センブリッジ

毛利親子がポアロに来た際にそれとなく話を振れば面白いくらいに情報をくれた。勿論あの察しの良すぎる少年のいない時を見計らっての事だったので変に勘ぐられることも無い。蘭さんが中学二年の時からの付き合いだと言うのには驚いたが、それだけ長い付き合いであるならあのメールのやり取りも頷ける(因みにいぶきと自分が別れたのは五年前の春だ)。毛利探偵曰く、名探偵と評される前からの付き合いなので依頼料も受け取りたくないんだとか。あの律儀ないぶきがそれをよしとしないのは目に浮かぶように分かるがこの毛利探偵にそうまで言わせるほどに親しくなっているあたり舌をまくものがある。蘭さん曰く、歳上の姉のような存在でけれど危なっかしくて目が離せないんだとか。幼馴染みである工藤君もいぶきに懐いていたらしい。
出会い話もなかなかに強烈だった。蘭さんが部活帰りでそれなりに暗い道を帰っていた時、明らかに前方に怪しい男の影があったそうだ。不審に思って暫く様子を見ていたそうなのだがどうにもその男がその更に前方を歩いている女性の後をつけているのが分かったらしく、ストーカーではないかと思ったらしい。しかし自分の父親の職業柄、訳があって後をつけている可能性もあるかもしれないという考えもあり、自分も後をつけていった。女子中学生が危ないことをと一言苦言を漏らせば「新一にも言われました」なんて惚気られた。
だが必要以上の盗撮、挙句には階段で下から撮影していたのを見て、遂に我慢ならずその場で成敗したらしい。しかしここからが頭のいたくなる話なのだが、彼女にも声をかけて蘭さんが事情を話した時にストーカー男といぶきがお付き合いしていた仲だったという事が判明したそうだ。ようはいぶきは付き合っていた男性からストーカーされ盗撮されていたと。どんなプレイだ。
それからというもの、明らかに悪質な男に付きまとわれているというのに微塵も危機感のないいぶきに蘭さんや噂の工藤君、果てには毛利探偵までがあれこれと手を焼いてくれたらしい。いぶきが自分からヘルプを出してくれればいいもののそれ以前に気がついていないのだから余計に加護欲が湧いたと言った所だ。


「でもそんなに事件に巻き込まれるだなんて毛利先生も気が気じゃないでしょう?」


「まーな、でもいぶきちゃんだからなぁ」


「宜しければ僕もお手伝いしましょうか?ほら、ストーカーなどの依頼なら慣れてますし」


「お前がぁ?」


「流石に先生だと恋人のふりなどは難しいでしょう?」


「あっ…」


そこでこちらの思惑通り、蘭さんが頬を染めて反応をくれた。興奮気味に父親に沖矢昴とのことを話し始めるのを心を無にして聴く。ふりなんかしなくても本当に恋人ができればいいと、まあそういうことだ。


「昴さんだったら安心だよ!優しいし、美男美女でお似合いだし!」


「まあいぶきちゃんがいいならいいんだけどよ、聞く限りじゃあ居候なんだろ?住所不定の無職じゃねーか、またヒモ男が出来んのかよ」


「もう!だから昴さんは大学院生だってば!」


またという単語に激しく突っ込みたかったが耐え、そういえば、と以前ここで話していたことを蒸し返す。「この前言っていた贈り物も彼へでしたね」、と。するとそうそう!と可愛らしく手を叩いて蘭さんは衝撃の事実を教えてくれた。


「今日なんですよ!いぶきさんが昴さんに会いに行くの!」


だからいなかったのかコナン君。



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投稿日:2017/1005
  更新日:2017/1005