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ソファに座り資料に目を通しているカミュ先輩。私も床に座り仕事の資料を読みながらちらりと見上げた。
カミュ先輩、だとはわかる。でもいつもとは違った。
「あ、いらっしゃいました!」
塔の中に呼び鈴が響き渡り慌てて玄関に向かう。
「お邪魔します」
「突然すみません」
扉を開けると先程来てほしいと連絡したセシルさんがいた。
すぐに二階の居間に戻るとセシルさんは立ち止まった。
「カミュ?」
「何だ」
「本当に幼いです」
セシルさんの言葉にカミュ先輩は資料を机に置き立ち上がった。
「ハッ、貴様と対して変わらないだろう」
「そうですがいつもとは違う。数年若返ったみたいです」
セシルさんの指摘通り、カミュ先輩は数年若返ったかのような容姿になっていた。
「春歌にも言われたが騒ぐほど変わっていないだろう」
私達の前に佇むカミュさんを私とセシルさんは凝視する。
「幼いです」
「貴様に幼い幼い言われると腹が立つ」
「事実を言ったまでです」
「ですがこうしてセシルさんと並ぶと背丈はあまり変わっていませんね」
お二人を見比べてみるといつもの光景と大差がないように見えた。
「せいぜい3、4年前だろう。それぐらいで見た目が変わるような歳でもない」
「カミュは21歳でしたから17、8歳ということですか……」
「あからさまに残念そうにするな。さっさと調べろ」
「お願いします、セシルさん」
「わかりました」
魔法でも使わないとこんなことは起こらないのではないかとセシルさんに来てもらった。
特に何かをするわけでもなくカミュ先輩の体を見つめ一周する。
「うっすらとですが魔法の気配があります。ですが呪いではありません」
「解く方法は?」
「ありません」
「貴様、俺を馬鹿にしているのではないだろうな?」
セシルさんの即答に怒りと苛立ちを露にしだすカミュ先輩に慌てる。
「Non!ワタシは真剣。強いものではないから数日もつかわからない魔法です」
セシルさんが嘘をついているようには見えずカミュ先輩は背を向けた。
「春歌、困った事があったらまた呼んで下さい」
「はい」
セシルさんが階下に降りていくのを追う。
「明日になればきっと戻ります」
「本当ですか!?」
「ですがカミュには内緒です。少し困らせたいですから」
「そ、それは……」
セシルさんの悪戯っ子のような笑顔にできませんと言えなかった。
そしてセシルさんは扉を開き去った。
「どうしよう……」
カミュ先輩に明日には戻る事を教えるか迷う。
セシルさんには悪いと思いつつやはり伝えた方がいいだろうと階段を上がっていった。
「あれ?」
居間にカミュ先輩はおらずソファの下にうずくまるアレキサンダーしかいなかった。
寝室に行ったのかと三階に上がるとカミュ先輩の後ろ姿があった。
「こちらにいたんですね」
声をかけるとカミュ先輩が振り返る。やはりいつもより幼さを感じる。
なぜだろうと首を傾げてすぐに思い至った。
「髪が短いんですね!」
「今更気がついたのか」
肩まである髪が今はなく短い。
カミュ先輩は持っていた鏡を棚の上に置いた。
「髪で印象が変わるのはよくありますがカミュ先輩は短いと幼く見えますね。可愛いです」
「ほう?」
カミュ先輩の声で自分の発言に気がついた。
慌てて口を押さえても遅く歩み寄ってきた先輩に手首を掴み引き寄せられベッドに勢いよく引っ張られ倒れこむ。
「悪い意味ではなく……」
ベッドに横たわった身体を起こしながら言うとベッドが軋み、カミュ先輩が覆い被さろうとする。
「悪い意味ではない事などわかる。だが言われて喜ぶわけがないだろう」
「……すみません」
失礼だったと謝ると顔を寄せられ、引くと起こしかけていた身体はベッドに再び倒れた。
「謝罪は必要ない。そう思えなくなるからな」
「あ、あの」
顔が寄せられ唇を塞がれる。
離れたかと思えば寄せられ、心地の良い感触に私は自分から唇を開いていた。
しばらくそうしていると私の息が荒くなり唇が離れた。
その瞬間ふと違和感を感じる。
「どうした?」
「いえ……あ」
すぐに思い当たる。
手を上げ指先で髪に触れた。
「いつもはカミュ先輩の髪がくすぐったくて気持ちいいんです」
感触を思い出すと笑みが浮かぶ。
カミュ先輩は少し驚いた表情をして、笑った。
「お前は俺を翻弄する」
「え?」
「感触がないにも関わらずそう思えるほどこうして過ごしたという事だろう」
「あ、そのっ」
言われて自分の発言の恥ずかしさに気づき髪から手を離す。
「アイドルをやるならば髪を伸ばした方が良いと言われ伸ばしたが、それも無駄ではなかったな」
楽しそうに言うと再び唇が触れ、離れた。
「……明日には戻れるそうですよ、クリスザード」
まだ恥ずかしさは残るも告げた。
H25.4.29
髪
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