……………


「ダメだよ。今、重要な会議をしているのだから。部外者が入ってくると目障りじゃないか」

「はぁ?いいだろ、別に部屋にちょっと入るくらい」

「ダメだね、僕が断じて許さない。少しでも中に足を踏み入れてみろ。問答無用で君の耳を引きちぎる」

「怖いよ。なんでそれだけで耳を引きちぎられなきゃならないんだ」


何も考えずにフラッと立ち寄るのはメインルーム。

いつもみたいに扉を開けようとした瞬間、突然中から出てきたボビーに入室を止められた。

室内に見えるのはソファーに座っている俺以外のナイジェル、リッキー、サラ。

重要な会議をしてるから入るななんて、別に俺がその会議に口出しするわけじゃないのに。


「ジム君、さっきまで死んだように寝てたじゃないかい。どうして目を覚ましたんだい?」

「生きてるからだよ」

「とにかく、あと一時間は会議が続くから。君はこの部屋に入って来ないでくれたまえ」

「だから俺はただ腹が減っただけ…」

「入って来ないでくれたまえ」



「………。」










ガチャン。








結局、メインルームへの入室を断固拒否されてしまった俺は、仕方なく休憩室で待つ事を告げてその場を去った。

自分の部屋に行ったら次は朝まで眠ってしまいそうだしな。














「…なんだよ、最新号ないじゃん」

バイク雑誌でも読みながらその小さな個室で時間を潰そうとするが、やはりひとりは退屈だ。

ったく、部屋に入るくらい構わないだろ。

なんだってそんな俺を避けてるみたいに。



「たっだいまー★」

「ウワッ!」


気を抜いた瞬間に突然強く扉が開き、ジムはまるでドッキリにでも引っかかったようなリアクションを見せた。

ビッキーが外出から戻ってきたのだ。


「ビ…ビックリしたぁ。お前な…女なんだからドアくらいもっと優しく開けろ。
お前のせいで何回ここのドアが損壊したと思ってるんだ」

「ちょっとぉ。お前な…男なんだから可愛い彼女が帰ってきたら、もっと優しく『おかえり』だろ。
お前のせいで何回このガラスのハートが損壊したと思ってるんだ」

「真似するな」


悪気もなくケラケラ笑った彼女に、何故か視線が釘付けになるジム。


「え?何?」

「お前、今日友達の誕生日会に行ったんじゃなかったっけ?」

「そうだよ!このドレス、可愛いでしょ?」


くるんとスカートをヒラヒラさせて回ってみせる。

お誕生日会にしてはやたら派手なドレスだ。

オレンジ色の鮮やかな生地に、腰に施されたリボンの装飾。

黒から赤に変わるグラデーションの網タイツが妙にセクシーだ。

外へ出歩くためにストールを羽織ってはいるものの、一段と華やかに見える。


「ダンスパーティーだったんだよ!皆でお洒落な服を着てさ!スッゴく楽しかったぁ!」


なるほど。

やたら洒落た服を着ていると思ったが、そういう理由か。

可愛いドレスを着てご機嫌なビッキーに対し、ジムの方はあまり良い表情をしていない。

その理由はもちろん…


「男もいたのか?」

「まぁね。学生時代の同級生とか!でもなんにもなかったよ!」


何の違和感もなく、彼の隣に自然と座った。

こうやって近くで見ると、胸元も若干出ていればスカートも短め。

この格好で男のいる場所にいたのか。

そう考えるとあまり良い気分にはならない。


「ジョーズにも見せたいと思って!ね!可愛いでしょ?」

「…あぁ。可愛い。ジムだけど」


あっけらかんとした笑顔に、なんだか腑に落ちない顔。

長年傍にいるからか、曇っているジムの表情の理由はビッキーにもいち早くわかった。


「あー。もしかして『またこんな露出した格好で外出して!』って怒ってるの?」

「怒ってはないけど」

「今回はダンスパーティーだったし仕方ないよ!皆こんな格好だったし!」

「…あぁ」

「男の人とはほとんど話してないよ!ちゃんと彼氏がいるって話したし、他にも可愛い子いっぱいいたから、私なんか見向きもされなかったって!」


必死に弁解をするビッキーの顔を見る。

まぁ…今までそういう生活を送ってきて、すぐにそのスタイルを変える事も難しいし。

それにコイツだって俺のためにこうやって自分なりに色々考えているんだ。

俺も心配性すぎる所を反省して、もう少し大人にならなきゃな。


「んもう!まだイジけてる!だから心配しなくたって…」

「違う、大丈夫。そうだよな。俺も考え方を改めなきゃなと思ったんだ」

「そうそう!そんな深刻にならなくても大丈夫だよ〜!
それに気にしなくても私みたいに我が儘な女って『うるさい』と思われて早々男に相手にされないから!」


我が儘は自分で肯定するんだな。

それを自覚していてあえて直さない所も「正直」で俺は好きなんだけど。

まぁ男から見りゃ、見た目的にコイツは目立つんだから俺は心配なんだが。

自分の恋人だから特別に可愛く見えてしまうのは…俺が単純に馬鹿だからだろうな(笑)


「ねぇ、見て見て!この海老のお料理!パーティーで出てきたんだけど、凄く美味しかったんだよ!」

「あ、本当だ。美味そうだな」

「あとこれはデザートのマシュマロタワー!見て、この高さ!私の身長より大きいでしょ?」

「凄いな」


俺の機嫌が直った所を見計らって、携帯で撮った写真を楽しそうに見せてくるビッキー。

自分が食べた料理。

凝った作りの会場の飾り付け。

踊っている友人の姿。

俺が部屋で爆睡してる間にこんな楽しい時間を。

とにかく見きれない程のたくさんの写真を、一枚ずつ丁寧に説明しながら見せてくれる。


「あとねあとね!ほら、これ私の友達なんだけど!ダンスしてる途中でコケて血だらけになったの!」

「うわ、可哀想…。これは撮ってる暇があったら急いで手当するべきだろ」


ボタンを押す度に次々に新しい写真が出てくる。

一通り見終わり、ジムは感心した様子で目を横に向けた。


「こんなにたくさん撮ってきたんだな」

「うん!面白かった?」

「面白かった」

「よかったぁ!全部ジムに見せようと思って撮ってきたんだよ!」

「…っ」


俺のために…?

