ダイアゴン横丁は休日であることも相まってかイアンと同じように入学や進学の準備をする人でいっそう賑わっていた。
 父の後ろを歩くも、知り合いばかりのパーティーとは違い不躾に送られる視線がイアンには居心地悪かったが、父、ジョエルは普段から慣れているのか堂々とローブを揺らして優雅に歩いていく。知人に呼び止められては丁寧に対応する──それらを無下にはできないことはイアンにも分かった。所詮はうちも客商売である──ジョエルに、イアンは父親の人脈に感心すると同時に、この調子では中々時間がかかるかもしれないと内心ため息をつくばかりだった。


「やあやあジョエルじゃないかね! 相変わらず男前だ」
「やあフィエロ、君も元気そうで何よりだ」
「どおりで、魔女達がクスクスとよく立ち止まっていると思ったよ。今日は何を…おやおや、そちらはもしかして」
「私の息子だ。今年ホグワーツに入学するのでね」
「イアン・レヴィナスと申します」

 ジョエルにゆったりと視線を送られてイアンは本日何回目かの同じ挨拶をする。最後ににこりと笑うのも忘れずに、なるべく穏やかに、丁寧に。ふくよかで髭をたくわえたフィエロと呼ばれた男性は満足そうにその大きな手でイアンの頭を撫でた。

「やあイアン。お父上によく似ている。ミラベルとも似ているかな、利口そうな子じゃないか」
「恐れ入ります」

 照れたように髪を整えるイアンにフィエロは人のよさそうな笑みを浮かべた。
 “父と似ている”と言われることはイアンにとって、一番嬉しい褒め言葉であった。



「イアン!」
「アルフォンス」
「久しぶりだな」
「そうだったか?ガーデンパーティーで会っただろう」
「それは半年以上も前のことだろう」

 不満げに眉を潜めるアルフォンス・ヴィオネは、レヴィナス家と同じくフランスをルーツとする一家の子息にあたる。親同士──特に学生時代を共にしたという母親同士──の仲が良く、よくお茶会にも連れ出され互いの家を行き来する機会は少なくはない。

「今年こそレヴィナス家はフランスに戻るともっぱらの噂だったし、1度帰ったと聞く。お前もボーバトンに通うものだと」
「そのつもりだったが、色々あってまだしばらくイギリスに」
「そうなのか。まあ何にせよお前とホグワーツに通えるなら嬉しいよ。買い物はこれからか?」
「ああ、今日は魔法省の役人も多く来ているらしい。君は…もう終わらせたようだな」

 アルフォンスはそれを聞いて、そうとも、と大袈裟に身振りを加えた。

「休日だからな、役人も多いはずさ。ああ俺はやっと終わったよ、杖選びが長かったんだ。オリバンダーの店に何時間いたかわからない──結局スプルースに芯はアブラクサンの尾だった…なんだか弱そうだと俺は思ったんだがそんなことは無いらしい──しかしだな、制服はいつもよりずっと楽だったな。なんていったって大概の生地が指定されているんだ! 採寸だけで済むなんて! 制服とは素晴らしい! あとはローブの生地を母上達が選んでディティールを拘るのをじっと我慢すればいいんだからな」

 いったあとでアルフォンスはふぅ、と息を着いた。
にぎわいとコラージュ