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「最近、視線を感じるんです」「ッブ!!ってめ、またかよ!!」
部活終わりにマジバに一人で向かって、一人で席についたはずだった。それなのにいつも通りというか当たり前の様に正面に座っていた黒子に盛大に驚き、危うく喉を詰まらせるところだった。そんな俺に構うことなく飄々とその場にいる黒子に罵声を浴びせながらも、しかしなんとなくだがその声は飄々とはしていないような気がして黒子の言葉を思い出す。
顔を見れば確かにいつもと変わらず無表情なのだが、心なしか眉が下がっている様にも見え、手に持ったシェークのストローは噛んだのかいびつに歪んでいた。しまいには心底困ったというようなため息をわざとらしく吐かれてしまい、そんな見慣れない黒子に何があったのか気になってしまっていた。そして考える、こいつの言ったことの不自然さに。
「視線だぁ?」
影の薄い黒子に、誰かが視線を向けている?なんだそれ意味が分からない。しかし黒子はそういって真剣な顔で頷く。と言ってもこいつの表情がわかる俺ではないから、なんとなくとしか言えないのだが。それでもハッキリと、そんな俺でもわかるくらいに黒子の表情が変わったのだ。余りの変わり具合に驚愕してしまい、つまんでいたポテトをつぶしてしまった。
視線を彷徨わせ、頬が微かに赤らんでいる。元来色が白いせいか薄らと染まった頬のはずが十分に目に付く変化となっている。困っているというよりは、むしろ喜んでいる。あえて言おう、全身でそれを表現する黒子が気色悪い。
そしてふと思い出す、幼いころに兄弟分のタツヤが似たような顔をしていた時期があったと。あいつもこうやって顔を赤らめて、もじもじしてごちょごちょとなにか言って、あぁ、あれも気持ち悪かったなと思い出す。あの時の原因は、そうだ。
「お前そいつのこと好きなのか?」
あの時のタツヤはそれはもう目も当てられなかった。しかも確かそのまま初恋を拗らせたまま現在に至っていることを思い出してげんなりする。心から残念な奴だと思う、本当に。
でもだからって黒子がそうだなんて思ってもいないまま、なんとなしに口にしただけだった。それなのにどういうことだ、なんだおいそのどうしてわかったんだという顔は。黒子お前の売りはポーカーフェイスなんじゃないのかいいのかそれで。黒子の好きな奴か、気にならないといえばウソだがなんだこのめんどくさそうな空気は。
「で、どんな奴なんだよ」
「聞いてくれますか、流石僕の光です」
おいやめてくれ、普通のテンションで光だの影だのそんな会話するのは流石に恥ずかしいだろう。こんなことで光だのなんだの言われたら止めたくなるから本当にやめてくれ。机に頬杖をついて空を見つめる黒子の顔は、さらに気持ち悪いことになっていた、帰りたい。
「初めはきょろきょろと何か探しているんだと思ったんです、話しかけると驚かせてしまいそうでそれは躊躇われて……それで僕も様子が気になってしばらく見ていたんです。そんな日がずっと続いて、ある日ふとそんな彼女の眼に映りたくなって、そうですね、出来心というよりは確信犯でした、だって僕だけこんなに彼女のことを見ているのに彼女はちっとも僕のことを見ないんですもん。そして初めて彼女と目があった時に、彼女、笑いかけてくれたんですよ、もうその時の僕の衝撃と言ったら言葉では表現できないほどでこんなに」
「怖いよお前」
一気に話し過ぎだし一切瞬きもせずに声は淡々と、顔は興奮気味な様は異様だった。というかそれはお前が見るからそいつがきょろきょろしてたんじゃないのか、しかし悲しいかな、そんなこと言ったら自分がどうなるのか簡単に予測できてしまいグッと黙る。未だにベラベラ話している黒子に対して段々とめんどくさいという思いが大きくなってきてしまい、タツヤがこの言葉を言えば黙ってくれたなと思い出したそれを口にしてしまっていた。
「あれだ、そいつもお前の事好きなんじゃねーの」
「そういってくれますか火神君!!」
実は僕もそうなんじゃないかと思っていまして、とまたせわしなく話始めた黒子に自分が選択ミスをしたことに気が付くが時すでに遅し。興奮しきった様子で黒子がシェイク片手に身を乗り出して熱弁を始めていた。
「僕ももしかしたらそうなんじゃないかと思っていたんですよでも彼女は僕と正反対で活発的でクラスでも人気みたいで、え、ああクラスは降旗君のクラスですそれでこの前も部活前にたまたま会えたんですそしたらまた僕に気が付いてくれたみたいでニッコリ笑ってくれたんですあれはきっと頑張ってくれと言ってくれていたんだと思います彼女の部活はテニス部ですよ太陽の下で爛々と活動している彼女はそれはもう輝いて見えて外の部活動をしているのにあまり日焼けをしない体質なのか肌が白くてでも髪は日に焼けて周りの人よりも茶色くてまるで小麦のような色をしていて、違いますよ委員会の時に窓から見えるんですそれと部活の休憩に体育館の傍の水道を使っているんですラケット片手にこちらにかけてくる姿なんて見つけた日にはどんな地獄のメニューの日だろうが僕は耐えられました倒れましたけど、この前は購買で見かけましてその時に少し困っているようだったのですが緊張してしまって話しかけられずせめてもと思ってこっそり彼女がいつも飲んでいる野菜生活を買って彼女の机に、は?何言ってるんですか誰がストーカーですかはったおしますよ」
真剣にこいつとつるむのを考え直した方がいいかと、そんな風に考え込んでしまいたかったがそれ以上に黒子の話が気持ち悪、ちがうそうじゃない間違えただからそんな顔で睨むな普通に怖いからやめろ黒子。
そうじゃなくて、いや勿論黒子の異常なほどの興奮具合やストーカー紛いな行動もいっそ恐ろしかったがそれ以上に驚愕したのは、ところどころ知った話があったからだ。あれ、そういえばあいつって降旗のクラスだったような、あれ、そういやタツヤの時まさにこんな感じの話をしなかったっけ。テニス部だし、野菜生活の紫が好きでよくパックを買っているし、この前机に置いてあったとおかしいことを言っていた。
あれ、俺そういえばあいつに黒子の話をした気がする。以上に影の薄い奴がいてだったら見つけたいだとかそんなこと言ってなかったか、初めて見つけたと言って喜んでいた日があったよなそういえば。あれれ、もしかしなくても俺のせいじゃないかこれ。
「お、おい黒子…まさかとも思うがお前の言ってるやつって、なまえのことじゃ」
「どうして君が呼び捨てで名前を呼んでるんですか!?」
僕なんてまだ話しかけたことすらないのに!と叫ぶ黒子に俺は泣きそうになった。黒子それ俺の従妹なんだだからそんな怖い顔するな夢に出そうだ。しかしそれ以上のことは言えそうになかった、俺のせいだなんて言ってみろ、殺されるぞ。
投稿日:2017/0923
更新日:2017/0923