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 レイヴンクロウは変わり者の集まりだ。そう言われる理由が分かるほどに生徒一人一人が個性に溢れていて知識欲で一杯だ。専門職が多いというか、これなら専門はこの人、というようにある道を究めていく生徒が多い。だからと言って寮生全員がそうなっていく訳でも無く、中には特に好きな教科もなく、悪目立ちしない程度に授業をこなしているような生徒だっている……いまのところ、そんな生徒は私以外には見つけられていないのだが。変わったことが大好きなレイヴンクロウ生でもあまりに度がすぎているとルーニーとまで呼ばれるような生徒になると途端につまはじきにされてしまうのだ。特に他の寮はその線引きがレインブンクローと比べるとずっと簡単に超えられてしまうのだから堪ったものではない、レイヴンクロウでよかったと何度思ったことか。そのラインを見極めて綱渡りをしているのが私。そしてその綱に気が付かず、ぽーんと空中に片足を踏み出したのが恐らく彼だろう。
「あいつ何やってるんだ」
「ほっとけよ」
 中庭の奥まったところの茂みでなにやらがさごそとしている人影を見つけた数名が、こそこそと囁き合っているのをボンヤリと聞きながら、頬杖をついていた腕を伸ばす。渡り廊下の小窓から偶然彼を見つけていた私は、なんとなく葉っぱがついた頭や泥だらけのローブが気になってしまって景色を見るふりをしながら彼を観察していた。
ニュート・スキャマンダー。底抜けに明るく、いつもにこにことしている生徒のおおいハッフルパフのルーニー。話しかけると逃げていき、授業で当てられても挙動不審になることが多い。人見知りなんだろうな、なんて思っていたらいつの間にかルーニー認定されており今ではすっかり一人でいるようだ。いっそ彼のようにありのままで過ごした方が楽なのだろうかなんて思うことがある。もしかしたら彼は望んでああして一人でいるのではないのかもしれないけれど、興味のない授業の話を食事中にまで熱心に語られて、冷めたポトフを啜る羽目になるよりはずっとずっとよく見えてしまった。べつに、レイヴンクロウの生徒が嫌いな訳ではない。ただ、私にとってはどこか息苦しいだけで。
 どこか、なんて濁してはいるが原因だって分かりきっている。私が素で彼らに接していないからだ。ある程度の外面なら誰だって持っているだろうが、ホグワーツに来てからの私は常に猫を被って過ごしている。談話室に入る時の合言葉も、同級生はみんな楽しそうだなんて喜んでいたがとんでもない、なんて面倒臭いんだと思ったし偶に入れない時もある。その時は誰かが来るのを待つのみである。まだ一晩中締め出しを喰らったことは幸いにもない。
 組み分けされた寮生はそうあるべきだ、というこの風潮がそもそもあまり好きではない。べつに臆病なグリフィンドールがいたっていいし、血に煩くないスリザリンがいたって……これはいないなきっと。
 馬鹿なレイヴンクロウがいても、あまり笑わないハッフルパフがいても、別にいいのにね。更に茂みの中に頭を突っ込んでしまって靴しか見えなくなってしまったスキャマンダーに心の中でこっそりと話しかけてから、薬草学談義で盛り上がっているであろう食堂のテーブルに戻ろうと重たい体を動かした。



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投稿日:2019/1215
  更新日:2019/1215