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「置いてこい」
「酷いな、蘭ちゃん。この日のために笹を探し続けたのに」
「立派な笹ですね!わたしこんな大きなもの初めて見ました」
「感心するな、そいつらが付け上がる」
帰宅したのを見計らったように訪問者が現れ、うっかり応対してしまった事を後悔した。
笹を肩に担ぎ上げてるレンを見た瞬間閉めようとするも笹で扉を押さえられてしまい春歌がやってきてしまった。
「というわけでレディ、この笹と共に七夕パーティーをしないかい?」
「パーティーですか?」
「おい、そんなこと聞いてないぞ」
「言ったら蘭ちゃんおとなしく待っててくれた?」
待っていない。むしろ七夕の日は春歌と共に行方をくらます。
「聖川が準備して待ってるから行ってやらないと可哀想だよ」
「てめぇそういえばオレが行くと思ってるだろう」
どこにいるかは知らないが真斗を待たせては気の毒とでも思わせたいのか。構わないように背を向ける。
「せっかくのバーベキューなのに」
「黒崎先輩、こちらが焼けています。七海も取るぞ」
「ありがとうございます」
そしてなぜかバーベキューに参加していた。待機させていた車に乗り込み、ヘリに乗り換えしばらくするとまた車に乗り換え河原へ到着した。
「時間なら気にするな。ここまで連れてこられたんだから帰りもあいつらに面倒みさせろ」
「は、はい」
隣で腕時計をちらりと確認する春歌に小声で言う。そもそも場所もわからないのに帰り方がわかるはずがない。肉に釣られた以上最後まで付き合うつもりでいた。
「それじゃあそろそろ七夕のメインだね」
腹が膨れてきた頃合いにレンが細長い紙とペンを渡してきた。
「短冊ですか?」
「そうだ。黒崎先輩がプライベートで七夕はやったことがないと雑誌で見かけてな。神宮寺と話して七夕パーティーをやることにした」
「お前、人のインタビューまで律儀にチェックしてんのかよ」
「先輩のインタビューを読むことに何の不自然さはないよ、蘭丸先輩」
わざとらしく先輩と言われ顔を手元にある短冊に向けた。
隣を見遣ればすでに春歌はおらず河原に飾られた笹に向かっていた。
いざ何かを書こうとすると思い浮かばない。願いを書くものだとわかってはいるが見知らぬ何かに願うのは違う気がした。
「……あいつらも早いな」
一人食事の席に残される。こういう時絡んできそうなのが絡んでこないのもあいつららしいといえばしい。
「……よし」
手早く短冊に書き記し立ち上がった。
「飾ろうか?」
「いい、自分でやる」
オレが笹に近づくと見ないようになのか三人共少し下がった。
先に飾った三人のものは見ようとしなくても目に入ってしまうなら全員見ればいいものをと思う。
だがすぐにそんな考えもなくなった。
「これで終わりなんてことはねぇだろ?わざわざオレ達を連れてきたんだからな」
「勿論です」
「当然だよ。はい」
「あ、花火ですね!」
レンから渡された手持ち花火に喜ぶ春歌の声を合図に空にも花火が上がった。
いつしかこうしているのも楽しくなっていた。短冊の願いはそれを表すようで、同時にこの場にいる四人が同じような事を書いているだけで笑みが浮かんだ。
H25.7.7
同じ願い
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