思ってもいない言葉に思わず目を丸くした。


「本当はこのドレスもね、ジムに見せたいと思って買ったんだ。『可愛い』って言って欲しくて、目一杯お洒落したのに。
でも私から言わないとアンタなーんにも言ってくれないんだもん!」

「えっ」


ぷくっと頬を膨らませた姿は、口にどんぐりを詰め込んだリス。

でも、まさか自分のために写真を山のように撮ってきてくれたり、

こんなに高そうなドレスを買ってくれていたなんて。


こんな歳なのに、柄にもなく嬉しい。



「あぁ…凄く、可愛い」

「ホント!?嬉しい!」


偽りのない無邪気な恋人の笑顔。

俺なんかのために必死に可愛くなろうと努力して、俺に褒めてもらおうと時間をかけて化粧をしてコーディネートを考えて。

特別ハンサムなわけでもモテるわけでもない俺なのに。



気がつくと彼女の手を強く握っていた。


「可愛い。他のどの女の子と比べても、やっぱり俺はお前が一番可愛いと思う」

「はは!それは大袈裟!」

「大袈裟じゃない。こんな取り柄も何もない俺にとって、お前は唯一の存在なんだ。
自分なんかよりもっともっと大切な存在。だから…」

「だから?」


ぴたっとおでこ同士をくっ付け、

握っていた手を離して、指まで絡めて握り直す。




「他の男に取られたくない」




その言葉を聞いて、彼女も逃げずに優しく答える。


「私、どこにも行かないよ?ずっと傍にいて、これからも『可愛い』って言って欲しいもん」

「はは。調子がいいな」


そのまま優しくキスをした。

今日はおめかししているせいもあり、普段以上に愛しく思えて、二度目はより深く舌を絡めてしまう。


「んぅっ…///…ふっ…」


クチュックチュッと舌で音を立てる。

絡ませた指が離れないように強く握り、こちらへ引き寄せた。


「ジム…お部屋に戻ろ」

「待て」

「誰か来ちゃうよ」


そのまま耳まで舐められてる。

どうしよう。

なんだか止まる気がなさそう。

このままだと部屋に入ってきた誰かに見られちゃうかもっ…


「一時間はメインルームから出ないって、ボビー達が言ってたから大丈夫だ」


耳元に口を近づけて囁き、同時に温かい温度を感じた。


「すぐ終わらせる」

「そんな…大丈夫じゃなッ…あっ、ちょ!」


抑えきれなくなった彼は、開いた胸元に手を入れ始める。

ここっ…皆で使う休憩室だよっ!

自分達の部屋でしか、私達こんなのした事ないのにっ…///


「…ファッ///…あっ!」


中で触られて変な声が出てしまう。

体はピクピクと動いて、ダメだとわかっても自然と反応しちゃう。


「その格好だとますます可愛くて止められなくなるな」

「ンッ///…キャァッ…やぁ…」


誰かが来ちゃうかもしれないと思うと気が気じゃないけど、

でもそれが凄くスリルがあるというかっ…

気持ちいし…ドキドキしちゃう。


「ジムッ…///」

「やめて欲しいのか?」

「…!」


珍しい彼の意地悪な言い方に、無意識に首を横に振ってしまった。


「ち…違う!」

「じゃぁ、続けてもいいんだな?」


勝手にそう解釈し、彼は自分のベルトを外し始める。

本当に…ここでしちゃう気なんだ。

そう思った瞬間に顔が熱くなった。


「汚さないようにしないとな」

「えっ?このままするの?」

「当たり前だろ。そんな可愛い服着てるのに勿体ないだろ」



本当はこんな所じゃダメだってわかってたけど…

腕を握られて、またキスをされて

彼の要求を拒む事が出来なかった。



「んぅっ///…ンッ!う…あっ」



小さな休憩室のソファーの上。

お互い服を着たまま、私達は快楽に溺れ始める。

自室以外で初めて。


「…ハッ!あぁッ///…んぅっ…あっ///」


チラチラと扉に視線を向けて、ビッキーは落ち着かない。

声も普段よりボリュームを抑えているようだ。



「心配か?」

「だって…」

「大丈夫。誰も来ないから」

「ジムッ……キャァッ!///」



パンッ!パンッ!


肌を叩きつける音が激しくなって、咄嗟にソファーを強く掴んだ。

何度も襲う快楽を、四つん這いのまま受け止める。

いつもと場所が違うからか、不安がって必死に声を抑えようとする姿が逆に可愛くてたまらない。



「そんッ…なぁ///…アッ…ッ!…ハァッアッ!」

「汚さないようにするからお前は動くなよっ」

「アアッ!…ンッ///…あっ…ヤァッ!////」


後ろから手を引かれ、体の熱が最高潮に達した瞬間…


「ンゥゥッ!」


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