……………


「メリークリスマース!」


カンパーイ!と明るいかけ声と同時に、サラは自分の顔程ある大グラスのビールを一気に飲み干した。


「相変わらず凄いな、お前…」

「何よ、ナイジェル!アンタ全然減ってないじゃない!もっと飲みなさいよ!!」


普段はクールなサラも、飲み会の日ばかりは一変。

3日分くらいの言葉をマシンガンのごとく喋りまくり、5日分くらいのテンションが体に宿る。

ナイジェルがいつもみたく彼女にイジられ、ボビーが誰も聞いていない自慢話を語り出し、 
リッキーがオレンジジュースを飲んで笑っていると、ビッキーがサンタの衣装で彼に飛び込む。


それが毎年楽しくて仕方がない。

テーブルに並んだターキーやサラダ、スナック菓子を食べ、夜遅くまで騒ぎ飲み明かす。

こんな単純な事で、どうして人間はこんなに盛り上がれるのだろう。

いや、そんな事今はどうでもいい。

理屈抜きで楽しむのが、このウィンディランで行われるクリスマスパーティーなのだから。






「そういえばさ、お前らふたりは付き合って初めてのクリスマスだろ?」

話を振ってきたのは、向かい側で2杯目のビールを飲んでいるナイジェルだ。


「あぁ…まぁ…そうだけど」

「いいよなぁ、愛する恋人のいる輩は!これからロマンチックな一夜を共に過ごすんだろ?」

「えっ…」


そんな事を言われても、この後の予定なんて全く決まっていない。

隣に座っているビッキーも何と答えていいのかわからないと表情が言っている。


そこで横から割り込んできたのは、既に酒に酔って出来上がっているサラだ。


「何?何?この後ふたりでどーすんのよ?」

「あ、いや…別に…まだ…」

「ったく、照れんなって。ところでさ。お前達は、ぶっちゃけ今どこまで進んでんだ?」


食い入った話題を持ち出すナイジェルに、お互いの頬が赤くなる。


「進んでる…と言うと?」

「だからどこまでしてんだって事だよ!いい大人なんだからわかんだろ?」

「……ッ…///」


隣同士座りお互い口を閉ざして目を逸らすカップルに、ナイジェルは眉をひそめる。


「…別に」

「それは…どういう意味の『別に』だ?色々思い出して恥ずかしくなってんのか?」

「いや、そういうんじゃなくてな」



正直言うと、まだ付き合ってキスもあまりまともにしていない。

手は普通に繋げるようになったが、それ以上の事をするには少しまだ抵抗があって。

キスより先なんてまだ未知の世界だ。


あまりに今まで近くにいすぎて、そういう想像がお互いほとんど出来ずに、同じ場所にずっと立ち止まっている状態。



「はぁっ!?マジで?まさかまだキスもした事がないの!?」

酔ったサラがテーブルを叩いて身を乗り出したかと思うと、予想もしていない大きな声で訊いてきた。

その声に、動物話題で盛り上がっていたリッキーとボビーが気づいてこちらを見る。


ジム「ちょっ…声がデカい、サラ!」

「だってありえないでしょ!?そんな付き合っておいてまだヤッてないの!?中学生のお付き合いじゃないのよ!!」


何度も言うが、彼女の性格や言動は酒が入る事によって180度変わってしまう。

普段ならこんな大胆な発言を人前で言ったりする事はまずないのキャラクターなのだが。



「サラっ!やめっ…」

「君達ぃぃぃぃっ!!!また僕を差し置いて!ビッキーちゃんはまだまだ僕の支柱にあると…」

「うるさい、黙ってなさい黒豆ッ!煤v


ガシャンッ!!

理不尽に皿ごとターキーを投げつけられて、ボビーは気絶。



「…お前の方がうるせーから。まぁ、サラ。落ち着け」

仲裁に入ったナイジェルは、ボビーを放置してゴホンと小さく咳払いをする。


「じゃぁ質問を変える。お前ら、さすがにもうキスくらいはしてるよな?」

「ま…まぁ…そのくらいは…」

「じゃぁ週に何回くらいしてる?」

「何回って…///……まぁ…2、3回…程は…」


「2、3回!?付き合って一ヵ月しか経ってない、まだラブラブシーズンのふたりが週に2、3回!!?」

「サラ、わかったから落ち着け」


何度も何度も言うが…

サラにアルコールが入ると

まるでボビーを越えるウザいテンションになってしまう。


「まぁ。お前らふたりお互いの事を知りすぎてるってのもあるからな。無理もないって言やぁない」

「リッキーはどう思う!?付き合って一ヵ月なら、ちゅうなんて毎日するわよね?」

「はぁ!?///その…えっと…///はい、しましょう…」

「いや、アンタとはしないから」


他の仲間達に散々イジられて、ジムも頬を染めながら紙コップの烏龍茶を飲み干した。


「別に、お前らには関係ない話だろ?」

「ハハッ。んな怒んなよ(笑)大丈夫だ。お前がそれだけビッキーの事を大切にしてるって事だろ?」

「当たり前だ」


照れている初なカップルを見て、ナイジェルは髭をさすりながら笑った。



「さて、サラも急に爆睡し始めたし。今日はこれくらいにしとくか?」


時計の針は深夜の1時。

明日は休みだが、あまり遅くまで飲んでいても体が疲れるだけだ。

こうして今年のクリスマスパーティーも散々騒いで食べて飲んで、熱気漂う充実感の中で幕を閉じた。


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