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冷え性は一般的に女性に多い症状である。手足は勿論、腰、下半身、いや全身を寒さに襲われる。誰もが「温かい」と感じていたって私は「寒い」と感じるし、誰もが「寒い」と感じている時私は「凍え死ぬ」と感じている。医者からの診断では平均値よりも大きく下回って熱を作り出す筋肉が少ないと診断された。だからと言って非力という訳ではない。これでも忍として働けているのだから世間一般から言えば筋力はある方だ。しかしどうしてだか私の体は熱エネルギーの生産を極端に行わない。そのせいで慢性的な冷え性に悩まされている。
「火遁……火遁が使えないことが恨めしい……」
「またそれか」
どうしてよりにもよって私は水遁しかつかえないのか、神様はそんなに私が嫌いなんだろうか。
天気予報で温かい一日になるでしょう、なんて言っていたのにもかかわらず奥歯が噛み合わないほどにガタガタと音をたて、内臓のどれかが痙攣しているのを感じる。膝がふる、ふる、と不定期に揺れているせいで座っていても体全体がジッとしてくれない。マフラーに顔を埋めてもあまりその感覚を紛らわせることができないのがつらい。アカデミー時代から縁のある奈良シカマルは私のそんな様子もすっかり見慣れているのか一瞥をくれるだけで特にそれ以上言及はしてこなかった。冷たい奴である、冷え性の私にこの仕打ちとはこいつは鬼かもしれない。
いくらポケットの中で握っていても一向に感覚を取り戻さない指先は薄い手袋に覆われている。あまり厚い手袋では印が組めないのだ、それに気が付いた時忍の道を諦めようか真剣に三日ほど悩んだが今ではこうして中忍にまでなったのだから人生わからない。火遁といえばうちは一族、そんなうちは一族が一族もろとも一夜にして滅びてしまい、唯一の生き残りであったサスケが里を抜けたことだって本当に想像などできなかった。お陰で身近に火遁を使える人物がいなくなったのだから死活問題だ。それをナルトに言えば「サスケはお前のカイロか!」と爆笑を貰った。こちとら真剣に絶望していたというのに酷い奴だ。「なまえはサスケのことそのままカイロだと思ってろってばよ」なんてちょっと涙目でお願いされてしまったけれど、言われなくてもその認識に変化はない。
ガタガタと震えたって、熱なんぞ発生しないであろうに私の体は不便である。声が震えるのも情けなくてあまり好きじゃない。それでもこの体と一生付き合っていくしかないのだから妥協していくしかないのだが。
「アスマ先生来ないね」
「まあ元々将棋するだけだしな」
シカマルの家にお邪魔してこうして火遁を使えるアスマ先生を待って早数時間、日の当たる縁側で待たせてもらっているがそれでも寒い。シカマルなんぞ相当の薄着だ、見ているだけで寒い。昔からよくここにはお邪魔になっているお陰でシカマルのお母さんも私の体質を分かってくれているのですぐに熱いお茶を入れてくれるのが本当に嬉しい。しかも売っている茶葉に色々と体をあっためる効果のあるものを入れてくれているらしく頭が上がらない。奈良家の薬関係の物なのでお金を払うべきかとも思って提案したのだが、素敵な笑顔でお断りされた。曰く「シカマルがお世話になっているから」だとか。ただの友人でしかも私よりもシカマルの方が忍としては優秀であるためその言葉には頷きかねるのだがなんといっても向こうが折れる気配がなかったのでありがたく頂戴している。だが流石に持ち出しとなると色々と面倒らしいので分けてはあげられないと言われ、代わりに奈良家に来れば出してあげられるからいつでもおいでと言ってもらえている。奈良家優しすぎである。
「今日はいつになく寒そうだな」
「さ、むい」
「声がったがたじゃねーか」
ほれ、と隣に座っていたシカマルが手を差し出してきたのでのっそりとポケットから手を取り出して差し出す。両手で挟むように私の右手を掴んだシカマルの体温がじわ、じわと薄い手袋越しにすぐに伝播される。あ、あったかい……!!!
「つめってーな相変わらず」
指先を握りこみ、余った手で手の甲を覆われる。それでもシカマルの手は十分に余白があり、手の大きさの違いを浮き彫りにする。指先からお湯につかっているような温かさを感じ、ほっと息をついた。
この後やってきたアスマ先生はいつもの光景に笑いながらも薪と熱風を私にくれた。アスマ先生ホント大好き。
投稿日:2017/0926
更新日:2017/0926