時に揃う。
それもそのはず、当時のリッキー・スターンと言えば「バイク界に現れた天才ルーキー」として、業界では誰もが知る期待の新星。
その実力とルックスから男女問わず絶大な支持を受け、どこの企業も欲しがっていたスーパールーキーだったのだ。
「なんでそんな君がここに!?」
「皆さん、僕に感謝してください。他企業との激しい争奪戦の中で、僕が奇跡的に勝ち取った原石なんですから!」
鼻をフンと鳴らして自慢気に話す社長。
「じゃぁ、もうひとり目をつけてるって…この子の事だったのね」
「そうですよ」
「これから皆さんと一緒に生活をさせて頂きますので、どうぞよろしくお願いしますね!」
爽やかに笑ったリッキー。
そんな彼を、ビッキーはタオルにくるんだ顔でじっと見つめた。
この人が…これからここに住む?
雨の中。ロマンチックな出会い。
微笑みかける優しい瞳。
紳士的なエスコート。
そして何より…
イケメンッッ!!!!!!
ギュッ!!
「えっ…?」
突然サラの手を強く握ったビッキー。
「サラッ!これからも頑張って、一緒にバイク乗って行こうね☆★」
「…え?…えぇ…そ…そうね。頑張っていきましょう(苦笑)」
こうして社長のイケメン導入作戦は大成功。
ふたりの新しい仲間が同時に加わり、今の6人の個性豊かなチームが完成した。
めでたしめでた…
「めでたくねぇぇッ!!!」
ジムは屋根付きの小さなバス停でひとり叫んだ。
「なんで俺だけ放置!?俺、リーダーだって何回言えばわかるんだよ!
ビッキーいくら捜しても見つからないし、雨はやまない所か嵐になってきてるし、濡れるし寒いし寂しいし!!
あ、そうだ!携帯で助けを…ゲッ!俺の携帯防水じゃなかった!
誰かぁぁぁ!助けてくれぇぇッ!!」
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