ONLY I KNOW


我がクラス一のハイスペックイケメン男子ー轟 焦凍くん。

個性もさながら、頭良し、顔良し、完璧男子な轟くんは、たまに発言が天然だったりと皆大好きギャップも忘れない非の打ち所がない理想の男の子。

ちょっと、いやかなり、マイペースな所も可愛いと話題沸騰中。

これは、そんな完璧男子と私の間に起きた奇跡みたいな青春の1ページ。


の、はずだった。


ある日のこと、相澤先生の雑用を手伝っていたら帰宅時間が少々遅くなってしまった私は足早で教室に向かっていた。


(外、暗い!怖い!無理!)


峰田くん以上のビビりであると自負している私は、尋常じゃなく震えながら教室に向かっていた。だがしかし、事件は起こってしまったのである。

「うぅ、相澤先生呪ってやる〜〜!そんな個性持ってないけど!」


私はこんな時間まで残らせた相澤先生を恨みながら、誰もいない教室の扉を開けて、足早に自分の席に向かおうとして気付いた。

ぼうっと紅く灯る人魂のような、それに。

「、、、、、、、、。」


人間、本気で驚くと割とガチで言葉が出てこないんだなあ、なんて、のんびり考えていたのがいけなかった。


何と!人魂がこっちに近付いてくるではないか!!

「い、いや、こ、来ないで、、!」

私は何とか逃げ出そうとするも、足が動かない。

ごごごごめんなさい!!もう呪うなんて言わないから相澤先生タスケテ!!

あまりの恐怖にさっきまで呪ってやろうとしていた相手に心中で土下座しながら助けを求めた時、人魂がフッと消えたのだ。

「え、」

ほっと息をついた瞬間、ブワッと赤い光が教室を照らし出した。

さっきの比じゃないその光に私はついに気を失ってしまった。


「おい、視川、」


遠くで聞き覚えのある声が私の名前を呼んでいたような気がしたが、私の意識は完全にブラックアウト。

次に目が覚めた時には、きっと自室のベッドの上だという淡い期待はすっかり見慣れてしまった教室の天井が視界に入った瞬間、打ち砕かれた。

どうやらあのまま教室の床に倒れていたらしい。

「オーマイガッ!!!」

絶望のあまり何故か英語で叫びながら飛び起きた私にすぐ横に座っていた物体がビクゥと動いた。

「え、え、え、ななななな何!!?」

出た!おばけ!さっきの人魂に取り込まれたんだ私は!どうしよう!

もうパニックなんてレベルじゃない慌てっぷりでその物体から離れようとしたら腕をがしっと掴まれた。

「嫌ァァァァア!許してェェェ!」

私の悲痛な叫びにまたも驚いたらしい物体は今度は何かで私の口を塞いできた。

「っ!?んんん!!?」

ど、どうしよう!どうしよう!?

完全に動きを封じてきた物体に戦闘向きの個性を持っていない自分を恨みながら全てを諦めかけたその時、またも赤い光が辺りを照らし出した。

「っっっ!?」

終わった!完全に終わった!

食われる!?と思い、目をぎゅっと瞑ったけど一向に何も起こらない。

「驚かせて悪い。俺だ、分かるか?」

視川と、名前を呼ばれてそっと目を開けると今話題のハイスペックイケメンの御尊顔が目前にあって、呼吸を忘れた。

何これラッキーハプニング!?クラス一のイケメンも人魂に取り込まれてたの!?てか顔近い!!目、綺麗!イケメン万歳!人魂万歳!

あまりの天国と地獄のフルコンボに少々頭をやられた私は、ほほろひふん!と塞がれた口で何とか目の前のイケメンの名前を呼んでみた。

私が落ち着いたのが通じたのか、轟くんは安心したように笑った。

「っっっ!?」

やばい!やばい!こんな間近で轟くんの笑顔とか死んだ!いやもう死んでるのか!?轟くんと2人っきりなら天国もイイね!!!

だいぶ頭をやられてきた私は重要な事に気付いた!口!塞がれたまま!轟くんの手に塞がれた!まま!

再びパニックになりかけた私に気付いたのか、轟くんは「あ、悪ィ。」ともう一度謝って手を離してくれた。

ちょっと残念とか思ってないから。断じて、思ってないから。

「あ、の、と、とど、ろきくんは、」

「ん?」

ここで何をしていらっしゃったのですかという問いは言葉にならなかった。

だって、口は解放されたけど腕掴まれたまんまだし、顔は以前近いし、私が名前呼んだら安心させるためだろうけど優しく見つめてくるものだから、爆豪くん曰くモブ女子の私には、色々限界なんですけど!!

「あ、の、」

「ん。」

「え、と、こんな、時間まで、な、何してたの??」

しどろもどろになりながら何とか言葉にすると、轟くんは「視川を待ってた。」と、とんでもない爆弾を投下してきた。

「え、あ、わた、し?」

「ん。」

何故に!?轟くんが私を!待ってた!?

「ど、どうして、?」

「相澤先生の雑用、俺も手伝った事がある。相当時間かかった事を思い出して、待ってた。」




だって、お前、すっげぇ怖がりだろ?




優しく笑いながらそう言った轟くんに、私の心臓は尋常じゃない音を立てながら、脳内は狂喜乱舞状態だった。

いや、ちょっと、待て。

確かに怖がりだし、クラスの皆がそれを知ってるし、轟くんが知っててもおかしくない。

優しい轟くんが待っててくれたのも何となく分かる。

でも、それじゃあ、なんで、あんな、

真っ暗な教室で、電気もつけずに、怖がりな私を待ってたの、とか。

そもそも人魂みたいにゆらゆら火を灯しながら近付く前に、もっと良心的な接触の仕方あったよね、とか。

色々疑問が浮かんだのだけど


「視川、帰るか。」

「は、はい、、、。」


以前近過ぎる顔面と掴まれたままの腕に思考を持って行かれた私は轟くんの天然にしてもコレは?な一面をこの日以降、ちょこちょこ垣間見ては、ハイスペックイケメンの策もとい魔力にハマりまくって、めでたくお付き合いまで持っていかれてしまうのだが、それは、また別のお話。



(天然?天然なの!?天然で済むレベルなの!?)



天は人に二物を与えず。人間、完璧な奴などいないのだと、この時の私はまだ気付かない。







あとがき
轟くんいいですよね。
女子が好きな要素しか持ってない完璧男子にまんまと落とされるモブ女子に私はなりたい。