……………

「ジム?大丈夫ですか?」

「………うぐ……ぎゅ…」

「ダメですね。起きません」


ヒールで足を捻り地面に激突した花嫁ジムは、すぐに会場を出た廊下に連れ出された。

情けなく倒れている彼にリッキーが何度か声をかけて顔を叩いてみるが、全く反応がない。


「やっぱりどんな時もジム君は使えないキャラだね。どうするんだい?サラちゃん」

「そうね。まさかこんな早くダウンするとは思ってなかったし」


次の作戦を考えてみようと思ったが、それより先にナイジェルがビッキーの方を指差した。


「こっからはコイツがすればいいじゃねーか。別にもう反対する奴いねんだし」

「本当に!?やるやる!」

指名を受け、当の本人はウエディングドレスが着られるとあり大喜びだ。

確かに当初の作戦にかなった方法であったが、サラは深く何か考え込んでいる様子。


「んー…でもビッキーじゃ、さっきのジムの花嫁姿に比べてかなり小柄になって不自然だわ」

「えぇ!大丈夫だよ!私ヒール履くから!」

「それはこの人も履いてたでしょ?ざっと180センチは越えてたから、さすがに怪しいわよ。
計算をミスったわね。どうしようか」


ふと、吸い終わったタバコを灰皿に押し潰しているナイジェルと目が合った。


「…んだよ?」

「別に…」

「…………。お前今、すげー嫌な事考えてんだろ?言っとくけど俺はやんね…」















『ああああああッ!!狽竄゚ろ!離せっ!離せっつってんだろーが!』


「…………!」

裏から聞こえてきた突然の男の悲鳴に、料理に夢中だった子どもも、親戚同士で会話をしていた大人も

会場にいた全員が驚いて振り返った。




ガシャンッ!


「イッテ!…何しやがんだ、あの女……ッ」



ぽかんとしている参列者の前に現れたのは、お色直しを終えた花嫁。

正確には先程のジムが使っていた女物ウィッグを被り、身につけていたウエディングドレスを着せられたナイジェルだ。

問題の身長はあまり変わりないが、やはり若干雰囲気は違う。

まぁ…すぐにばれる程の違いではない。


「ウッ…」


ようやくナイジェルは参列者の注目の的になっている事に気がついた。


やっべ、どうしよう…




「…や…やぁ……待たせたわね…」

彼はとりあえず、わざとらしいながらも女っぽくジョンに手を振った。

人々も不審がっている者はいるが、異議を申し立てる者はいない。


よし、いいぞ。

後ろから俺を突き飛ばした女の笑い声が聞こえるが…(怒)

こうなったら無理やりにでも式を進めなきゃなんねーな!

頼むぞ、ジョンさん…!



花嫁はスカートをはしたなく捲し上げ 、慌てて彼の前に戻ってくるが…



「ま…待った?ジョンさん?」

「…………。」

「遅くなって…ごめんね?」

「…………。」

「ちょっと…お化粧に…時間……かかっちゃった……」

「…………。」

「…………。」

「…………。」




コイツ、ジムから俺に変わった途端、すっげー不機嫌になってんぞ!!?

なに、その嫌そーな顔!



ジョンの表情は今までにない程テンションが落ち切っている。

どうやら女性役がジミ子からジェル美に変わった事が相当不満だったらしい。




「ソレデワ…フタリガソロッタトコロデ、シキリナオシマショウ」

再び神父が聖書を開いた。


「シンプ、エミリー。…アナタワ…コノダンセイヲ…ショウガイノオットトシテ…アイスルコトヲ…チカイマスカ?」


「ちっ…誓います…」




「シンロウ…ジョン。…アナタワ…コノジョセイヲ…ショウガイノツマトシテ…アイスルコトヲ…チカイマスカ?」




「……………。



あとで考えます」




後回しにしやがったぁぁぁぁ!!

愛を誓うかあとで考えますってどーいう事だよ!?

考えるくらいなら、まだ結婚すんなや!!



ジョン「次、行きましょう」


なんか勝手に席に座りやがった!

え!?誓いのキスは!?

いや、やりたくねーけど!

やりたくねーけど、なんか悔しいじゃん!


なんだかんだ頭の中で突っ込んでいる間に神父も壇上を降り、スタスタとどこかへ行ってしまった。


キスの場に取り残されたのは、ジェル美ただひとり。




ゴォォォォォッ!!!!!



…なんなんだ、これは。



「すんません…。便所…じゃない、お便所…行ってきます」


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