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 近年酷くなってきている高潮の影響は生活にも多少支障が出ている。けれど今回はいつも利用している避難所とは違うのだ。何でこんな事になったのかと思うけれど、室内最高、プライバシーが確保されるって最高とばかりに人様のキッチンスペースを占拠していた。声をかけてくれたパウリーの事だ、おそらく見知った顔を放っておけなかったのかもしれない。でもその気遣いがありがたく、どれだけ心強かったかという話だ。
 しかし、正直に言ってかなり恥ずかしさはある。よく分からない点から含めて、片っ端から顔を赤くするパウリーな為に、こちらが何かしらやらかしているのではないかという不安がある。私は常にいつも通りにを心がけているというのにだ。いつも通りいつも通りとばかりにしているためか、喋り過ぎてしまい、いつも以上に喉が渇く気がする。そうと思えばある意味でパウリーもいつも通りかもしれない。人様の部屋ではあるし、アレコレ言われないようにとしっかり服は着ているし、一応だけれど家主であるパウリーの邪魔をしないようにと極力気配を消しているつもりである。

 
「どうしよう…」

 窓から差し込む明るさで目が覚めて、私はというとさっさと着替えて、勝手ながら昨日朝食用にと買っておいたパンを食べてしまった。どこかどんよりとした空模様を感じつつ、今日もまたここに帰ってきそうだと思った。一応パウリーの分までコーヒーを淹れてみたけれど、確実に冷めてしまうだろうと感じている。
 今日仕事かどうか聞いておけば良かったと思うのは、朝となったのに起きないパウリーを起こすかどうかで迷っているからである。連日出勤していた気がするから休みだろうか、でも高潮の影響で日程調整だかを昨日していたようで出勤…となるのだろうか。何となくだけれど出勤だと言うなら、そろそろ起こさないとならない時間な気がしてしまう。休みだとしたら起こしたら可哀想だと思ってしまう。まぁ眉間に皺を寄せて寝ているがきっとよく寝ているのだろう。散々布団を少し引っ張ってみたり、足を突いてみたりはしたけれど、起きる気配は見せてない。
 
「パウリー…、朝〜…」

 私仕事行って良いかなぁと時刻を確認した。ヤガラ達への餌はあげなければならないし、職場への高潮の影響を確認しておかないとならない。そうとなるとやっぱりパウリーも何かしら仕事があるのでは?という結論に至った。

「朝ですよー…もうっ、仕事行っちゃうよ?」
「…んぁ」

 横向きでかけた布団だかを抱えるようにしている。大柄な体格に寝ぼけたまま蹴られたら勘弁だと、頭の方から起こそうと試みている。少々厳しそうな顔で寝ていて少し興味を唆られる。あまり見てはいけないかなと思いながらも私側からすると起こそうとしているわけで少し見てしまうのは許してほしいところである。明るい色した髪に手を伸ばせば私の髪よりも少し硬い髪質で、その髪を私の手櫛で軽くとかしてあげる。起きないからしょうがないとばかりに暇を持て余す手で何度か髪を撫でる。髪が後ろに流れる形が楽なのかな、いやこのままゴーグルかければ完成するから何も気にしていないのか、多分後者だろうと予測をし始めた。そしてどうでも良いような予測をしていても、着実に私の出勤時間が近づいてきている。

「…おやすみの日?」

 なのかな、とそちらの予想の方が私の中で濃厚となってきた。いや、決して起こすのがめんどくさくなったとかもう仕事行く事にしたから諦めたとかではないと思いたい。やっぱり厳しそうな顔だけれど、コレだけよく寝ているから、そういう事にしよう。布団を握りしめたままの手に手をそっと重ねた。起きていたらきっとギャンギャンとうるさいから、今は大丈夫であろう。

「部屋貸してくれてありがと」

 囁くようにお礼を言った。少し近づくと身についてしまっているのか葉巻の香りが鼻を掠めた。ちょっとやり過ぎちゃったかなと思うけど寝ているから何の問題もない、これはただの私の自己満足だ。テーブルに書き置きをしてから、パウリー宅に鍵をかけて貸しブル屋二号店に足を運んだ。


「ッとに、何だあのハレンチ女…ッ」

 ゆでタコかと思うほどに真っ赤になりベットの上で苦しんでいるパウリーの事など知らないことだった。