……………


「お前らに…相談したい事がある…」


普段よりも随分と重い口調に真剣な表情のジム。

この姿にただ事ではないと悟ったのか、ナイジェルの眉間にシワが寄りリッキーはごくりと息を飲んだ。


「なんかあったのか?」


こんなコソコソと内密に呼び出して相談事をするなんて今までない出来事だった。

しかも女性を除いた俺達男のみ。

もしや…業務的事情か?

このバイクスタンドが経営難に追い込まれているとか。

客足が減少してるとか。

まさか社長が倒れたとか…!?

ふたりの脳内にあらゆる不幸の予感がよぎり、不安が募る。

ジムは目線を下に向けたまま、床のフローリングに手の平をつけた。



「実は…」


「「………。」」














「俺の…誕生日プレゼントが



決まらないんだ…」








「「…………は…?」」








瞳が白眼に変わったナイジェルとリッキー。




「昨日…ビッキーと会ってたんだけど。
俺、来週誕生日じゃないか?それで何か欲しい物がないかって言われて…でも何を要求すればいいか全然わからないんだ」


ナイジェル「…………。」


「俺、別に欲しい物なんてないし。今のままで十分幸せだから。
それにあんまり変な物を欲しがると、かえって嫌われてしまうんじゃないかと思って…」


リッキー「…………。」


「だから…」










ナイジェル「帰るぞ」




「え、ちょっと待ってぇ!せめて最後まで言わせろ!」


帰ろうと立ち上がるナイジェルとリッキーに、ジムは慌てて彼らの足首を掴んだ。


「んだよ。俺達はそんな贅沢な悩みを聞いてられる程暇じゃねんだ」

「そんな事言わないで、ナイジェル君!来週までに決めないとカリブの海に消えてもらうって言われてるんだ!」

リッキー「貴方達、本当に付き合ってるんですか?」


必死な交渉の末、なんとかふたりを引き止めてテーブルの椅子に座らせる事に成功。

放たれているなんともだるそうなオーラを無視し、強制的に先程の話題に引き戻した。


「で、何がいいと思う?」

「んなもん自分で考えろや」

「考えてもわからないからお前達を呼んだんだろ?」

「なんでボビーを呼んでないんですか?」

「アイツの意見がアテにならない事は100年前から知ってる」

ナイジェル「じゃぁ、もうボビーでいいんじゃね?欲しい物」

「適当に決めるな!意味わからないだろ、恋人に誕プレとして別の男(しかもボビー)を要求するなんて!」

リッキー「俺だったら子猫の抱き枕ストラップが欲しいですね。それかきゅるるんにゃんこマカロンケーキかなぁ…」

「お前はそれでいいかもしれんが、アラサーのオッサンが19歳の女の子に『きゅるるんにゃんこマカロンケーキが欲しい』なんて言ったら、本人どころか読者全員ドン引きだろ」

ナイジェル「誕生日だからもう三十路だな」

「この世界はサザエさん方式で実際歳は取らない。俺は永遠の28歳だ」

リッキー「俺は永遠の17歳みたいな言い方をしても、アラサーに変わりないですよ」


全く…女子みたいな相談しやがって。

そう言いたげなナイジェルは「面倒くせーな」と小言を漏らしながら椅子から立ち上がり、ジムのポケットからはみ出ている物に手を伸ばした。


「何するん…ッ…?」


無言で彼が取り上げたのは、ジムの新しく買い替えた青色の携帯電話。

何をするかと思えば、中身を開く事なくノータッチでそれをリッキーに渡した。


「おい…俺の携帯…」

「いくら頭を悩ませたって、女心のわからない俺達にそんな難題わかるわけねーだろ。
それより質より量だ。適当に知り合いの男達から意見を貰って、その中から良さそうな案を見繕った方が手間が省ける」

「ナイジェルにしては冴えてるな」

「こんな事考えなくてもわかんだろーが。リッキー、適当にメールを一斉送信しろ。後は返事が来るのを待つだけだ」

「わかりました。えっと…」


スマホ世代のリッキーが他人の携帯だが迷う事なく操作を行い、

そして言われた通り、知り合いの男性のみにメールの一斉送信を行…


ブーッ!ブーッ!


ジム「おっ早!もう返信が来たのか!?今送ったばかりだろ?優秀だな!」

ナイジェル「誰だ、こんな早くに返事する暇人は?」

リッキー「…嫌な予感がします」





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下記メールアドレスは存在しない為、送信出来ませんでした。


To : bareru●●●@ojweb.ne.jp
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ジム「おい、バレルじゃねーか!アイツ勝手にアド変してやがるぞ!」

リッキー「新しいアドレスを送るのが面倒だったんでしょう」

ナイジェル「ドンマイ」


バレルからのエラーメールに心折れそうになるも、数分後待っていたら次々に返信が送られてきた。

とりあえず内容を確認してみる。


「おっ!雪之原君から返事が来たぞ!」

『欲しい物?ウサギのエサ代かなぁ(^O^)』

「次は日晴君からです!」

『壊した壁の修理代が欲しいっす』

「次はぁ…あ、ロビンだな」

『新しく買う車の保証人になって欲しい★』

「次は…ジョンさんです」

『投資する株の資金』

「…雨宮君」

『サラさんからドアに穴を開け、テーブルを折り、皿を割り、祠を破壊すると、交際が始まったと聞きました。
物を破壊し続けると男女は結ばれるのですか?』

「七音君…」

『お金払ってエッチな事でもしてもらえば??男ならやっぱりこれっしょ!』




ふたり「…さ……さぁ、選んで…」


「選べるかぁッ!!!」


自分の部屋なのにジムは強烈なパンチを壁に叩きつけ、そこに大きな穴があき煙が立つ。


「何コイツら!?ほとんど金しか請求してない銭ゲバばっかなんだけど!雨宮君に至っては何!?質問に答えろや!」


リッキー「あ。雨宮君からもう一通メールが来ました!」

『目が良くなりたいでござる!レーシックしてぇ!七音!勝手に打つな!いいじゃーん!』


ジム「だからなんでお前らはいつも会話をここに入力するんだっ…!しかも視力矯正って結局金だろーが!」


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