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世間の行事には特に興味もなく、今まで積極的に参加したいとも思えなかった。その日も普段通り学園に向かおうとしていたらふとテーブルに置かれた一枚の紙が目に入った。


「できたよ」

声をかけ屈んでいた体勢を戻すとヒナが大きく息を吐いた。

「意識した?」
「それは勿論そうですよ」

話しながらヒナの髪をまとめ簪で留める。前に回り上から下へ改めて視線を向けるとヒナは恥ずかしそうに俯いた。

「数えきれないほどおれが着飾ってもその反応はずっと変わらない」
「すみません」
「謝ることはないよ。おれは君のその反応も愛しいから」
「あ、ありがとうございます」

照れながらも口ごもらずそう言える彼女も好きだ。

「でもどうして浴衣を?」
「ヒナがおれと浴衣を着て夏祭りに行きたいと書いていたから」

おれの言ったことが予想外だったのかヒナはしばし静止して見つめてくる。すると驚いた表情を見せた。

「公衆の笹に飾る用だったのかな。朝、短冊を見たんだよ。だから夏祭りの時に着ていける浴衣を用意したんだ」

テーブルの上に置かれた一枚の紙にはおれと浴衣を着て夏祭りに行きたいと書かれていた。名前は伏せられていたが大好きな人と書かれていたならそれはおれしかありえない。

「おれに言ってくれて良かったのに」
「海里さん忙しいから……」
「ヒナの願いなら何でも叶えてあげたいよ。誰にも叶えさせない」

そう言うと躊躇いがちに上目遣いで見つめられた。

「……夏祭りに一緒に行きたいです」
「喜んで」

可愛らしいお願いにエスコートするように手を差し出す。すぐに手は重なった。引き寄せると腕の中に愛しい人の温もりを感じる。

「嬉しいです」
「うん」

やはり彼女の笑顔は綺麗だ。おれが求めていた欠けていたピース。

「海里さん?ひゃっ」

首筋に顔を埋め軽く息を吹き掛けると声が上がった。

「ご、ご飯を先に」
「先に浴衣を脱がないと駄目だよ」

着せたばかりの浴衣の帯を緩める。完全には外さないまま腰を引き寄せ唇を重ねた。深く重ねればやがてヒナが立っていられなくなりゆっくりと床に座らせ簪を外しそのまま倒した。

「せめて浴衣をちゃんと脱いでから……買ってもらったばかりですし」

このあとのことが想像できたのかおれを制するように言うけれどそう言われたほうが余計に止まらなくなると彼女はわかってはいないのだろう。
顎から首筋へ指先を辿らせ布越しに肌を確かめるように腰まで這わせていく。

「何度着飾っても同じヒナはいないから色んなヒナを見たくさせるのがいけないんだよ」

衿に手を差し入れると容易く下がり片方の肩だけ外気に触れた。下に着用していた片紐も下げる。覆い被さり肩を撫でる。整えられたものを暴く特権。乱れても綺麗なのは彼女だから。戸惑いながらも顔は逸らずにおれだけを見つめる愛しい人に微笑んだ。


H26.7.7


暴く特権
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