……………


あまりにバレルが乗り気にならないので、ふたりは何も買わずに店を出る事に。

腹が減ったのか当初の試食要求をするが、リッキーは「全品売り切れた」と完全に話をスルー。

上の階に登る為に強引にエレベーターに乗せられ、辿り着いたのは「スロウシュガー」という名前の雑貨ショップだ。

先程のキラキラとした店内とは違い、落ち着いた大人の雰囲気漂うお店。


「ローラさんってどっちかと言うと、メルヘンチックな物よりシックなアンティークとかが好きそうだよね」

「…………。」


バレルも帰りたがるオーラは変わらないが、全力で逃げようとしていた先程よりも若干免疫がありそう。

リッキーが背中を押すと、次はすんなりと店内へ入ってくれた。

並んでいるのはお洒落な食器や生活用品。

ビビッドカラーではなく、落ち着いたパステルカラーの商品が多く、優しい香りが店内を包んでいる。

リッキーは早速目に付いた商品を取ってみた。


「ほら!このマグカップとか可愛いんじゃない?この洗練されたデザイン、シャレオツ!」

「じゃそれでいい」

「だからまた!バレルが選ばないと意味がないんだって」

「だったら初めから勧める商品を出すな」


バレルが言う事もごもっともだが、リッキーの「だって何か喋ってないと勝手に帰っちゃうでしょ?」の言葉も正論だ。


その後も男ふたりで店内をうろつく。

女性客が多いから背の高い男が店内にいると目立つのか、チラチラと視線を感じながら気になった商品を手に取ってみる。

バレルも大分免疫が付いてきたのか、ほとんど来ないアンティークショップに興味が湧いてきたのか、リッキーの元を離れてひとりで歩き回り始めた。

やっと真剣に探してくれる気になったかな。


リッキーが視線を向けると、彼はひとつの商品を睨み付けるような真剣な目つきで見つめていた。



これはもしかして…



すぐに駆け寄ってみる。



「バレル!」

「これにする」

「お!やっぱり?やっと決まっ…」









【ワクワクパン工場】








「…………。」



これは今流行りの、自宅にいながら焼きたてのパンが食べられるホームベーカリー。


しかしバレルが指差したなんともこの顔に似つかわしくないふっくらモチモチパンが描かれた箱に、リッキーは言葉を失った。




「えっと…うん…。…バレル、パン食べたいだけでしょ?」

「文句あんのか、ちゃんと決めただろーが。早く買え」

「なんで俺が買う体になってるの!?バレルからのプレゼントでしょ!」

「こんな馬鹿高ぇもん買えるわけねーだろ。考えろ、クズが」

「だからってバレルからのプレゼントを俺が買うって意味がわからないから!全然心こもってないし!
大体それをプレゼントしたところで、きっとローラさんは持って帰っちゃうだろうから君はパンを食べられないよ」

「俺の家に置かせる」

「ますます意味わかんないし!それはもう、俺がバレルにプレゼントを買ってあげてるようなものじゃん!」

「黙れ。あと3分以内に買わねーと貴様の首の骨を折る」

「なんなの!?どんだけパン食べたいの、この人!」


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