2

「相変わらず仲いいね」
「え、どこが?」
 イズミがのほほんとそう笑っているのをみて、未だに鳥肌が収まらない私は真顔でそう返してしまう。あれだけ殺気当てられた私としては冗談でも笑えない。いったいイズミはなにをみてそう思ったのか。
「今のは……」
「あ、イタチは初めて会うの?なまえに剣術を教えてくれてるライドウさん」
「……目上の人に対してあの態度はないんじゃないか」
 イズミが説明してくれた言葉に何も返すことなく、私の顔をジッと凝視してそう告げるイタチはからん、と団子の刺さっていない串を皿に寝かせた。今の時間ですべて平らげたらしい。どんな胃袋してんだイタチ。
「しかも教えを乞うている身でありながらまるで敬う気持ちがない」
 なんでイタチにそんなことを言われなければならないのか。体をきちんと正面に戻してイタチを観察するように見れば無表情ながらも怒っているのか不機嫌なのか、言葉尻が険しい。私は私なりにライドウさんに感謝しているし、尊敬だってしている。そうじゃなきゃあんなに頼み込まなかったし、日々の鍛錬時間だってライドウさんに合わせたりしない。上忍で忙しいライドウさんに合わせるのは当たり前だがあの人の当たる任務内容のせいなのか毎回時間が違う。昼間な事もあれば夜中、深夜を過ぎた時間の時もあるし明け方の時もある。そんなに時間が無い中私に時間を割いてくれていることだって、分かっているのだ。それをありがたいと思わないほど私は馬鹿じゃないし恩知らずでもない。
 ライドウさんは多分、真っすぐにそういう感情をぶつけられることを非常に嫌う。だからこそ最初の手合わせと銘打った半殺しの時に礼を言う私にゴミでも見るような目を向けたんだと思う。今思い出しても腹が立つ。腹が立つしムカつくけれど、教えてくれているライドウさんに報いるためには彼を超えることが私にできる唯一だと思っている。ライドウさんもそれを分かっているからこそ、私の「ぶっ飛ばす」という言葉に笑うのだ。
「イタチにとやかく言われる筋合いはない、関係ないでしょ」
 頭にきてそう突き放すように告げれば無表情であった顔が少し歪む。大体、イタチなんて表面だけ適当に繕っているだけで内心などイタチのいう敬う気持ちなんて微塵も持ち合わせてなどいない癖に。それになんでこうも毎度の様に私に口うるさく言ってくるんだろう。イズミと会う時は決まってと言っても過言でもないくらいに毎度イタチにも会うが、そのたびにぐちぐちぐちぐちと。私の事が嫌いなのであれば気配で避けられるだろうになんでそれをしないんだこいつ。いや、十中八九イズミと私が絡むのが気に喰わないんだろう。私だってイズミとイタチが仲良さそうにしていたら腹が立つ。でもだからって態々邪魔もしないしイズミの交友関係に口を出すのもお門違いだと思っている。それをこいつはずけずけと、それがさも正しいと言わんばかりな態度だ。それでもこれ以上イズミを困らせては可哀想だと、大きく息を吐いて口を開く。
「私とライドウさんは」
「煩い、だいたいお前は少しでも……」
 私の話すら聞く気がないその態度に、絶句である。流石のイズミも驚いたのかぎょっとしたように目を見開いている。しかし私も限界だった。
「うるさいだ!?だいったい、本当にあんたには関係ないでしょ!?ライドウさんが凄い人だって一番私が分かって」
「凄い?お前の語彙力には毎度幻滅させられるな、それに仮にも女だろうなまえは、それがあのやり取りはなんだ」
「イタチに女扱いとか吐き気するんだけど!あんたにそんなこと言われる筋合いはない!」
「さっきからなんだ関係ないだの筋合いはないだのと、俺は世間一般の正論を言っているんだ、認めたらどうだ自分の非を」
「だからってあんたに迷惑かけてるわけでもないでしょ!あんたも私を見てそんなに不愉快ならもう関わんないでよ!」
「見当違いも甚だしいななまえ、不愉快なんて誰が言った、寧ろ先ほどからあの下品な男の名ばかり呼んで不愉快だ」
「ああ!?下品だ!?確かに私はお淑やかとは程遠いいだろうけどあんたなんか気取ってるだけのムッツリ野郎なくせして!」
「誰がムッツリだ、俺は場所を弁えているだけだ、それにあの人はお前に好意を持っていないのにも関わらずあんな事を言ったんだぞ可笑しいだろ」
「ライドウさん馬鹿にすんな!」
「してないが軽蔑してるだけだ」
「まじでボコる表出ろ!!」
 また始まったよ、というイズミの困ったような楽しそうな声はヒートアップした私には聞こえてこなかった。


2016.12.4


 - return - ×

投稿日:2017/0926
  更新日:2017/0926