……………

音楽番組のステージってテレビで観るとあんなに綺麗で華やかなのに、裏はこんなにごちゃごちゃしてるんだ。

ざわざわした声、専門用語が色んな方向から飛び交う。

もちろん、それは私には聞こえないんだけど。


このお仕事を始めるまでは知りもしなかった。

weather lifeの仲間になると覚える事がたくさんある。

私ってこんなに知らない事だらけだったんだっていつも思う程、芸能界の世界は新しい刺激がいっぱい。

それでも毎日充実しているし、周りのスタッフさんは私が耳の聞こえない体という事を知ってるからか皆親切。

まだあんまり「辛い」という感情はない。






「ありがとう。エマちゃん」


控え室でマネージャーの五十嵐さんに預かっていた資料を渡し、一旦私のお仕事は終わりだ。

もうこのビルへ来て3時間は経つ。

weather lifeの5人は地下の部屋に入ってずっと音合わせをしている為、別行動となってからはまだ会っていない。


七音君。

朝から元気なかったけど大丈夫かな。


本当は顔を見に行きたいけど、本番前に会いに行くのは迷惑だよね。

とりあえず、放送が終わるまで私は…






トントン。



軽く肩を叩かれて顔を上げると、突然両手に小さめのカゴを渡された。


「…ッ!」


それを渡してきたのは、目の前に立っている五十嵐さんだ。

中に入っているのは5本のペットボトル。

多分、このラベルはスポーツドリンクかな。


私が頭上にクエスチョンマークを浮かべていると、彼はスーツを羽織り、携帯を打ち込んで私に見せてくれた。



『それを美空達に届けてくれないかい?
練習続きできっと疲れていると思うし、俺みたいなオッサンが持っていくより若い女の子が持って行った方がアイツらも喜ぶと思うしね』


彼は慣れたウインクを軽く飛ばした。


凄い。

私の考えてる事がわかったのかな。

でも、嬉しい。

これで七音君に会いに行けるキッカケが出来た。


「はいっ…わかり…ました!」

「よろしくね♪」


- 632 -

*PREV  NEXT#


ページ: