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……………
あれから数日が経過した。
あの件があった翌日、スポーツ新聞にナイジェルが私を抱き締める写真が大きく掲載され、
『赤黄紫の三角関係か?』
などとある事ない事やたら書かれ、マスコミの取材やファンへの対応に目まぐるしく追われた。
「別に隠す事はない」とのナイジェルの言い分、社長も「いいんじゃないの?」との軽い判断により、やましい関係は一切ないが一通りは事実だとマスコミには伝えられた。
しかしその話題もあってか、バイクスタンドへの来客人数は事故以前よりも伸びたらしい。
現在は騒ぎも落ち着いてきており、普段と変わらない生活へ戻りつつあった。
……………
「ナイジェル…あれは何?」
「あ?」
休日の中年サラリーマンのようにソファーでだらしなく寝ている男に黒い影が落ちた。
「あれってなんだ?」
「あれよ…」
サラが指差した方向は、メインルームの中央に設置してある四角型のテーブル。
そこにはまたもや惨劇が広がっていた。
食べた後のポップコーンが散乱。
カップが散乱。
ジュースはこぼれたまま放置、大画面テレビはつけっぱなし。
ポップコーンの欠片に蟻の行列。
脱いだ靴下がそのまま散乱。
脱いだ靴下には…蟻はやはり見向きもしない。
「あぁ…あれか?ジムの野郎が」
「…はぁ」
首を掴まれると思って身構えたナイジェルだったが、サラの瞬殺ハンドスクリュー首絞め攻撃は来ず、代わりに大きなため息が返ってきた。
「ジムが全部やったのね?」
「…俺がやりました」
「正直でよろしい」
彼女は呆れるように笑って、リモコンでテレビの電源を消した。
「この間までのナイジェルだったら考えられなかったのにね」
「またその話かよ…。俺はこの俺ひとりしかいねんだ。前も後も存在するか」
「フフッ。そうね」
やっぱりこれが本物のナイジェル。
その猫背も、タバコの匂いも、眉間のシワも
私にとっては、全てがとても愛しいもの。
こんな事…
本人にはやっぱり口が裂けても言えないんだけどね。
「サラ」
「何よ?」
「もう少しこっち側来い。そしたらスカートの中が見え…」
「…………。」
ガシッ!!!!!
fin
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