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……………
〜ファーストフード店編〜
「ここはファーストフード店。朝食やちょっと小腹が空いた時に立ち寄る人が多い店よ」
テレビで見た事のある、赤い外観の店、黄色の「M」のマーク。
「ここは…僕も知ってる。McDonald'sだろ?」
「なんでそこだけ良い発音で言うの?『マクドナルド』ね。一々英語で言わなくてもいいから」
「今はこんな玩具も付いてくるのか…。画期的だな…。ヒルカンパニーの経営にも何か生かせないだろうか…」
妹に指摘されるが、それを無視して兄は店の中を物珍しそうにキョロキョロと見渡す。
「ふむ。美味しそうな匂いがするな…ここならイケる気がする」
「そういうの匂いで判断出来るの?」
「すいません、注文よろしいですか?」
「そのピエロみたいな人に注文しても意味ないわよ」
やはりこの人は一般市民の生活を何も知らない。
まぁ、今まで執事が当たり前のようにいた家で育ったお坊ちゃまだから、それも仕方ないか。
ドナルドさんの等身大フィギュアに話しかけてしまった間抜けな兄の背中を見ながらつくづく思い、サラは肩を叩いた。
「じゃ。私が後ろで見ててあげるから、何か買ってみなさいよ」
「えっ…」
「レジはそっちじゃなくてこっちよ。美味しそうな匂いだから出来そうでしょ?やってみなさい」
「えっ…ちょ…」
妹に背中を押され、兄は無理やり店員の前に立たされた。
「いらっしゃいませ!ご注文はいかがなさいますか?」
これが世に言う「スマイル0円」
爽やかな笑顔で迎えてくれた店員のお姉さんに対し、ジョンは最初の自信はどこへ行ったのか、どうすればいいのかわからずにオロオロし始めた。
「…えぇ…と…何があるんですか…?」
「こちらにメニューがございますよ!」
…わからない。
「メニューがございますよ!」と言われても、緊張してしまってメニューの見方がわからない。
「え…あっと…とりあえず…セット…」
「どちらのセットに致しますか?」
「どちらの…?……えっと…ドナルド」
サラ「そんなものあるわけないでしょ」
「ドナルドダック」
店員「ダック?」
「あ!そうだ、北京ダック!」
サラ「マクドナルドで北京ダックのセットを頼む人初めて見た。店員さん、ダブルチーズバーガーセットをふたつお願いします」
見かねたサラが横から割り込んできて、僕の代わりに注文してくれた。
さすが、全ての生活を投げ出して家を勝手に出て行った放浪娘だ。
世間の事情をよく知っている。
ジョンは無駄に感心していた。
「ダブルチーズバーガーセットおふたつですね。1,240円になります」
妹は僕のポケットから勝手に財布をすり、我が物顔で代金を支払う。
僕のお金で支払うなら、僕の好きなものを食べさせてくれればいいのに。
店員「店内でお召し上がりですか?テイクアウトしますか?」
「……選べるのか…?」
「はい。店内でお召し上がりですと、2階の食事部屋でそのままハンバーガーを食べられます。
テイクアウトですと、ご自宅まで持ち帰りお召し上がり頂けます」
ジョンが注文に慣れていないと察し、丁寧に説明してくれる店員のお姉さん。
その言葉を聞いて彼は考えているのか、普段通りまるで時が止まったかのように動かなくなる。
…ここで食べる方がいいのか?
それなら温かいまま、出来立ての状態でハンバーガーを食す事が出来る。
今ここで持って帰っても、冷めてしまうし…まず家に入れてもらえる保証もない。
いい事なんてひとつもないな。
それに昨日から何も食べていないし、いい加減腹が減っ…
「……………………。」
店員「…お客様?」
サラ「すいません、考え事すると何も聞こえなくなる体質なんです。もう少し待ってもらっていいですか?」
ふと目を横にやると、僕と同じくらいの身長の金髪の男が、レジの前に立って若い女性店員に注文をしていた。
どこかで見た事があるような…
いや、あんなに妙に体をくねらせている怪しい人間…僕は知らない。
「店内でお召し上がりでしょうか?」
謎の金髪男「うーん☆君みたいな可愛い子猫ちゃんを待ち望んでいたよ☆もちろんお持ち帰りさ☆君を☆」
隣のババァ「きゃぁ!ロビンちゃんイケメーン!」
ジョン「…………。」
店員「お決まりになられ……お客様…?あの…なんですか?そんなにこちらを見て…」
「テイクアウトで」
サラ「どこ見てんの?マジで」
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