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「ジムもビッキーも帰って来ないわね」

「そうだね。僕…心配すぎて禿げそうだよ!」

「社長さんも社長さんで『正義の味方と交信してくる』とかテキトーな事抜かしていなくなるし…ったく、大丈夫かよ」


メインルームに残されているサラとボビー、そしてナイジェル。

普段と変わらない室内なのに、なんだか物悲しい空気が漂っている。


ジムとビッキーが部屋を出て一時間は経ったな。

ふたりとも帰ってくる気配もないし、連絡も取れない。

時計の針が動く度に、彼らの不安はますます増していく。



ピンポーン!


「…っ!」


そんな張り詰めた空間に響いたのは、突然鳴ったインターホンの音だった。

まさか…


3人は慌てて玄関まで走り出す。

大の大人がドタバタと騒がしく廊下を走り、勢いよく扉を開けると…


目に映ったのは見知らぬ若い男性と、その後ろにちょこんと立っているびしょ濡れのビッキーの姿だ。


「ビ、ビッキーちゃん!大丈夫かい!?」

「う…うん」

「待ってて、今タオル持ってくるから!」


ビッキーの無事に狂喜するボビーと、慌てて洗面所へバスタオルを取りに行くサラ。

震えながらも彼女に怪我はないようだ。

ナイジェルも安心したのか、大きなため息をひとつ吐いた。


「お前がコイツを拾ってくれたのか?誰か知らんが礼を言うよ」

「いえ。とんでもないです」


どうやらこの若い男性がビッキーをここまで連れて来てくれたらしい。

男にしては女性みたいな可愛らしい笑顔が印象的な温厚な青年。

グレーの髪も枝毛1本ないようにサラサラで、肌も色白、体型も痩せ型。

なんだかモデルや芸能人を連想させるような容姿端麗な顔つきだ。

その男性の顔を見て何か思ったのか、ナイジェルは眉をひそめる。

「お前…どっかで会った事あるか?」

「え?いえ、多分ないと思いますが」

「そうか。なんか見た事あるような面だから…多分俺の気のせいだ。忘れてくれ」

「気のせいじゃないですよ。ナイジェルさん」


そこへ先程まで姿を消していた社長が、突然ひょっこりと背後から現れた。


「あ、社長!ご無沙汰しています。連絡ありがとうございました」

「うん。待ってましたよ」


丁寧にお辞儀をする例の青年に笑顔の社長。

なんだ?社長さんの知り合いか?


「社長…この人は?」

ビッキーの頭を拭いているサラが全員の思っている事を訊いた。


「はい、実はこの子…」

「あ、俺から自己紹介させてください」


社長の言葉を遮る青年。

彼は思いもよらぬ名前を口にした。


「初めまして。この度ウィンディランへ新しく配属されました、リッキー・スターンです。よろしくお願いします」


ぺこりと丁寧にお辞儀をした「リッキー」と名乗った青年。


「リ…リッキー・スターン!?あの有名な!?」


全員の声が同時に揃う。

それもそのはず、当時のリッキー・スターンと言えば「バイク界に現れた天才ルーキー」として、業界では誰もが知る期待の新星。

その実力とルックスから男女問わず絶大な支持を受け、どこの企業も欲しがっていたスーパールーキーだったのだ。


「なんでそんな君がここに!?」

「皆さん、僕に感謝してください。他企業との激しい争奪戦の中で、僕が奇跡的に勝ち取った原石なんですから!」

鼻をフンと鳴らして自慢気に話す社長。


「じゃぁ、もうひとり目をつけてるって…この子の事だったのね」

「そうですよ」

「これから皆さんと一緒に生活をさせて頂きますので、どうぞよろしくお願いしますね!」


爽やかに笑ったリッキー。

そんな彼を、ビッキーはタオルにくるんだ顔でじっと見つめた。


この人が…これからここに住む?

雨の中。ロマンチックな出会い。

微笑みかける優しい瞳。

紳士的なエスコート。

そして何より…


イケメンッッ!!!!!!


ギュッ!!


「えっ…?」


突然サラの手を強く握ったビッキー。


「サラッ!これからも頑張って、一緒にバイク乗って行こうね☆★」

「…え?…えぇ…そ…そうね。頑張っていきましょう(苦笑)」


こうして社長のイケメン導入作戦は大成功。

ふたりの新しい仲間が同時に加わり、今の6人の個性豊かなチームが完成した。


めでたしめでた…



「めでたくねぇぇッ!!!」

ジムは屋根付きの小さなバス停でひとり叫んだ。


「なんで俺だけ放置!?俺、リーダーだって何回言えばわかるんだよ!
ビッキーいくら捜しても見つからないし、雨はやまない所か嵐になってきてるし、濡れるし寒いし寂しいし!!

あ、そうだ!携帯で助けを…ゲッ!俺の携帯防水じゃなかった!

誰かぁぁぁ!助けてくれぇぇッ!!」


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