「いって」
ナマエは好きを言わない。
それに気がついたのはお互いの想いを通じ合わせて一年も経ったある日だった。ナマエは元々あまり自分の感情を口に出さないタイプではあって、それというのも表情や行動にそれらが全て丸出しだから言わなくても良いのだ。
そう、行動に、全て出る。
一緒にいる時、やたらひっついてくるのは甘えたい時。
出かけた時いきなり手の形について話し出したら手を繋ぎたい合図。
冷え性で冷たくなった足先をくっつけてくるのはキスがしたい時。
ナマエは感情を口に出さない、と言ったけど、別にものを言わないわけじゃない。自分の意思はしっかりある方、というかありまくる方だ。それを伝える力も持っている。
例えば、満ち足りた後に待つのは何か。なんて問いを投げかけて、その答えは「死」。その裏に隠れるのは「私は今あなたといて満ち足りてますよ」というメッセージ。まどろっこしすぎるそれは、ナマエなりの愛情表現。
そうと、分かっている。しかし、分かっていても、言って欲しい言葉があるのだ。
「…ナマエー」
「はあい」
「すき」
「ん、急じゃん。んへ、」
「ナマエはぁ?」
「わたしも」
「違うじゃん、好きって言ってほしいんじゃん俺は」
「言わせた好きに意味はあるのかねーー」
「好きじゃないってことでいいですかぁ」
「……好き、だけど、だって、好きって、直接的すぎて、なんか、違う…
もっとこう、イブちゃんと居ると疲れが癒てくとか、キスするだけでイブちゃんだけになるとか、イブちゃんの体温がわたしに馴染むのが気持ちいいとか、もっと、細かいんだもん…」
頭から湯気が見える気がした。それほど、ナマエは顔も耳も真っ赤にしてそれを口にして、顔を隠した。
いや、顔隠してくれて良かったと思う。俺の顔は赤いどころじゃなくて、心臓が握りつぶされたかと思うくらいぎゅうぎゅう締め付けられて、なんかもう訳がわからなくて。勢いのままナマエを抱きしめて。