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……………
突然のハプニングに見舞われ、クラウディの部屋に避難してかれこれ3時間程が経過した。
外の雨は一向にやむ気配がなく、このマンションからはまだ出られそうにもない。
ケーキも食べ終わりソファーでのんびりしていると、クラウディ君は退屈しのぎにと、あのノルウェーの絵本を持ってきてくれた。
懐かしい表紙。
水玉のマフラーと赤い服を身に付けた男の子が描いてある。
それとまた別の子が描いてある絵本。
こちらは初めて見る表紙だ。
まさか続編やそのまた続編があったなんて知らなかった。
【雪国の少年物語】
意外に世界でも人気があるんだな。
「…っ」
クラウディがシャワーを浴び、髪を乾かした後に戻ってくると、彼女はまだソファーに座ってその本を読んでいた。
「本当に好きなんですね。その絵本」
「あ、髪がフワフワに戻ってる」
濡れてぺたんこになっていた髪が、いつものわたあめみたいなヘアスタイルに戻っていた事に突っ込みを入れるローラさん。
「はは」と笑った後に、彼女は手に持っている本の絵を優しい目で見つめた。
「やっぱりね、この本は大人が読んでもホッとする絵本だと思う。絵とか文章が優しくて、内容も可愛いでしょ?男の子が出来もしなさそうな挑戦を必死にやってて。それが凄く癒されるなって」
「うん」
「バレルさんにも読ませてあげたいな。
これ読んでホッとしない大人はいないだろうし。まぁ…多分無理だけどね(笑)」
「…………。」
その言葉に対する返事は返ってこない。
話を切り替えるように、彼は隣の部屋への扉を開けた。
「ノルウェーにはね、他にも可愛くてローラさんが好きそうな絵本がたくさんあるんですよ。持ってきましょうか?」
「本当?読みたいな」
それからふたりでソファーに並んで座り、持ってきた本を一冊ずつ読む。
ひとつの膝掛けをふたりで使い、たまに笑い合ったり話が脱線したり。
それは端から見れば、まるで恋人同士が部屋で寛いでいる温かい光景。
ゆったりと温もりの時間を共有する。
「ははっ。このニワトリ、変な顔」
「ノルウェーではこの顔は『可愛い』って認識されるんですよ」
「えー、そうなの!こんなヘンテコな顔なのに(笑)」
隣で楽しそうに笑うローラさん。
彼女が自分の部屋に来て、自分の隣に座り、こんなにも長い時間一緒にいてくれる。
いつもは「図書館」という限られた空間の中でしか顔を合わせない存在。
今のこの光景がとても新鮮で、それでもって安心してしまうくらい居心地が良かった。
このまま
バレルさんの所に行って欲しくない。
言えるはずもないけど、絵本を手に何度もその感情が湧いてしまった。
「…どうしたの?クラウディ君。次のページ見せて?」
「あ。ごめんなさい。ボーッとしちゃって」
ゴゴゴゴッ!!
「…っ!」
突然窓が大きく揺れて、ピクッとローラさんの体が小さくなる。
どうやら外の強風で窓が震えているようだ。
「大丈夫?」
「う、うん。ちょっとビックリしただけ」
「はは。それにしても風強いですね」
クラウディがソファーから立ち上がり窓を少し開けると、ゴーッという音と共に強風と雨が部屋の中へ入ってきた。
まだ夕方のはずなのに、外は厚い雨雲で覆われ暗い夜のようになっている。
まるで台風と間違えるくらい、勢力は強いままだ。
「雨…酷いね。ごめんね、何時までもここに居座っちゃって。小降りになったらすぐに帰るから」
「やんでも外は暗いし危ないですよ。もうこの際ここに泊まっていけばいいじゃないですか」
「そんな迷惑かけられないよ!それに着替えも何も持って来てないし」
「2日くらい同じ服を着てても、自分は何も思いませんよ」
カーテンを閉め、再びローラの隣に戻る。
「でも…」
「遠慮しないでください。いつも勉強を教わってるのは自分の方ですし」
「勉強はだって私が勝手に…」
ゴロゴロゴロゴロ!!!
「キャッ!」
外が一瞬明るく光る。
その直後に鳴った轟音で、咄嗟にローラは耳を塞いだ。
外は雷まで鳴りだしているのだ。
「大丈夫?」
「ご…ごめん。ビックリした。…や…やっぱり…お言葉に甘えようかな…」
さすがに雷まで鳴っているとなると、彼女は観念したらしい。
音に驚いて小さくなる彼女を見てクスッと笑いながら、クラウディは絵本を目の前のテーブルに置いた。
「シャワーでも浴びてきたらどうですか?そしたら好きな時間にすぐ眠れますし」
「そ…そうだね。ごめんね、甘えっぱなしで」
「いいですよ。気にしないで」
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