……………


「何よ?こんな所に呼び出して」


ボビーから廊下に呼び出されて、ビッキーはわかりやすく不機嫌な顔。

相変わらず感情が顔に出やすい性格だ。

そんな彼女に空気も読まず怯えもせず、ボビーは白い歯を見せてキラリと笑った。


「まぁ、大した話じゃねーよ」

「キモ」

無駄な美声が冷たく返されるも、とりあえず彼女を近くのベンチに座らせる。

彼はそのすぐ隣りに腰を下ろした。






「突然お手本を見せてあげると張り切っていましたが、ボビー大丈夫ですかね?」

ナイジェル・ジム・リッキーはふたりの様子を物陰から観察している。


「もし仮にあの小娘がボビーの告白を受け入れたら、どうするつもりなんだ?」

「それは…ないない。多分ない」

色々と想像をしたのか、ブツブツと独り言を漏らす。

若干焦り気味で頼りないジムを、横の男達は冷えた目で見ていた。




「いいか。耳かっぽじってよく聞け」


ついにボビーの秘技「とっておきの女の口説き方」が始まったようだ。


作戦@【いつもより目と歯を輝かせて、男前っぽく見せる】


「朝、君は太陽より明るく僕を照らし、夜、君は月よりも優しく僕に微笑む。
どんな時も優しく見守ってくれる君に…僕のハートはその甘い笑顔にノックアウトだ。
君の事を考えるだけで、僕は夜もまともに眠れないんだベイベ」


作戦A【とりあえず甘い言葉を片っ端から並べる】


「ウッグ」

何故かわからないが、陰で見ていた3人に突然吐き気が襲い咄嗟的に口を抑えた。

これはボビーヤバいんじゃないのか?

絶対ビッキーの逆鱗に触れ…

ん?


彼女の顔は予想していたより異なった表情をしていた。

頬を淡いピンク色に染めて、じっとボビーを見つめている?



「ね…ねぇ…」

彼女の異変にいち早く気づいたリッキー。

よく見ると、いつの間にかボビーは彼女の手をさり気なく握っていた。


嘘だろ…

まさか、こんな事って…


「オラ、そこまでだ!ボビー、お前ビッキーから離れろ、バカヤロー!!」

「わっ!ジム、落ち着いて!」

思わず立ち上がってしまったジムを、慌ててリッキーが物陰に引き戻そうとすると…


「……………。」

「…あれ?」


怒りのあまり周りが見えなくなっていたジムだが、きちんと視界を確認してみるとある事に気がつく。

先程までビッキーの隣に座って光輝いていたボビーの姿が見当たらないのだ。



「…ビッ……きぃ……ちゃ…」

ボビーは3人の真下で煙を出しながら倒れていた。


作戦B【ただしイケメンに限る】



「うわ!ボ、ボビー!大丈夫か!?」

心配の台詞が口からは出るものの、足は後ろに下がってしまったジムにナイジェル。

その瞬間、彼女はリッキーの存在に気づき、黄色い声を上げた。


「あ、リッキーじゃなーい!何してるの?もしかして私に会いに来てくれたの!?嬉しい!」

「いや…その、そうじゃなくて」


リッキーばかりに気を取られていた彼女は、ようやく残りふたりの存在にも気づいた。


「あ。ナイジェルとアドニスじゃない。何してんの?覗き?」

「ジムだ!なんだその反応の差は」


ひとり喚いているジムを無視し、ナイジェルが彼女に問いかける。


「お前何なの?さっきまでちゃっかりボビー君に目がハートマークになって釘付けだったじゃん」

「え?何?今の本気だと思ってたの?」

「へ?」

「あんなの芝居よ、シ・バ・イ!何?あのキモい顔と台詞!超ウケる!」


要するに、彼は小悪魔娘の餌食になってしまったらしい。

悪そうに笑うビッキーを尻目に、リッキーとナイジェルは哀れむ目でボビーの残骸を見つめた。


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