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「あの娘、寄せるようだな」
「寄せる?」
ニャンコ先生に今日のことをいえば目を細めてそんなことをいう。どういうことかと無言で促せば、どうやら妖が周りに集まりやすいらしい。妖力は不思議と全くないにも関わらず、妙にうまそうだったと笑う先生に少しゾッとした。ということはなんだ、保健室でのあれは彼女は喰われかかっていたということなのか。
しかし普段からそうという訳ではないのは俺が知っている。前に祭りであった時などそんな様子微塵もなかったし、あんな風に常時なっていればそれこそもっと早くに目に付いていたはずだ。
そう指摘すれば普段はとある神に気にいられているために守られているのだそうだ。なんだそれどういうことだ。
「じゃあなんで」
「そればかりは神の気まぐれとしかいえんだろうな」
なんだそれはと思ったがそれによって彼女が守られているというのも確かなのだろうから文句など言えないだろう。レイコのように変な奴もいるもんだなと酒を押入れから持ち出してきた先生の丸い背中をボンヤリと見つめながら彼女が一瞬見せた暗い顔を思い出す。結局名前しか知ることが出来なかったから彼女をなまえ、としか呼べないのだが少し抵抗があって呼べないままだ。
そんな風に、見えないにしてもああやって集まってしまったらきっと苦労をするだろうしなによりわけの分からない恐怖が付きまとうだろう。実際寝起きなのにも関わらず顔色は悪かったのを思い出して頭をふる。ついでに目に悪い首元や近くで見てしまった顔などを思い出してしまったからだ。
彼女から妖をはぎ終わって、ふと近くにあった顔を凝視して思ったのだ。睫毛が長く薄い唇が呼吸を紡いでいる様を見てやけに生きているということを実感させられて、突然開いた瞼に、その瞳の色までじっくり見てから我に返って驚いてしまって。彼女が変わり者なおかげかそうかは分からないが正直あんなに落ち着かれてしかもなかったことのようにされてしまったのもだから唖然としてしまった。普通女の子の顔をあんな距離で覗いていただなんて、叫ばれていてもおかしくなかったのに。俺が可笑しいだろと怒鳴りたくなってしまったがそれ以上に悪阻のネタを引っ張られていたことに頭がいってしまい結局は終始彼女のペースで終わって謝れてすらいないことに今になって気が付いた。
「それにお前についていた瘴気もあやつが持っていってくれたようだし、便利なことだ」
「は!?」
一瞬遅れて声を荒げれば先生はふざけて掃除機女と妙なあだ名で彼女を呼びはじめたのでそれを拳で止める。確認の為に問えば、俺が今朝がた受けたそれを彼女が近くに来てしまったが為にすべて彼女に移ってしまったそうだ。というか先生見ていたのなら出てくればよかったのに、そしてそれを止めてくれればよかったのにという思いを込めてもう一度殴っておいた。
そういえば妙に黒い靄のようなものがあったがもしかしなくてもあれか……!とんでもないところでなまえという少女に自らが負うべき妖のそれを押し付けてしまっていたということを知り、頭が真っ白になるような気分にさせられた。
「それにしても、お前は趣味が悪いなぁ、レイコそっくりだ」
「何言ってるんだよ先生」
もう一度殴れば、流石に頭に来たのか応戦してきたので塔子さんがご飯だと声をかけてくるまで小さな喧嘩を勃発させてしまった。
さて、明日から俺はどうしたらよいのだろうか。
2015.1.16
投稿日:2017/0926
更新日:2017/0926