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「大丈夫でしょうか?」
「大丈夫、大丈夫!トキヤ優しいし、理由話せば怒らないよ」

一十木くんと一ノ瀬さんの部屋の前まで来て入るか迷う。
探していた本が図書室になく、一緒に探してくれた一十木くんが一ノ瀬さんが確か持っていたと連れてきてくださいました。
ですがつまり一ノ瀬さんに断りをいれずに一ノ瀬さんの居住エリアに踏み込むわけで、尚且つ本を無断で見せていただく事になるわけで……。

「はい、入って入って!」

一十木くんはドアを開けると私の背中を押して部屋に入れてくださいました。
ましたが……やっぱり中には踏み込めません。

「どうしたの?トキヤの部屋はこっち!本棚も整頓されてるしすぐに見つかるんじゃないかな?」
「あ、あのっ」

そのまま背中を押し続ける一十木くん。
すぐにシンプルな本棚の前に来てしまいました。

「ごめんなさい、一ノ瀬さん……」
「謝らなくても結構です。どうせ音也に無理矢理連れてこられたんでしょうから」
「トキヤ!」

後ろから声がして私と音也くんが振り返ると一ノ瀬さんがいらっしゃいました。

「年頃の女性が男の部屋に二人きりでいるのは関心しませんが音也に連れてこられたなら仕方ありません」
「俺なら仕方ないって何だよー!」
「何か用事ですか?」
「そうそう、七海が本探してて図書室になかったんだけどトキヤが持ってた気がしてさ」
「そうなんですか?」

頷くと本のタイトルを聞かれ、答えると一ノ瀬さんは本棚の前に移動しました。
すぐに一冊抜き出して手渡してくれます。

「あ、これです!」
「よかった、あって」
「はい!」
「なら、それはお貸しします」

予想外の言葉に私は驚いて慌てて首を横に振る。
見せてもらえるだけでもありがたいのに貸してもらうなんてできません。

「落ち着いて読んだほうが頭にも入ります。入らないものを読んでも無駄なだけです」
「でも……」
「こんなところで落ち着いて読めるとでも?」
「それは……」

確かにここにいるだけでも緊張してしまうのにじっくり読むなんて事ができるはずがないです。
なら諦めて本をお返ししようとすると後ろから肩に手が置かれた。

「トキヤがいいって言ってるんだから借りていきなよ。課題の参考になるかもしれないって一生懸命探してたんだから」

ね?と安心させるように一十木くんが笑いかけてくれました。
私は一ノ瀬さんに向き直ると改めてお願いをした。

「あの、本お借りしてもいいですか?」
「もちろんです。ここで断られたら差し上げようかと思いました」

一ノ瀬さんも少しだけ笑ってくださったように見えて私は頭を下げた。

「じゃあせっかく来た事だしお茶でも飲んでいく?」
「えっ?」
「音也!」

いつのまにか一十木くんに両肩を掴まれていた。

「トキヤは嫌なの?七海と一緒にお茶飲むの」
「い、嫌とかそういう事ではなく……!」

どうしたらいいかわからずにお二人の顔を交互に見ていたら一ノ瀬さんと目が合いました。
すると一ノ瀬さんはため息をつきました。

「夕食が入らなくなるまでお菓子を食べないようにして下さい」
「うん!」

喧嘩になったりせずよかったです。
やっぱりお二人は仲がいいんだなと改めて思いました。

「何を嬉しそうにしてるんです?」

一十木くんが椅子がもう一ついるよねと自分のところへ椅子を取りに行くと一ノ瀬さんがお茶の用意をするというのでお手伝いをしているとそう聞かれました。

「お二人が仲が良くて嬉しいんです」
「私と音也が!?」

答えると何やら複雑そうな顔をされていたような気がします。

「テーブルの準備できたよー!」

そしてしばしのお茶会を楽しみました。


H22.8.3

仲の良い二人
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