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……………



「…………。」



今…何が起こった?

ビッキーが立ち上がって…

そして…


一瞬だけど…ほんの一瞬だけだったけど…


キ…キ…ッ…



「…えっ…?///」


ゴンッ!!


「痛ッ!」


咄嗟に腕で口を抑えて仰け反ろうとしたが、後頭部を後ろのガラスに強く打ちつけてしまった。

大きな鈍い音に窓ガラスが割れていないか心配。

だが、今はそんな場合じゃない。


頭が混乱して、痛さとか全く感覚がわからない。



「あの…ビッキー、さん……今のは…何ですか?」


変に敬語になってしまい、まだ前に立ったままの彼女を見上げる。

俺と同じく顔が真っ赤だ。

ついでに歯も食いしばっていて、今にも殴りかかってきそう。


「私はっ…!
私は超イケメンで紳士的で一途で背が高くてイケメンで、頭が良くて爽やかでお金持ちでイケメンで良い匂いがするようなっ…!
そんなイケメンの人が好きなのっ!!」

「…はっ!?なんでイケメン4回言った!?」

「なのにさぁ…なのにさぁ!顔も標準、性格も地味、お金持ちでも何でもない…アンタは…どれっにも当てはまってないのに!」

「あんまり正直に言わないで。さすがに傷つく…」


狭い室内なのに彼女の声は跳ね返ってくる程大きい。

彼らが乗っているゴンドラも徐々に頂上に近づいてきた。

暖かい室内だが、外は白い雪がちらついている。


「でもね…!なんでか全然わかんないけどっ…」

「っ…」


「アンタに彼女が出来たと勘違いしただけで体中に鳥肌が立つくらい怖かったし、プールの時に助けてくれた時も…嬉しくて嬉しくて仕方なかったの!」


「ビッキー…」


「どんどん好きになっちゃうの!アンタの事!///

ぜんっぜん…!

本当にぜんっぜんタイプじゃないのに!

大好きなの!!

もうっ…本当に大好きで大好きでどうしようもないの!!」


ビッキーのあまりの気迫にジムはぽかんとしている。

言った彼女は息もゼェゼェ。多分室内の温度は一度は確実に上がってる。

このままじゃゴンドラがぶっ壊れて、ふたりとも地面へ真っ逆様に落ちてしまいそうな気がした。



「それはさ…今の告白OKって事で…受け取っていいのか?」

「……っ////」


唇を微妙に動かすも、耳まで真っ赤で何も言葉を発する事が出来ない。




「プッ」


「…え?」


「あっははははは!!」


その瞬間突然腹を抱えて大声で笑い出したのは、座っているジムの方だった。


「な…何がおかしいのよ!?///」

「だってお前…そんな顔真っ赤でふるふる震えてさ!小型犬みたいだ(笑)」

「何よ!そこまで笑うなんて酷い!」

「あぁ、ごめんごめん!怒るなって!」

「怒るに決まって…」


ガバッ!


言葉の途中で体が強引に前に引き寄せられた。



「………ッ…」


頭の中が真っ白になって

全身の力が抜けて、床に膝をつく。

上半身は座っている彼に抱き寄せられていた。



「めちゃくちゃ嬉しい…俺。嬉しすぎて頭おかしくなりそう」


ギュッと後頭部を手で抑えて、もっと近くにと強く抱き締める。

ジムの呼吸の音さえもはっきり聞こえた。



「本当…に…?」

「当たり前だろ!俺はずっと…お前とこうなりたいって思ってたんだから」

「………ッ…」



最初は生意気で反抗的な、タチの悪い小娘だった。

無計画で先輩の言う事を何も聞き入れない、手のつけられない問題児。

でも周りからお人好しだと言われる俺は、そんな問題児から全然目が離せなくて

いつも怒ったり世話を焼いているうちに

コイツと一緒にいる時間が、一番居心地が良い時間になっていた。


温かい。

お前の体温が温かくて、緊張してるはずなのに何故かとても落ち着く。



「本当に…俺でいいんだな?」

「…う…うん…///」


彼女も緊張しているのか、声はまだ震えている。



「ビッキー、ひとつお願いがあるんだけど」

「何?」

「今度は俺からしたい」

「……ッ…///」


瞳孔が開き、口も小さく開いたまま。




「ダメか?」

「え…えっと…///」


顔を引くとゆっくりお互いの視線が交わった。

うるうるした目で見てる所とか、やっぱり可愛い。


「……い、いよ…」

「大丈夫だ。何も怖い事なんてないよ。

目をゆっくり閉じろ」


「…………。」



怯える子犬のようだったが、いつもと同じ顔で笑ったジムに安心感が芽生えた。

彼女が目を閉じた事を確認して、頬を両手で抑える。

柔らかい肌。



近づけて、そっと唇を重ねた。

震える唇を全部覆ってあげるように。


目を閉じている数秒間、遊園地の賑やかな音楽が何も聞こえなくなった。


自分達だけの世界。



「…………。」



ゆっくりと終わるキス。

お互い自然と見つめ合った。






「…プッ」







「………///!お前今笑っただろ!?なんだ、この重要な場面で!」

「ごめっ(笑)なんか恥ずかしくなっちゃって…!つい気が抜けて…」

「ったく…ムードの欠片もないな」

「顔も性格もムードの欠片もないジミーに言われたくないですぅ」





ケラケラと笑い、

お互いそのままギュッと体を抱き締め合う。


「お前…本当にムカつくわ」

「それはこっちの台詞!」




憎まれ口を叩きながらも、やっぱりふたりの顔には笑みがこぼれていて…



「ビッキー、大好きだよ」

「…バカッ///」




子どもみたいに抱き合っている彼らの後ろ。

遊園地のキラキラ光るライトと冷たい冬の粉雪が背景を彩っていた。


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