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「あ、迅くん!」
「すみません俺急いで……あ、ごめんなさい嘘だから泣かないでヤメテ」
「な、泣いてないよ!」
 お前19歳の奴らに避けられてね?と大学のレポートを手伝っていた時に太刀川君に言われたこの一言がきっかけだった。その時はいやいやいや〜そんな嫌われるような事してないよ〜太刀川君じゃあるまいし〜なんて流していたが、そう言われてしまえば悲しいかな人間とは気にしてしまう生き物で。意識して見れば確かに会わない。玉狛にいる迅君や鈴鳴の来馬君はそもそも会うことが少ないからそこまで気にならなかったのだが、同じ本部内にいるはずの嵐山君、柿崎君はいつあっただろうというレベルだった。本部で見かけたことが無いかもしれないの域であった。月見ちゃんにかんしては太刀川君関連でよくお話しするし普通に仲良しであるが、19歳男子組はたしかに太刀川君の言う通りかもしれない、と落ち込んだ。しかも私の一つ下である彼らは本当に良い子達ばかりなのだ。ほんっとうに。同い年が太刀川君だと尚更その人の好さが沁みて眩しいくらいだった。いや同年代が嫌いって訳ではない、キャラは濃いなと思うけど。
 一つ下の子は高校の時、月見ちゃん以外は同じ高校だったからこそ知っている、本当に人の良い子達ばかりで、迅くん以外は今も同じ大学に通っている……あれ、大学でもそう言えば会っていないと気が付いてしまってまたべっこりと凹んだ。
 だからこそ緑川君が迅くんの名前を上げていたのを聞いて、彼に会うために探していたのだがまあ会えない。え、これサイドエフェクト使ってまで避けられているのでは…?なんて思ってしまうほどに会えず、結局その日は気が付いたら彼は玉狛に戻っていた。ちょっと泣いた。
 そんな日が何日か続き、ついに迅君に会えたわたしは、嬉しさのあまり彼の名を呼び駆け寄ったわけだが、その結果が冒頭に戻る訳である。太刀川君の言った通りだった…と絶望しかけたところ、こちらに背を向けて颯爽と去ろうとしていた迅君が慌てて振り返って駆け寄ってきてくれた。悲しさで泣きはしなかったが安堵で泣きそうになった。
「さ、避けてた……?わ、私なにかしてしまった……?」
 そう、覚えがない。避けられていたというのはここまで来れば覆せないほど事実だったと認めざるを得ないのだが、その原因が私自身分かっていないのだ。何かしておいて自覚がないなんて一番やばいやつじゃん……と太刀川君に愚痴ってしまうくらいには落ち込んだ。因みに太刀川君は人が嫌がっていることを分かったうえでああいったふるまいをしている節があるタイプである。それはそれでいやか…嫌でも無自覚よりはましだろう。そんな太刀川君の慰め方といったら酷かった、二言目にはラブホいく?であんまりにもだったから忍田さんにチクッた。
「いや……別にみょうじさんが何かしたって訳では……」
「……ごめん」
 本人正面にして言えるわけがない、そりゃそうだ。迅くん優しいもの……そんな優しい迅君に避けられるって本当に何したんだ私…と悶々としていたらどんどん俯いてしまって自分の爪先がちょっと内股気味になっているのが目に入った。いつから避けられていたのかすら見当がついていないし、何より太刀川君に言われるまで気が付かなかった時点で自分の図太さよ……と改めて泣きそうになっていたら、「あ〜!本当にごめんみょうじさん!」とがばりと肩を掴まれた。反動でぐらりと首が上がり、ばき、と変な音が鳴った。
「い、いたい……」
「え、あごめん、え、いま首?え?」
「くび……歳かな……」
 あわあわと見るからに狼狽える迅君に、ああいつもの迅君だなあ、懐かしいなあなんて思っていたらそれがぽろっと口からも出ていたらしく、ギョッとしたような顔でこちらを凝視された。
「ほんと、あの……ごめんなさい……」
「え、いや、迅君は悪くないよ」
 謝られてしまって今度はこちらが慌てて手をぶんぶんと振れば、へにょっとした珍しい顔をされてしまった。可愛い、どうしたの迅君……。
 どうやら私が相当へこたれた声と顔をしていたらしく、忙しいだろうに迅君はどこから取り出したのかトレードマークと言ってもいいぼんち揚げの袋を取り出し、近くにあったベンチの上でパーティー開けをした。「時間大丈夫?」と何度も聞いたが「めっちゃ暇、すごく暇、今日はここにいる」と言って私もそのベンチに座らせた。
「あの……本当にいいの?急いでた、し……」
「あああ……最高に罪悪感……!」
「え?」
「こっちの話……」
 ばり、とぼんち揚げを齧る迅君は遠い目をしている。食べてと差し出されたぼんち揚げを取りあえずと口に運べば、ああこれを食べるのもそう言えば久しぶりだなぁとちょっと感傷的になりかけた。ぼんち揚げでおセンチな気分になるって……私かなりきてたのか……。迅君と言えばぼんち揚げを咥えたまま両手で顔を覆っていた。多分指にぼんち揚げついたままだから髪についちゃうと思うよそれ。


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投稿日:2018/1215
  更新日:2018/1215