「オエッ!何食ってんだ、お前!」

「何って。見ればわかるでしょう」


久しぶりの休日。

時間はお昼の12時。

ジムが軽い気持ちでメインルームへ向かうと、リッキーがとんでもないものをご飯にかけて食べていた。

皿に入った卵の殻と、先日彼が間違って買ってきた濃口醤油のボトルがテーブルに。

そしてすぐ目に入った黄色の謎の料理。


「卵かけごはんですよ」

「その卵、生じゃないのか!?腹くだすぞ!」

「相変わらずジムは時代の波に乗り遅れてますね。
今、ナウなヤングにバカウケなのは、この『卵かけごはん』なんですよ」

「そ…そうなのか。今のヤングはよくわからないな」


リッキーは向かい側のソファーに座ったジムの顔を見ながら、どや顔で黄色くなったご飯をお箸でグリグリとかき回す。

オエッ…見てるだけでも気持ち悪い。

と、思わず口を抑えた。


あ、キッチンから誰か来…


ナイジェル「おお。ジムじゃねーか。リッキー、醤油が足りねんだけど」


なんでお前も食ってんだ。



「あ、ナイジェル。ちょっと聞いてください。この人ったら卵かけごはんを見て、オエッとか言うんですよ」

「マジでか。知らねーのか、ジム。今、ナウなヤングにバカウケなのは、この『卵かけごはん』なんだぞ」

「お前はどう見てもヤングじゃないだろ」



クチャクチャクチャクチャ…


なにこの光景。

なんで俺の目の前で、男ふたりが生卵かけた飯をどや顔で食ってるの?

なんでそんな自慢気な顔なの?

見てるだけで腹痛くなりそうなんだけど。






ガチャガチャ!

ピンポンピンポンピンポーン!!!

ガチャガチャ!!!




「オイ、騒がしいぞ。ジム」

「いや、俺じゃないし」

「お前の連れだろーが。なんとかしろ」



ピンポンピンポンピンポーン!!!

ガンガンガンガン!!!Σ


玄関の向こうから、壊しそうな程激しく扉を叩く音が聞こえてきた。

今、この建物内にいないメンバーはひとりだけだ。

「ジムの連れ」というキーワードから、犯人はアイツだという事が皆さんにおわかり頂けただろうか。

リッキーは扉の方向を見て、箸をお椀の上に重ねた。


「俺が行ってきます。おふたりはゆっくり食べててください」

ジム「食わないよ、俺は」


フラッと立ち上がり、普段通りの足取りで玄関へ向かう。


ガシャン!ガシャン!


「はぁい、今開け…」



ガチャ…


「リッキィィィイイイ!
リッキーリッキーリッキーリッキーリッキーリッキーリッキーいやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

「うわッ!」


出張から戻ってくるなり、大砲のごとく胸の中に飛び込んできたのは「ジム君の連れ」のビッキーちゃん。

熊をも気絶させる爆声を上げて、目の前の男に飛びついた。


「ちょ!あんまり奇声を上げながら俺の名前を連呼しないでください!近所の人が何事かと思うでしょ!」

「だって一週間も会えなかったんだよ!?リッキーのぬいぐるみを持って行っても寂しさのあまりズタズタに引き裂いて!何体引き裂いても私の心の隙間は埋まらなくて!包丁が何本も折れて大変だった★」

「こんな所帰って来なくていいから、今すぐ病院に行ってください!」

「会いたかったー!リッキィィィイイ!!!!!!大好きぃぃぃ!!!ぬぁあああああ!!!!!」


数日だけでも会えなかった心の寂しさが一気に爆発した様子の彼女。

出張で疲れているにもかかわらず、出迎えたリッキーの体を抱えて、狭い玄関でグルグルと回し出す。









「またか…」


その奇声を聞いて、ジムとナイジェルがメインルームからこっそり玄関を覗いていた。

ため息の主は、自分の恋人の異常な言動を見て落ち込んでいるジムの方。


「何?嫉妬してんの?」

「いや…そんなんじゃないけどさ。…なんというか…アイツ他の男にあまりに積極的だから…なんというか…なんというか…不安というか…なんというか…なんというか…」

「はっきり言え」


イライラしながらナイジェルは手に持ったお椀の中を箸で混ぜ続ける。


「そうか。ビッキーちゃんには

俺だけを見て

俺だけを愛して欲しい

(;゚;ж;゚; )

と…」


「そんな気持ち悪い感じでは思ってない」


「ビッキーちゃんを誘惑する男は許さねぇ!

毎日俺が藁人形で呪ってやるぜ

(;゚;ж;゚; )(;゚;ж;゚; )

と…」

「俺までそんな感じだったら、カップル揃って病院行きだろ」



ガシャン!ガシャン!ガシャン!!


玄関からやたら激しい音が聞こえてくるも、慣れた様子で耳を塞ぎ、リッキーを助ける気配もない先輩ふたり。


「ま、要するに大まかにまとめると同じような感情を持ってるって事だろ。お前の気持ちもわからなくねーよ」

「違う!俺はビッキーが他の男の事を褒めたらちょっとイラッとして、ビッキーが良い男と楽しそうに話してるとちょっとムカつくだけなんだ!」

「一緒じゃないかい」


突然真後ろから聞こえてきた別の声。

それには受け入れる態勢が出来てなくて、男達が「うおっ!」と驚いて壁にぶつかる。

目に入った緑色。

ボビーがいつの間にか、体がくっつきそうな程近くに立っていたのだ。


「ビ、ビックリしたぁ…」

「呼んだかい?」

「呼んでねーよ」

「話は大体聞かせてもらったよ。それじゃ…始めるかい」

「え?始めるって何を?」

「秘密会議さ」

「会議?」


ナイジェルとジムが首を傾げたと同時に、力尽きてズタズタになったリッキーがドサッと床に落とされた。


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