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雨だ、雨のせいで部活ができない。廊下でトレーニングをしようと部長が場所を確保しに行ったのだが他の部も早々に場所を使ってしまっていて、押し負けてしまったそうだ。あの人弱いからなぁと失礼なことを考えながらもなくなってしまった部活はしょうがない。荷物を教室に置きっぱなしにして今日の部活をどうするのか確認し、笑顔で泣きながら「すまん場所やっぱり取れなかった!」と言い放った部長の話を聞いて、教室に帰ってくる。こんな時間から帰るなんて久しぶりだなぁと自分の席に近づきながら思う。そういやたいちゃんも今日体育館使えないって言ってた気がする。なんでかは忘れたけど、だったら彼の教室に行ってみようと鞄を手に持った。
「いやだから」
「あ、よかった、たいちゃんまだ帰って無かった」
「「「たいちゃん!?」」」
教室を覗いて目立つ赤い髪の彼を見つけ、思わず呼びかけてしまえば大げさに驚かれてしまいこちらも驚いてしまう。誰かと話していると思ったらどうやら一年のバスケ部だろうか。
「あれ降旗君もバスケ部だったの?」
「え、あ、え、なまえちゃん!?」
同じクラスの、同じ班である降旗君がその中にいてあれと思う。そういえばお互い部活の話はしたことがなかったかもしれないと今更ながらに思うが、噂の全校朝会の時は生憎遅刻をしていたので知っていると思われていたのかもしれない。
「そ、それよりも気になってるんだけど、『たいちゃん』っていうのは……」
坊主頭の人が恐る恐るといった雰囲気でそんなことを問いかけてくる。え、と思いつつ奥で両手で顔を覆っているたいちゃんを指させば途端降旗君が噴き出した。たいちゃんったら耳赤くなってる、かわいい。
「た、たいちゃん……ぐふふっ」
「そんななりで火神お、おまえ、たいちゃ……ぶふ」
「それ以上にお前をそんな風に呼ぶこんな可愛い子がいるなんて俺聞いてない」
しかしこんな風に集まっているということはもしかしたら部でなにかあるのかもしれない。邪魔だっただろうかと聞けば大丈夫だよと降旗君が笑顔で否定してくれた、ほんとこの人見た目通り優しいんだから。そのまま降旗君とほのぼのと宿題のことや今日の部活がお互いなくなった経緯を話す、降旗君は私がテニス部だと知っていてくれたらしい。まぁ鞄みればわかるよねと言えばコートで打っているところを見たことがあるんだとか、やだ恥ずかしい。
「(おいたいちゃんあの子はお前のなんなんだ!)」
「(たいちゃんいうな!)」
「(彼女だなんて認めないぞ裏切り者!この帰国子女め!)」
「(いや帰国子女関係ねぇよってなんだよこれ昨日とおんなじパターン……)」
「(ってか黒子どうしたんだ真っ先にからかいそうなのに黙ったままだよな)」
「(やべぇ福田、黒子が息してねぇ)」
「(は!?おいどうした黒子……ってなんか怖いぞお前目が血走ってるぞ)」
「(っは!そうだったやばいなまえ逃げろ!いや今は降旗か!降旗が殺される!!)」
「「(はぁ!?)」」
体育館に業者が来ているらしい。なんでも体育館の窓ガラスの掃除をこの時間から始めるらしく、部活をしている時になにかあっては危ないからと使用を止められたそうだ。なるほどそうだったのか、雨の日に業者も大変だねと言えばどうやら天井の点検も兼ねているらしい。新設校なのにそんなことを頻繁にするんだなぁと感慨を受けてしまう。
「……あの」
「(黒子が動いた!?)」
「あ、くろこくん」
「あれなまえちゃん黒子のこと知ってるの?」
降旗君にそういわれてあ、と思ったがもう遅い。たいちゃんに聞いて一方的に知っているだけなので不快に思うかもしれないと懸念し、たいちゃんに聞いて、と降旗君に告げる。降旗君は結局火神とどういう関係?と見当違いな質問をくれたがそれに答えれば予想以上に驚かれてしまった。いや似てないだろうけどそこまで驚かれるほどでもないと思うのだが。
因みに同じ家に住んでいるのだがこれはたいちゃんの希望でだれにも言っていない。なんでもどこかからか、海外にいるたっちゃんの耳に入ることが恐ろしいらしい。意味が分からない。というかすでにたいちゃんのお父さんがたっちゃんには多分教えてると思う。
「(な、なぁ黒子、おい……ふ、降旗はなまえとおなじクラスなだけで)」
「(火神君……)」
「(な、なんだよ)」
「(彼女、ぼ、ぼくの名前を知っていてくれました!)」
「(ダメだこいつ都合よく俺から聞いたって部分だけ聞いてねぇ)」
たっちゃん元気かなぁ、最後にたっちゃんと喧嘩別れしちゃったからあれ以来結局全く連絡とってないからなぁ。そんな関係のないことを考えながらも黒子君にごめんねと言っておく、ついでに彼が見つけにくいといったたいちゃんに対抗心を燃やしてしまって私の中で「黒子君を探せ!」を開催してしまった事も内心でだけ謝っておく。
「(ほ、ほら笑いかけて、また笑いかけてくれ)」
「(おおおお落ち着け黒子あれはいや確かに笑ったけど基本的にあいつにこにこしてっからああダメだやっぱ聞いてねぇ)」
「(な、なんかよくわかんないけど黒子が怖いのはわかるぞ俺)」
「(お、おう……あいつってあんなキャラだっけ、あとそんな黒子に気が付かない降旗馬鹿じゃないのか)」
そう言えばこんなに近くで黒子君を見るの初めてかもしれない、意外に背が高いんだな。いつも比較対象がたいちゃんだったからか近くで見れば断然こちらが見上げる側なのだと知る。それに細身だとかも思っていたがそんなこともなかった、筋肉がしっかりついているスポーツマンらしい体系だ。この中ではまぁ、細い方だと思うが。
「(くくくくろこ落ち着けお前はいったんクールダウンしろおい聞いてんのか黒子!)」
「(火神もおちつけよ大丈夫かよお前、お前の顔がクールダウンっていうか真っ青)」
「(クールダウンの使い方間違ってね?)」
なんというか物静かで真面目そうな人だ、うちのクラスの園田くんに似てる。でもバスケ部っていうよりは鍛えている体格を見なければ文系の部活にいそうだ、園田くん吹奏楽部だし。バスケかー、たいちゃんがストリートでやってるのは見てるけど最近はそれくらいしか見てないからなぁ。たいちゃん曰く体育のバスケはバスケじゃないらしいしなぁ。黒子君のバスケは凄いらしいと聞いているので見てみたいな、機会があれば部活でも覗いてみようかな、あ、邪魔かな。というより私も部活あるし難しいか。
「なまえさん」
「あ、はい」
「好きです付き合って下さい」
「……はい?」
「え」
「は!?」
「く、黒子お前!?」
いえ、付き合いましょうと真剣な眼差しで真っすぐに言われてしまい絶句したが、意味を理解したとたん顔が赤くなってしまうのを感じて、それ以上に持っていた印象とはだいぶ違う力強い声と視線に胸が焦がれてしまう音がした。
「間違えましたこの後一緒にマジバいきませんか」
「お、おまえ微塵も言いたいことかすってねぇよどうすんだよなまえ固まっちまったぞ!!」
「僕の言葉で顔を赤らめてくれているというんですか可愛い結婚してください」
「もう俺なにも言わねぇよ」
2014.11.1
投稿日:2017/0923
更新日:2017/0923