グレモリー


勝呂君からメールが入っていたのに気が付いてすぐに内容を確認すればメールはつい先ほど届いたもののようで受信時刻は今からそう変わらない時間を表示していた。なんだろうと目を走らせながら、内容と共に添付されている写真を見てぎょっとしてしまう。そこに映っているのは櫛谷さんだろう。しかしその腰辺りからは華美な装飾が施された布が纏わりつくように巻いてあり、そしてその装飾の所々に目玉のようなものを見つけ、どっと疲れを感じた。インドの民族衣装のレヘンガに似たそれを見て瞬時に“公爵夫人の宝冠”であろうと当たりをつける。複数の目玉に、貴金属、煌びやかな装飾、腰布とくれば恐らくそれだ。そしてどう考えても悪魔の仕業だ。櫛谷さん本人にも勿論だが、これは周りの人間の眼にも映らない。勝呂君へのメールを作成し、彼女を連れて保健室に行くように指示を出す。それを送信してすぐに自分は祓魔師の報告としてフェレス卿へ電話を繋げる。これで次の時間僕らが欠席しても何の問題もないだろう。ここの学校は悪魔関連の事に関しては融通が利く点でも裏では有名だ。


『はいはい、どうかされましたか奥村先生』


「グレモリーの“公爵夫人の宝冠”が確認されたので勝呂君と対処に当たります」


『おお!これはこれは…ではお任せいたします』


「では」


すぐに出てくれたフェレス卿についていると思いながら通話を終える。酷い時にはゲームの途中だからなどと言って切られることもあるのだ。あと妙な留守電に繋がることもある。多分なにかのキャラの声だろうあれは。
にしても、と携帯をポケットにしまいつつ考える。また、どうして櫛谷さんは“公爵夫人の宝冠”なんて手に入れたのだろうか。とても珍しい悪魔が原因であるので、内心首を傾げざるを得ない。悪戯をするような類の悪魔でもないし、なにより女性に対してこんなことをするなんて滅多に聞かない。というよりもついこの前にサバドの件が終わったばかりだというのになんてスパンで問題を持ってくるのだ彼女はと大きくため息をついてしまう。どうなってるんだ彼女は。しかもその後にも妙なものを拾っていたらしく隣の席の勝呂君が酷く疲弊させられていたのを思い出して肩がずっしりと重くなったような気がした。これでいて未だに悪魔が見えないままなのだから彼女の運がいいのか悪いのか測りかねるところだ。
廊下を人気のない方へと進んでいき、ある程度人の目がない場所で適当な扉に鍵を差し込む。扉の先は自分の仕事場で、ずらりと干してある薬草の中から唐辛子とビンの中で砂糖漬けにされているシトラスを取り出す。本当ならレモンの方が良いだろうし砂糖に漬けていない方が良いだろうが代用で十分だ。それらを鞄へと入れて、今度は学校内の保健室へと続く鍵を取り出す。医工騎師のマイスターを獲得すると与えられる鍵で、正確には保健室の奥にある祓魔師専用の部屋へと通じるものだ。あと必要なものはそこにあるだろうと頭の中で確認しながら鍵を回した。





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投稿日:2017/1203
  更新日:2017/1203