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 保健室の常連である私は今日も今日とて一番奥のベットを使わせてもらおうと遠慮なく戸を開ける。保険医のケンちゃんは今日いないらしい、しかしそんなこと知ったことかと勝手に利用簿をひっ張り出しがりがりと自分の名前とクラス、利用理由に「熱」と書き込む。いつもの仮病とでも書いてケンちゃんを笑わせても良かったのだが生憎今日は本当に少し熱っぽいのだ、参った。毎度体育の時にここにさぼりに来るのだが今日も体育があってよかったと心底ホッとする。流石に他の科目でもさぼっていたら注意されるだろうし。
 ボールペンをペン立てに戻しさぁ寝るぞと思って振り返れば、普段と違う景色にげっそりとしてしまう。嘘だろう窓側のベッドのカーテンが閉じている。別に私の場所という訳でもないのだがどうにも畜生と思ってしまうのは仕方がないだろう。いったい誰だと今しがた書いた利用簿を見たがしかし今日の日付のものは一つもない。中を覗くほど礼儀知らずではないのでその下から見える靴だけで男子とだけ判断して大人しくその隣のベッドに腰掛ける。ポイポイと靴を脱いで足をシーツに滑らせれば嫌に冷たく感じてしまってため息が漏れた。寝苦しくなるだろうからとセーラーのリボンを解いて枕元に放って寝転がればぐわりと頭が揺れた。保健室に入ってから妙にだるさに拍車がかかった様に思うのはここの持つ独特の匂いや空気のせいなのだろうか。
 うーんと眉を寄せて足で布団を手繰り寄せる。布団の中でスカートがとんでもないことになったのが感覚で分かったがもうそんなことすらどうでもいいくらいに寒くて体が重かった。
「(今日は酷いなぁ)」
 私が堂々と体育をさぼるには理由がある。
 小学校の時から、体育の度に体が重くてだるくなる。私の運動音痴から来るのかはたまたとことん運がないのかは謎だが体育の度に大なり小なり怪我をする。跳び箱をすればきちんと積んであったそれが崩れて背中を強打し、縄跳びをすれば蚯蚓腫れがあちこちに出現してひどいときは切り傷ができる。球技をすれば頭部に向かって吸い込まれる様に顔面や頭を強打する。ならばと見学をすれば流れ弾が的確に私に集中砲火したり、ラケットが生徒の手からすっぽ抜けて鼻を折ったときはむしろ相手の方が被害者だった。そうして体育の時間は私のみ自習となったときには私よりもクラスメイトの方がホッとしていたのを今でも覚えている。中学に上がる時は先生方もそんな私の不運を知らずにいるので参加させられたが一か月もしないうちにどうか参加しないでくれと逆に頭を下げられる始末。それでいいのか教師。
 そして高校に上がった時にも全く同じ過程を経て今がある、もう一度言うがそれでいいのか教師。因みに成績は五段階評価の3にしかならないという、畜生私だって本当はやればできる子なんだぞ、運動神経だっていい……はず。
そんなどうしようもないことを悶々と考えているうちに瞼が重くなってしまい外で体育をしているクラスメイトであろう声を聞きながら眠りに落ちていった。


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投稿日:2017/0926
  更新日:2017/0926