1
12月24日。
体の芯まで凍えるような寒い街に、大勢の人々が集まっていた。
光輝く色鮮やかなイルミネーション。
街の至る所に飾られているサンタクロース。
大きなクリスマスツリー。
全てが淡くロマンチックに見え、街は幸せムード一色だ。
「ったく…なんで俺達が毎年毎年買い出しに行かなきゃならないんだ」
「仕方ないでしょ!?リッキーとナイジェルは一応誕生日なんだし!サラは料理担当で、ボビーに行かせたら何を買ってくるかわかんないから!」
「そりゃそうだけどさ…」
冷えた手をポケットに突っ込み、不貞腐れながら白いため息をついたのはリーダーのジム。
本日は年に一度、ウィンディランで開催されるクリスマスパーティーの日。
毎年上記の理由により、食材や飾り付けの買い出し当番はいつも俺とビッキーだ。
「あっ!ねぇ、このケーキ美味しそうじゃない!?買って帰ろうよ!」
「ケーキはこの間予約してたのが届いただろ?」
「いいじゃん、クリスマスなんだから別に何個食べたって!」
鼻を真っ赤にしてプクッとプリンのような頬を膨らませる彼女。
そんな顔を見て、ジムは子どもを見る目と共に口元が緩んだ。
・
・
・
「ありがとうございました」
ドアを開けると設置されていた可愛らしいベルが音を立てた。
ビッキーの手には「Sweet Honey」と店の名前が書いてある淡白い箱が。
「わぁっ!やった!ありがと、タニア!」
「ジムだ」
毎年、いつも同じクリスマスだった。
似たような装飾品や音楽に、溢れているカップル達の姿。
キリスト様の誕生日だかなんだか知らないが、正直こんな盛大に祝うイベントなんて、自分には関係がないと思っていた。
去年までは。
「持つよ」
「え?大丈夫だよ?」
「いいから」
ポケットに入れて温まった手を外へ出し、ケーキの入った箱をビッキーから取った。
「でもアンタ、材料とかいっぱい持ってるし!ケーキくらい自分で持てるよ!」
「お前は何でもかんでも振り回す癖があるからな。せっかく買ったケーキがグチャグチャになるだろ」
「何それ!ダメ!私が持つ!」
再びそれを小動物のような動きで奪い返される。
「おい…」
「だってっ」
数回瞬きをしたジムの顔を見て、ビッキーの顔は寒さに関係なく赤くなった。
「だって…」
「……?」
「アンタの両手…塞がっちゃったら…手…繋げない…」
「…………ッ…」
恥ずかしいのか目を合わせてくれない。
そこへスッと手が伸びて、空いていた左手を掴まれた。
「そうだったな」
お兄さんのような優しい目。
私の手を優しく包んで握ってくれた彼。
少し冷たくなってたけど、心臓の鼓動が早くなって体は温かい。
「帰るか?」
「うん!」
ぎゅっと手を握り合った2人。
今年のクリスマスは去年とは全く違う色。
見える景色や聞こえる音は何も変わらないのに、
「お前」という存在がたったひとつ増えただけで
この日がこんなに華やかで幸せな日である事を、生まれて初めて知った。
- 1 -
*PREV NEXT#
ページ: