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 有難い助言ではあったがしかし、カカシさんが私の事を覚えてくれている可能性が相当低いということを遠回しにテンゾウさんに告げてお断りした。どうやら現在入院しているらしく病室まで教えていただいたが行くことはないだろう。その時のテンゾウさんの顔はなんとも形容しがたいものだったが何を思っていたのかはよくわからなかった。面があっても無くても忍から表情の変化で何かを図りとるのは難しい。
しかし、だ。まさか向こうからこちらに会いに来てくれようとは思わないだろう。
「酷いなあ、帰ってきたなら会いに来てくれればいいのに」
「すみません」
 だってどう考えてみたってこの人が私を覚えてくれているとは思わなかったのだ。しかもテンゾウさんと同じく私を私と認識している。カカシさんやテンゾウさんと違って暗部内でもそこまで面を外した覚えもないのにも関わらずである。それに二人そろって暗部ではそれはもう名の知れたお人なのだ。カカシさんなんてビンゴブックにまで乗るほど他里から警戒されている。そんな人がどうして、と思って顔を見るも、面が取れたとはいえ元々顔のほどんどを隠しているカカシさん表情など見えるはずもなく。見えたとしても読み取れたかは分からないが。
 随分と纏う空気が柔らかくなったが気だるげに見えて一切油断のないその佇まいははたけカカシその人だ。といってもそこまで関わった記憶もないのでこの人の人となりをそこまで知っている訳ではないのだが。
「え、ねえ聞いてる?」
「え?」
「ぼうっとしちゃって……そう言えば帰ってきたの今日だったんだっけ?」
「はい」
「だからご飯でも行かない?」
 会話が噛み合っていないような気がすると思ったがもしかしたらカカシさんのいう私がぼうっとしていた時に会話が変わっていたのかもしれない。にこにこと笑うカカシさんになぜご飯にさそわれたのかを考える。もしや暗号?と考えるも特にヒットする単語はない。しかしカカシさんが理由もなく私をご飯に誘うメリットがない。という事は潜入捜査か?これから向かう先に敵でもいるのだろうか。
「こんなに長期任務になると思わなかったし……しかも大名に求婚されてたみたいだし何事かと思ったよね」
「はあ」
「なまえが任務に出ちゃう前に俺が言ったこともいまいち理解してくれてないみたいだし?流石に俺も凹むよ」
 しまった、任務前にもしかして助言でもいただいていたのかもしれない。それを理解せずに挙句大名に囲われそうになっていたのを誰かから聞いたらしい。は、恥ずかしい。暗部の先輩、しかも皆が憧れるカカシさんの顔に泥を塗るような真似を……。
「すみません」
「いやそこまで反省されると複雑なんだけど」
 何か考える様に視線を空へ向けたあと、俺も歳だしさあとぼやくカカシさん。歳と言ってもまだまだ現役だろうに。
「上役にも嫁さんとれってせっつかれるし、だからこうして呼び戻せたわけだけど当の本人がねえ」
「カカシさん結婚なさったんですね、おめでとうございます」
「怒るよ」
「え」
 なんでですかと茫然としてしまったがテンゾウさんの様にしょうがないなあと言わんばかりの視線にデジャブを感じながらまあいいよと背を向けるカカシさんを見送れば凄い勢いで戻ってきたカカシさんは「飯屋いくよ」とずるずると私を引きずっていった。


2016.12.1


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投稿日:2017/0926
  更新日:2017/0926