……………


新しい靴。

赤いシャツに細身のグレーパンツ。

黒のジャケットと淡いピンクのマフラー。

手に持っているスマートフォンから伸びたイヤホンが耳に。

歩く姿はまさに洒落た街にいそうな格好良い男の子。


「行ってきまーす」と爽やかに笑い、玄関から外へ出て行ったのが約5分前の話だ。

残りのメンバーはリッキーが外出した後、その後の足取りが気になってこっそり電柱の陰から尾行していた。



ジム「オイ…付いていったら、せっかく指差して買い物に行かせた意味がなくなるんじゃないか?」

ビッキー「ジョーダンは途中でリッキーが他の悪い女に捕まらないか心配じゃないの!?」

サラ「ジムよ。文句を言うのならアンタが行けばよかったじゃない」

ボビー「何を言ってるんだい、サラちゃん!ビッキーちゃんが悪い男に捕まったり、あんな事やそんな事やどんな事をされても心配じゃないのかい!?」

ナイジェル「…で?リッキー何しに行ったんだ?」


持っていたペロペロキャンディを咥えて鼻歌を歌いながら住宅地を歩いているリッキー。


ジム「つーかアレ…。どう見ても『今からダチとゲーセン行って、その後ナンパした女子達を引き連れてカラオケで盛り上がるぜ!』的な男にしか見えないんだけど。あれでデパートまでソース1本買いに行くんだぞ?」

ビッキー「なんでデパート?コンビニでいいじゃん」

ジム「バーロ!コンビニよりデパートの方が品数が多いだろ?どれを買おうとか迷い考え、答えを導き出す事によって、この腐った世の中で生きていく能力を身に付けていくんだよ」

ビッキー「そんなのより絶対スマホアプリとかの方が能力付くと思う!」


横断歩道を渡り橋を渡り、ターゲットは大きな川岸の道に出た。

いくつかのコンビニをスルーした所を見ると、本当にジムに指示された大型デパートまで向かうつもりらしい。

彼に気づかれないように、こっそり電信柱などに隠れて後を追う5人の怪しい集団。


ジム「ここは飼い犬の散歩をしてる人とか、スポーツ部の学生がジョギングに使ってたりする道だよな」

サラ「のどかな所ね。いい天気だしちょっと昼寝していかない?」

ナイジェル「いーな、それ」

ジム「お前ら尾行する気あるのか!?やる気のない奴は家帰って目玉焼きでも食ってろ!」

ボビー「ん?待ちたまえ!…何か怪しげな音がするぞ?」

ビッキー「え?何?」


人間離れした特殊な耳を持つボビーが何かを察知した様子。

周りを見渡すが特に変わった音も聞こえないし、見えるのは大きな川に青い空。

橋の上を渡る電車くらい。


「何もないぞ?」

「本当にジム君はダメだな!耳が腐り果ててるんじゃないのかい!?」

「はぁ?お前の耳が…」







チリンチリン…





「あ?」



聞こえた。

今…確かに。

鈴のような高い音が…



「聞こえた」

「だから言っただろう!」

「でも…何の音………ん?」





後ろの道。

妙に土埃が舞い上がっている。

それに…なんだこの胸騒ぎ。



それは考えた数秒後…

答えがすぐにわかった。





チリンチリン!!

ゴゴゴゴゴッ…!!!!



後ろから大勢の自転車の大群が押し寄せて来ていたのだ!




ジム「うわ!なんだアレ!」

サラ「近所のサイクリング倶楽部じゃない!?近頃マナーの悪い集団がいるって聞いた事あるわ!」

ビッキー「えっ…ちょっと待って!」


サイクリング集団の進行方向の先を見ると…



「〜♪」


のんきに鼻歌を歌いスマホをいじるリッキーの姿が。

彼はイヤホンを付けているからか後ろの状況に気づいていない。

背後には少なくとも30台程の大型自転車に跨った集団が早いスピードで…


これはマズイ!


「リッキー!後ろ!」

「逃げろ!早く!」


リッキー「バターマヨネーズ醤油顔…。松崎しげるを100人集めた濃さの顔…」


ジム「そんなくだらねー事今検索しなくていいからイヤホン外せ、馬鹿!!」



遠くてこの声も彼に届かない。


どうする…?

一か八か飛び出すかっ…!?

いや、それだと俺達まで自転車族の暴走に巻き込まれ兼ねない。

しかし、このままだとリッキーは気づかず…



ピンポーン!


ナイジェル「…あ。ラインだ」







「逃げろォォォォッ!!!煤v


突然のジムの叫び声にナイジェルと隣にいたサラは驚いて耳を塞いだ。


「何のんきにライン送ってきてるんだ、あの馬鹿!
気づいてんのか!?だったら人に訊く前に早く逃げろ!」

ナイジェル「あ…返信来たぞ」







ジム「ナイジェル、お前なんて事送ってんだ、テメェ!!」




迫り来る猛スピードの自転車の大群。

周りの老人や若者達が続々と避難する中、リッキーだけが振り返ってその大群を強く睨みつけた。



「何考えてんだ!よせって!」


ジムの声も虚しく届かないまま、その大群はリッキーに迫り…




「貴方達!ここは皆の道路です!ちゃんとルールを守って…」




プチンッ!




ダァ――――――――ッ!!!






ボビー「あぁ…」



ゴマ粒のようにチンケな存在の彼は、あっという間にその大群に飲み込まれて姿が見えなくなってしまった。





ビッキー「リッキィィィィィイ!!!!!泣」


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