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……………
半ば無理やり背中を押され、デパートに入れられたバレル。
リッキーが早速連れてきたのは1階にあるひとつのお店だ。
「…………。」
その店の看板。
そして店内の雰囲気を見て、あの「非情」と言われる蛇男の顔が表情も読み取れないほど真っ青になっている。
「なんのつもりだ…」
「なんのつもりって?見ればわかるじゃん。サン●オだよ」
リッキーが最初に彼を連れてきたのは、あの猫をモチーフにした某人気キャラクター等が揃う
ファンタジーでキラキラした女子向けのお店。
店内にいる今時の写真映えSNS女子達が、商品を見て「超可愛い〜」を連発している。
「女の人はやっぱり可愛い物が好きじゃない?
ここならきっとローラさんの気に入るプレゼントが見つかるよ!さ、入…」
ブンッ!!
腕を掴んだ瞬間、何も言われずに強く振り払われた。
まぁ…当然だ。
「入らないの?」
「ふざけんな…。入るわけねぇだろ」
「入らないとプレゼント探せないじゃん」
「知らん。やりてーなら貴様だけで勝手にや……ッ!」
「わっ!」
バレルが帰ろうとした途端2人同時に腕を掴まれ、背中側へ強引に引っ張られてバランスを崩した。
振り向いたがそこには誰もおらず、咄嗟に視線を下へ向けると…
「あ〜ら!いらっしゃい!こんなに若くて格好良い男の子達がこの店に来るなんて珍しいから、つい声をかけちゃったわ!」
男達の腕を引いていたのは、中年太りで彼らの腰くらいまでしか身長がない小さなオバサンだ。
先程言った某キャラクターのエプロンを身に付けている事から、この店のスタッフと思われる。
「なんだ、貴様…」
「君達いくつ?大学生?何を買いに来たの?」
バレルの強面にも全く動じない中年オバサン店員は、何も聞こえず次から次に質問をしてくる。
「あっらー!お兄さん、お顔怪我してるじゃない!大丈夫?」
「貴様には関係ね…」
リッキー「あっ…そうなんです!彼が恋人のプレゼントを買いたいらしくって!」
それは隣の男の突然の言葉。
バレルはその台詞を聞いて、ますます眉間にシワを寄せる。
「はぁ?」
「あら、そうなの!ワイルドな顔して彼女思いなのね!ホラ、入って入って!
可愛い息子達にオバサンがオススメ商品た〜っくさん紹介してあげるから!」
「ふざけっ……ッ!」
さすがのバレルもオバサンパワーに勝つ事は出来ず、腕を引っ張られてファンタジックな音楽流れる可愛い店内に引きずり込まれた。
・
・
・
「これが今女子に流行りのキテ●ちゃんカチューシャ!リボン猫耳が付いてるのよ!あとね、こっちはマ●メロの髪留めよ!」
「わぁ。可愛らしいですね」
「…………。」
サン●オにバレルがいる摩訶不思議な光景。
店員と楽しそうに会話しているリッキーの隣に立っているが、このメルヘンな店の空気に似合わない、今にも人を殺しそうな形相。
彼の周りにだけ「ゴゴゴゴ…」と効果音が流れて、機嫌が悪い事が見て取れる。
何度か黙って店を出て行こうとしたが、その度にオバサン店員に連れ戻され、10分経った今現在もこの場所から出られない状態が続いていた。
「アマンダさ〜ん!お電話が入ってますよ!」
「あ、はぁ〜い!それじゃおふたりさん!ゆっくり見ていってね!」
嵐のように現れた店員は他のスタッフに呼ばれ、彼らの元からようやく離れていった。
安心したのか、バレルの口から小さく息が漏れる。
「さて、どこに何があるかも大体把握出来たし、本格的にプレゼントを選ぼうか」
「…早くしろ」
店内に並ぶぬいぐるみや小物。バッグに文房具など。
全ての商品にキャラクターデザインが施されていて、どれもファンの女子にはたまらない物ばかりだ。
ふたりが相談(というかリッキーが一方的に決めて)向かったのは手帳コーナーだ。
「ローラさんって勉強家だし、こういう手帳とかあげると喜ぶんじゃないかな?あ、ほら。このキキラ●の手帳とか可愛いじゃん」
「勝手にしろ…」
「バレルがプレゼントするんでしょ?君が選ばなきゃ意味がないよ」
リッキーとも全く目を合わせずに怒り気味。
というか、むしろ血の気が引いたみたいに顔色が悪い。
こんな青ざめたバレルの表情も珍しいな。
「あ、これも可愛い。ビッキーとか好きそうだなぁ」
「…チッ」
「もう!舌打ちしないでよ。こんなにたくさんあるんだから、バレルだってローラさんが喜びそうだと思う物、ひとつくらいあるでしょ?」
「…ねぇよ」
「見てもないのに『ない』なんて言わないで。ほら、ちゃんと探して」
「じゃこれでいいだろ…」
バレルは目を背けたままようやくひとつの冊子を手に取り、リッキーに荒く渡した。
「バレル、これぬりえだよ。その顔でぬりえあげるつもりなの?」
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