……………

ビッキーに自分の想いを伝えたかっただけなのに、話は進めば進む程おかしな方向へ。

そこで改まったようにジムの方を見たのは、金髪をかき上げるサラだ。

「で何?ジム君はビッキーちゃんとあんな事やこんな事までやりたくてシコシコと作戦を練ってるわけ?」

「嫌な表現をするな!つか、何でお前知ってんだよ!」

「それじゃ、今から私をあの子だと思って口説いてみなさいよ?」

「やだよ。んな恥ずかしい…」


「………。」

「………。」


「女も口説けないようじゃ、恋愛をする資格がないわ。ナイジェル?リッキー?」

(バッと懐から花束を取り出す)

「たったこれだけよ。簡単じゃない」

「どっから取り出した、それ」

「そこで一言囁くの。『俺と結婚してくれ』って。
え?付き合ってもないのにいきなりそんな事言えない?貴方達は所詮は男と女。お付き合いがどうとか、順番がどうとか…細かい事なんて

押し倒しちゃえば関係ないのよ」

「なんかお前が某withなんとかに見えてきた」






「……ッ…」

そこで何かを感じたR(リッキー)が、黙って一点を見つめ始める。

廊下の向こう側だ。


「リッキー?どうしたの?」

「いえ。ちょっと良い事を思いついたので」


普段の柔らかスマイルではなく、何やら怪しい黒い影を臭わせる笑み。

こういう時の彼は、高い確率でよからぬ事を考えている。

話しかけてきたサラに笑いかけ、彼はジムに目を向けた。


「ジム、これが最終手段です」

「何だよ?お前のアイデアはもうほとんどアテにならない」


半分諦めモードの彼だが、リッキーは動じる事なく話を続ける。


「まぁ、そう言わないでください。
俺とゲームをしましょう。今から俺の言う言葉と同じ言葉を繰り返し言ってくださいね」

「は?」

何?いきなりと、自然と口が半開きになってしまうが

彼は問答無用でゲームを始める。


「えっと、アメリカンショートヘア」

「ア…アメリカンショートヘア」

「スコティッシュフォールド」

「スコティッシュフォールド…」


突然猫の種類を次々と口に出すリッキー。

一体何をしようとしているのか?

全く予想がつかない。

しかし今は言われるままに、その言葉を反射的に繰り返してしまう。



「ロシアンブルー」

「ロシアンブルー…」

「ノルウェージャンフォレストキャット」

「ノ……ルウェージャン…ホームレス…キャット?」

「ビッキーダイスキ」

「ビッキーダイスキ……ん?」







「へぇ、そーなんだ?」



「…え?」


毎日のように聞く女性の声。

ふと振り返ると、真後ろになんとビッキー本人が立っていたのだ。

全く気配を感じなかったせいか、ジムは首を捻ったまま一時停止し


「うわああっ!?///なな…なんでいるんだ、お前!」


顔を真っ赤にして退った。

まさか…いや多分…

今の言葉絶対に聞かれた!


「何よその態度!人を化け物みたいに!」

「だ、だってさ!」


グッと顔を近づけるビッキーに心臓の鼓動が早くなる。

彼の頬はますます赤くなる一方だ。






(上手いわよ、リッキー!)

ナイスアシストをした彼の背中をサラが叩く。

ここまで来れば話は早い。








「で?私の事が何?」

「あ?ち、違う!今のはリッキーが無理やり言わせた事であって俺は……なぁ?リッ…」


気づいた時にはリッキーどころか、ナイジェルもサラも…周りには誰もいない。

人気はなく、廊下は突き当たりまでシーンと静まり返っていた。


「あ…あれ?」

「誰もいないじゃない!リッキーを悪者にしようとするなんて私が許さないわよ!」


クッソ、アイツら逃げやがった!

なんで普段馬鹿みたいに空気読めないくせに、こんな時に気遣い能力を開花させてんだ!







……………


一瞬の隙をついて、廊下側の壁に隠れた3人はこっそりジムとビッキーの様子を観察している。

「なんかビッキー怒ってますよ?」

「また怒らせたわね。全く女心ってのをわかってないんだから」

「俺達でなんとかしてあげられませんかね?」

「ほっとけ。こーいう男女のいざこざは、首を突っ込むとロクな事にならねぇからな」

「貴方、さっきまで首どころか肩まで食い入る程突っ込んでましたけど」


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