14



何よ…

何よ、何よ、何よ!


ビッキーはバイクを乗り捨て、ひとり黙って人通りのない河原を歩いていた。

天候は最悪。

強い雨粒が彼女の体を攻撃し、雷の光と音が恐怖心を誘う。


私だって…もう皆の仲間になっても良いかなって…

思い始めたばっかりなのに。

あぁやってお節介して同情して…

私の事、可哀想な子だって思ってるんでしょ!


でも一番ムカつくのは

それを素直に受け入れられない自分自身。


仲間に入るタイミングがわからない。


どうして私って

思った事を上手く口に出来ないんだろう。


悔しくてもどかしくて歯を食いしばるビッキー。


もう…ひとりは嫌なはずのに…


なんで…どうして…


「………ッ!」








あれ、冷たくない…?

自分の体に打ちつけていた雨粒が、突然ピタリと止まった。

雨が…あがった?

いや、目の前はまだ酷い雨が降り続けている。

じゃぁ…どうして?



「風邪引きますよ」

「えっ?」


背後にいた、見た事のない若い男性。

振り返ったと同時に、綺麗な緑色の瞳が真っ先に目に映る。

自分はその人のさしている傘の中に入っていて、雨に打たれずに済んでいたのだ。


「ビッキー・スティールさん…ですよね?」

「ッ…!」


訊いてきた彼に数秒間返事も出来ずに固まる。

顔も全然知らないのに…


「どうして私の名前?」

「詳しい話は後から。早くお家に戻りましょう。あそこに車があるので乗ってください」


誘拐?ナンパ?

いやでも、そんな感じの人には見えない。

周りはこんなに豪雨なのに、彼の笑顔は淡い光のように優しくて。

何より私の名前を知ってる?

とても悪い事をするような人には見えなかった。


(それに…凄く格好良いし。彼になら誘拐されても良いかな)

ビッキーは男性に言われるまま、停まっている車に乗り込んだ。


びしょびしょのビッキーが座った助手席シートは案の定、すぐに水浸しになってしまった。


「ごめんなさい!濡らしちゃって…」

「構いませんよ。それより寒いでしょう。はい、これ小さいですがハンドタオルです。すぐに暖房も入れますから」

「………///」


(横顔綺麗だな。王子様みたい。それに凄く優しい…)

慣れた手つきでエンジンをかけ始める彼の横顔を見て、ビッキーはポーッと頬を赤く染めた。

彼のつけてくれた暖房のおかげで徐々に体も温まってくる。

運転も凄く丁寧。

たまにこちらをチラッと見て気にかけてくれ、優しく声をかけてくれる。

名前も知らない男性に見惚れていると、あっという間に見慣れた光景が窓に映った。

私が飛び出したウィンディランの事務所だ。


「え…なんで…」


私、道説明してないよね?

どうして私の来た場所がここだってわかったの?

「何故でしょうね」なんて当の彼は知らん顔して笑っている。

屋根のある駐車場に入ると、窓を強く打ちつけていた雨はなくなりワイパーが止まる。

スムーズに車を止め、彼はビッキーのシートベルトを外してあげた。


「あ…ありがとう////」

「いえ。立てそうですか?」

「……ッ////」


顔を真っ赤にしてブンブンと首を縦に振る彼女。

その必要以上に緊張している表情を見ると、彼も思わず笑ってしまった。


「ハハッ。じゃ、急ぎましょう。皆さん待ってますよ」

「え!?中まで来てくれるの?」

「ダメですか?」

「ダ、ダメじゃないけど…そんなに迷惑かけるわけには!」



そこで彼はまたニコリと笑い、謎の言葉を口にした。


「いいんです、俺も挨拶がしたいので。行きましょう」

「えっ…ちょっと!」



挨拶?

何がどういう事!?

この人、本当に一体誰なの!?

頭の中が混乱する中、ビッキーは濡れた姿のまま慌てて彼の背中を追いかけ始めた。


- 199 -

*PREV  NEXT#


ページ: